コムギココメコ

備忘録と不備忘録を行ったり来たり

短歌(321~330)

 最近作った短歌のコーナーです。

 Twitterやネットの短歌投稿サイトにしか短歌を設置していないので、もう少し他の場所にも設置したいなと考えている。しかし、やりたいことは多く、読書もしたければ曲つくりにも挑戦してみたいし、イラストも描いてみたい。やりたいことにそれぞれ別方向から体を引っ張られるせいで、見る見るうちに体は分解し、今は左腕でブログを書きつつ足でチャーハンを作り、右腕はお風呂に入っている。

 最近作った短歌のコーナーです。

 Twitterに設置した短歌10首である。気に入ったものがあったらうれしい。

 最近作った短歌のコーナーです。

 

【321~330】

悪性の恋が発見されました既に3か所転移してます

 

第3位「ワンワンワワンワンワワン」 なるほどこれは許せませんね

 

シースルーの餅をまとった丸見えの餡子が夜と交じるのを見る

 

海鳴りを迎えに行こう沢山の青い果実を心に詰めて

 

まだ2歳なのに賢いお子さんねバイトリーダー間違いなしよ

 

毒リンゴ食べてしまった姫たちよ残業時間を気にせず眠れ

 

我々の未来を担う桃の子がテトラポッドに阻まれて死ぬ

 

死ぬためのタイムカードは押されたがまだ出ないまま朝礼がくる

 

いい気味だ世界がみんなまるくなりひなたぼっこなんかしてやがる

 

僕たちはニコニコ動画に捨てられたコメントに似たスピードで死ぬ

 

 

 次回もよろしくお願いします。

『Death Peak』から下山して(Clark『Death Peak』レビュー)

 音楽を聴くことが好きな人々の大半には、1番好きなアーティストという概念が存在している。

 そのアーティストが新しいアルバムをリリースしたとなれば、早くCDを買うなりどこかで借りるなりして聴こうと落ち着かなくなることもあるだろう。今回はどんな曲を聴かせてくれるのか、どう変わったのか、様々な期待が脳を駆け巡る。しかし、1番好きなアーティストとだけあって、もしリリースされたアルバムが自身の音楽的ツボにはまらなかったらどうしようかという一抹の不安もある。そうした期待と不安の中で我々はCDを開封し、最初の音を出すのである。 

 私が最も好きなアーティスト、Clarkが4月7日にアルバム『Death Peak』をリリースした。通算8枚目のアルバムである。

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 Clarkはイギリスのミュージシャンである。ジャンルで言うならばエレクトロニカになるだろう。Warp Recordsという、エレクトロニカ・テクノ界隈ではもっとも有名なレーベルに所属している。

 この男のすごいところは、アルバムごとに作風をどんどん変化させていくところであうる。ファーストアルバムの『Clarence Park』では美しい音と無邪気なビートが両立されていて、『Empty The Bones Of You』では無邪気さは抑え気味だったが緻密な電子音で我々を魅了し、『Body Riddle』では生音と電子音の融合を行った。

 4thアルバムである『Turning Dragon』では一転して攻撃的なダンストラックを並べ、『Totems Flare』では素直に踊れないビートと忙しないメロディを我々に叩き込んだ。6thアルバムである『Iradelphic』はまた作風を変え、生音を再び全面的に導入し、ノスタルジーと悪夢の間を我々に見せた。7thアルバムの『Clark』では、今までのアルバムの総決算的な内容とドラマチックさを持って我々の耳に飛び込んだ。Clarkは常に予想を裏切り、超えていくアーティストであった。

 そして、8thアルバムである『Death Peak』である。Clarkはどんな手を使って我々の予想を裏切ってくるのか。ネットにアップされた記事などを見ていると、『声』を全面的に使っているらしい。Clarkはインタビューで人の声を「もっとも完璧なシンセ」と評している。声を素材にした曲は今までに存在したが、今回Clarkは声を「シンセ」と評している。どういったことなのか。手に入れるまで謎は深まるばかりだった。

 私は、手に入れる前にどういったアルバムなのか予想することにした。自らの顔がくしゃくしゃになったジャケット。「顔の加工」という点では、前作の「Clark」と似ている。

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 こちらが前作『Clark』のジャケットである。

 そして、先行公開された"Peak Magnetic"を聴く。前作とは音の質感が異なるが、4つ打ちのビートの曲である。私は、『Death Peak』が前作の発展的なアルバムではないかと予想した。

 そうして4月10日、リリース日から遅れて3日後にアルバムは届いたのだ。

  急いでCDを取り出し、パソコンに入れ、聴いてみる。どんな音を出すだろうか……。

"Spring But Dark"は、1分程度の、アルバムのオープニングを告げる曲である。おお、最初に短い曲を持ってくるのは前作と同じだな、などと思いながら次の曲"Butterfly Prowler"に入る。ここで、声がどのように使われているか、Clarkが何を言いたかったのか、おぼろげながら分かってくる。言語やループ素材、アクセントとしての声ではない。4つ打ちのビートが敷かれた上を、声が音を纏って溶け込んでくるのだ。"Peak Magnetic"ではダイナミックなメロディと声が我々を覆う。

 一転して4曲目の"Hoova"、5曲目の"Slap Drones”では不穏な雰囲気の中、ときおり攻撃的な音が嵐のように我々に襲い掛かる。その嵐が静まり、一瞬の穏やかさのようなアンビエント曲"Aftermath"が流れる。それが終わるといよいよアルバムも終盤である。"Catastrophe Anthem"、"Living Fantasy"が荘厳さを持った声とともに現れ、クライマックスが近いことを知らせる。

 そして、最後の曲"Un U.K."に到達する瞬間、我々は死の山頂の最も近いところを登っていることに気が付く。初めは4つ打ちのビートとともに比較的穏やかに進むが、徐々にメロディが我々の周りをうねり始める。そして、何かがきしむような音を境にして、突如死の山頂は荒れ、音の風が鼓膜の中を、全てを破壊するかのように吹きすさんでいく。一瞬の静寂が訪れたのも束の間、再び死が音となって、我々を食らい尽そうとする。その中を1秒、1秒と進んでいくと、不意に音が途切れる。それ『Death Peak』に辿り着いたことを意味する。その瞬間、荘厳な音が光とともに現れるのだ。その時の音こそ、『Death Peak』から見える風景を表していると言っていいだろう。

 輸入盤はそこで終わるが、日本盤にはボーナストラックがついている。正直、ボーナストラックは最後の荘厳さを吹き飛ばしかねないので、無くてもいいかなと思った。それほど"Un U.K."は素晴らしい曲である。10分を超える曲だが飽きを感じさせない。

 

 個人的に好みの曲が多いアルバムは『Totems Flare』である。これは『Death Peak』を聴いても変わらない。しかし、アルバム全体としての完成度は『Death Peak』が1番だと個人的に思う。このアルバムにはClark史上、最も壮大で荘厳な展開が存在している。見事に予想は裏切られた。

 さて、このアルバムの後、Clarkはどのようなアルバムをリリースしてくれるのだろか。それが1年後か、3年後か5年後か、それとももっと先かは分からない。それでも、次のアルバムが、また我々の予想を大きく超えるものになることは容易に予想がつく。それまで我々は、アルバムといういくつもの山を何度も登ることになるだろう。

fugitive

 好きだからこそ、ひたすらに待つ。もう会わなくなる最後の最後まで、ただただ待ち続ける。

 私は高校3年間の間、好きな人がこの場所に来るのを待っていた。正門から校舎へ向かう道を少しずれたところにある、昔の卒業生たちが記念に植えた桜の木の下。そこで3年間、学校のある時は待ち続けた。

 好きな人とは1年生と3年生の時に同じクラスだった。彼はクラスで目立つタイプではなかったけど、私には彼がとても特別な人のような気がした。いつ誰と話しても落ち着いた語り口で、穏やかに笑っている。そんな彼が持つ暖色の明かりのような雰囲気を、私は好きになった。

 彼は吹奏楽部でトロンボーンを担当していた。私はトロンボーンについてほとんど分からないし、彼がトロンボーンを吹いている姿を見たことはないけれど、彼が吹いているのだからきっと良い音色を聴かせてくれるのだろうし、吹いている姿だって恰好良いのだろう。

 そんな彼と、私はほとんど喋ったことがない。彼の仕草に惹かれれば惹かれるほど、私は近づくのが怖くなってしまった。ふらふらと火に近づけば、きっと私は焼き殺されてしまう。そんな気がしていた。彼と一緒になろうと行動を起こす気になんてなれなかった。

 だから私は偶然に運命を委ねることにした。桜の木の下で彼が来るのを待ち続けて、彼がここを通りかかったときに想いを伝えることにした。その事を決意してから、私は学校のある日は必ず木の下で彼を待っていた。授業が始まる前と昼休みと放課後、ひたすらに私は待ち続けた。普段あまり人が通らないところだったけど、たまに通った生徒や先生は、桜の下でたたずんでいる私のことを不審そうに見ていた。友達に、休み時間どこに行ってるのと尋ねられたりもしたが、私は適当にごまかした。もう止めようかなと何度も思ったけど、もし明日彼がこの木の下を通ったらと考えると、止めることはできなかった。

 そうして桜の下で待ち続けて、とうとう卒業の日になった。卒業式を終え、クラスで写真を撮ったり、高校生活最後のたわいないお喋りを続ける中、私は桜の木の下に急いだ。桜の下に着いた直後、彼が遠くから歩いてくるのが見えた。ついに、彼が桜の木ににやってくる。夢にまで待ちわびた瞬間が、最後の最後で私を迎えに来てくれたのだ。彼は友達と少しずつ少しずつ、こちらに向かってきて、そして、立ち止まった。私まであと30m。彼は何かを思い出したような顔をして、元来た道を引き返してしまった。彼は少しずつ点になって消えていった。

 その後、校舎から活気が消えて、外が薄暗くなるまで待っていたが、彼が来ることはなかった。街灯の明かりが灯った時、私は全てが終わったことを理解した。

 家に帰る途中、街灯の周りを虫が1匹、必死に飛び回っているのを見た。私は制服のスカーフが重くなっていくのを感じながら、家路を急いだ。

fugitive

 引っ越しというイベントを皆さんはご存知であろうか。土地勘Aのセーブデータを消去して、新しいセーブデータでプレイするゲームのことを指す。

 先日、引っ越しを行った。引っ越しには様々な理由があり、進学、就職、転勤、前の土地で嫌なことがあった、夜逃げ、罪からの逃亡、指名手配を受けているため土地を転々としなければならないなどが主なものとして挙げられる。

 今回の引っ越しによりやっとこさ海のある県に行くことができた。生まれは海なし県、その後引っ越した県も海なし県と、島国日本にあるまじき移動具合であった。海に入るまでに20年ほど時間がかかったのも、両親が海の存在を知らなかったためである。

 そんな海とは無縁の私であったが、引っ越しにより自転車で20分弱のところに海が存在するようになった。ちなみに日本海である。くるりの『THE PIER』というアルバムに、『日本海』という曲がある。アルバムの2曲目であり、1曲目の『2034』の打ち込みサウンドを上手く引き継いだ、デジタル歌謡曲といった趣のある曲である。ぜひ借りたり買ったりするといいと思う。

 引っ越し自体は知らない土地をうろちょろできるので良いイベントなのだが、肉体的にはかなりの負担になるらしく、引っ越しの前後では体調が悪くなる。前回は1か月ほど頭痛に悩まされた。今回は腹痛である。

 引っ越しの1週間前ほどから時々お腹が痛むようになった。引っ越し前に体調を崩しては大変だと思い、大事を取って私は二郎系ラーメンを食べに行くことにした。その結果、翌日下痢気味になった。胃腸の調子が悪い時に二郎系のラーメンは食べるべきではない。勉強になった。

 その数日後、麻雀の大会を行った。不思議とマージャンに集中している間はおなかの調子も良かった。回復傾向にあっても油断をしてはいけないと思い、その夜アルコールと大量の唐揚げを摂取した。その結果、翌日胃腸は滅茶苦茶になった。トイレに出たり入ったり出たり入ったりする羽目になった。胃腸の調子が悪い時にアルコールと油ものは食べるべきでない。勉強になった。

 引っ越しが近づくにつれトイレも近くなり、胃腸の調子はぐちゃぐちゃになった。引っ越し当日が1番最悪で、まず朝起きてトイレに行き、最寄り駅についてトイレに行き、新幹線のある駅に着いてトイレに行き、新幹線の中でもトイレに行きと、休符のごとくトイレに行った。引っ越し先につくと多少胃腸の調子は良くなったが、それでも頻繁にトイレに行っていた。引っ越した後も色々忙しいのにこの体調ではどうにもならない、どうにかしなければ、そう思って翌日、私は友人と居酒屋に行ってアルコールを摂取し、馬の生レバーを食べた。その結果、胃腸の調子はどんどん回復し、今はなんともない。

 何でだよ。

短歌(311~320)

 最近作った短歌を10首並べた。最近は忙しく、短歌を作る頻度が減ってきている。こういうときこそ作っていかないと、そのうち何もしなくなり、死んでいくことになる。忙しい時こそ趣味をやることを忘れないようにしたい。

 

【311~320】

素晴らしいデザインですね5枚ほどテプラを貼ってよろしいですか

 

まだ千羽折れてないからもう少し病んでていいよ クラス一同

 

※広場でのスケートボード・バーベキュー・野球・ヌチャウペャウは禁止です

 

寒いのに半袖短パン少年は前世で罪を犯したのだろう

 

正直なことは褒めますでも斧を13回も落とすか普通

 

ライオンもゾウもキリンも見られない動物園のような青春

 

積み上げたものはないのに崩された気がして怒るふりをしてみる

 

心臓が燃えるゴミだということを知ったよ僕は人間でした

 

【この歌を読みたい方はプレミアムコースに登録お願いします】

 

大福の中は思想で満ちている この世は全て終わるためにある

 

この次もよろしくお願いします。

読書感想文その12

中島国章『プロ野球 最強の助っ人論』講談社現代新書

プロ野球 最強の助っ人論 (講談社現代新書)

プロ野球 最強の助っ人論 (講談社現代新書)

 

  私はプロ野球が好きである。プロ野球ファンは贔屓の試合結果を見て一喜一憂する(ちなみに私は横浜DeNAベイスターズのファンである)。

 チームには毎年新しい選手が加入することになる。その中には外国人選手が含まれる。外国人選手の良し悪しでチームの順位は上下することになる。戦力の穴を埋めるために獲った外国人選手が、さらに穴を掘っていくような展開になれば、なかなかAクラス入りするのは難しい。

 この本はアレックス・ラミレス(現DeNA監督)やロベルト・ペタジーニ(元愛妻家)をスカウトしてきた中島国章氏による助っ人論である。長年通訳やスカウトをしてきた経験から、日本のプロ野球で活躍する助っ人と活躍しないいわゆるダメ外国人の特徴を実例を挙げて紹介しつつ、スカウトの裏側について語っている。

 私はメジャーリーグやある程度実績を残していないとなかなか日本で活躍することは難しいと考えていたが、この考えは半分しか当たっていなかった。外国人野手の場合、メジャーリーグで「ウォーニング・トラック・フライ・ボール・ヒッター(フェンス手前で打球が失速するバッター)」でも、日本で通用すると中島氏は主張する。日本で活躍したアレックス・ラミレスもウォーニング・トラック・フライ・ボール・ヒッターだったらしい。スカウトならではの視点があるのだなと感心した。

 また、性格はやはり重要らしい。確かに、正確に難がある外国人選手は、なかなか活躍していない場合が多い。活躍していても、あまり円満に球団と別れることがないように思える。家庭環境まで調べ上げるスカウトの用意周到さがあって、初めていい外国人を獲得することができるのだろう。

 若干手前味噌が鼻につくこともあるが、通訳・スカウトという視点から見た外国人選手論は説得力があると思う。プロ野球好きの方なら読んで損はないだろう。

 

吉本隆明共同幻想論河出書房新社

共同幻想論 (1968年)

共同幻想論 (1968年)

 

  基本的に読みたい本を読もう、というスタンスで私は読書をするのだが、時々他の人に本を進められることがある。『共同幻想論』も他の人からの勧めで読んだものだ。

 この本は1968年に出版されている。今は2017年だから約50年の歴史がある。Wikipediaによると、全共闘世代に熱狂して読まれたらしい(Wikipediaなので本当かどうかは不明)。全共闘世代とは学生がめちゃくちゃアグレッシブだった頃の世代である。この頃の話は歴史として見ると面白く、思想として見るとよく分からない。Youtubeに1970年頃の日本大学の学生たちの記録が転がっていたので見たことがあるが、映像としては面白かった。

 『共同幻想論』の話に戻る。感想を端的に述べると、半分も理解できなかった。簡単にこの本について紹介すると、国家などの共同体は人々による幻想であるということが語られている。なるほどなあと思う部分もいくつかあったが、文章が難しく、哲学などの知識があまりない私にはついていくのが厳しかった。

 また、この本では『遠野物語』や『古事記』が多数引用されているので、2つの本を読んでいたほうが理解が深まると思われる。

 「共同幻想」という概念はある程度共感できるが、いかんせん話題が高度すぎるため、軽はずみに読むと挫折する可能性が高い。ある程度哲学書や思想書を読破してから読んだほうが理解できる部分が多くなるだろう。私はただ読んだだけになってしまった。わたしゃ知識が欲しいよトホホ……。

 急にちびまる子ちゃんが乗り移ってしまった。余談だが、この本を勧めてくれた方に読んだことを話すと、「私もあまり理解できていない」と言っていた。その方は私より年上で、知識も私より多く搭載しているので、私は安心してこの本を図書館に返した。図書館最高! 1番好きな公共施設です!

生まれたての小鹿、採血と戦う

 今回は最近の出来事について雑に書きます。

 

 血が苦手だ。血の話をされると体から力が抜けてしまう。血の気が引いて体が冷たくなっていくのが分かる。

 この体質は普段の生活に関してはあまり悪い影響を及ぼさない。しかし、我々はどうしても血と向き合わなければならない時がやってくる。

 例えば免許を取るときに、3時間くらい応急救護の講義を受けることになる。Radioheadのセカンドアルバムにいたあいつに口づけをしたり押したりすることになる。その中で止血法という話があった。頭では考えないようにしていても、帰って鮮明になってしまうのが人間の弱いところである。体の力が抜け、気分が悪くなり、生まれたての小鹿みたいになってしまった。「生まれたての小鹿」という表現はよく使われるが、実際に生まれたての小鹿を見た人は少ないだろう。近所に生まれたての小鹿を見せる施設がほとんどないことが原因である。ラーメン屋を多く作る余裕があるのなら、生まれたての小鹿を見せる施設の1つを作ってもいいのではないだろうか。

 また、献血という単語にも弱い。血を抜かれることはかなり恐ろしい行為だと思ってしまう。献血をするとお菓子やジュースがもらえるらしいが、私にはできない。スーパーでお菓子やジュースを買うことになる。

 先日採血を受ける機会があった。死刑宣告のようなものである。私は幼いころに血液検査を受けたとき、自分の血を見てパニックになってしまった。それがトラウマで血液に関してかなり恐怖を覚えてしまった。この文章を書いている最中も左足が冷えていくのを感じる。私は何と戦っているのだろうか。自己表現と承認欲求の闇は深い。

 緊張でうまく呼吸ができない中、採血が迫ってくる。アルコールで湿ったガーゼで腕を拭かれたとき、首に縄をくくられたような気分になる。そして採血が始まる。私は必死に外を向き、色んなことを考えて恐怖を打ち消そうとしたが、なかなか上手くいかない。口の中に唾液がたまっていくのが分かる。時間がスローになっているような気がする、いや、遅くなっていたに違いない。時間にして1分もかかっていないのだろうが、私には数時間のように感じられた。この感覚を使えば、1日は数年ぐらいの感覚になるし、30日の懲役は720年になる。痛みはほとんど感じなかったが、精神はズタズタである。

 地獄の時間が終わり、再び血圧を測る。手に全く力が入らない。えずきながらも血圧を測り終え、看護婦さんのところに報告に行ったところで目の前が真っ白になってしまった。血圧は40近く下がっていた。

 その後、1時間近く血圧が戻らず、横になる羽目になった。起き上がれるようになった後も1日調子が戻らず、なぜか腹を下していた。

 ネットで調べてみると、私の起こしたものは血管神経迷走反射と書かれていた。自律神経の問題らしい。ネットの記事も鵜呑みにできないので、本当に正しいかどうかは不明だが、今回の症状と血管迷走神経反射でヒットする情報がほぼ一致するので、今のところはそれを信じている。次回から横になって採血を受けよう。

 この出来事で、私は献血を受けることがほぼ不可能なことが分かった。自分でジュースやお菓子を買うことにしよう。人から無料で貰ったものほど美味しいものはないけども。

 

 メモ書きとして、2017年に買ったもしくは借りたアルバムを以下に記す。

想い出波止場『水中JOE』

The Avalanches『Since I Left You』

STUTS『Pushin'』

The Cinematic Orchestra『Everyday』

Amon Tobin『Bricolage