コムギココメコ

備忘録と不備忘録を行ったり来たり

2018年に購入/レンタルして良かったアルバム10選

 2019年がいよいよ始まり、我々はそれに抗うことはできない。

 

 毎年行っている、1年間で購入/レンタルして良かったアルバムを10枚紹介していきたい。アルバムの簡単な感想と、公式で曲をアップロードしている場合はリンクも貼っていきたい。

 なお、2018年に「購入/レンタル」したものが対象のため、2018年リリースではないアルバムを多く含んでいる。読む前に是非ご了承いただきたい。

 ちなみに、今年は145枚のアルバムを購入/レンタルした。2017年より60枚ほど減っている。今年は様々なジャンルで気になったものを購入できれば一番だが、お金がそれを許してくれない可能性がある。金銭はメンヘラ。

 順位付けは行っていない。どれも良いアルバムだった。

 

※2017年以前の同じような記事のリンクを貼っておくので、お時間のある方は是非お読みいただけると幸いです。

komugikokomeko.hatenablog.com

 

komugikokomeko.hatenablog.com

 

MUTE BEAT『FLOWER』

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 1987年リリース。MUTE BEATの1stアルバムである。

 ゆったりとしたリズムと響き渡るトランペット。ドラムの音がはっきりしているからか、ダブの心地よさがこちらに効果的に伝わっているような気がする。

 レゲエというと多幸感のある音楽という勝手なイメージを抱いていたが、このアルバムからは多幸感というよりは、少しだけ涼しい夏の夕方のようなイメージを思い起こさせる。こういうアルバムを流しながら、涼しい日の夏のベランダでのんびりできると最高だと思う。

 

※公式で挙げている動画が無かったため、曲のリンクは貼りません。以下の記事にMUTE BEATがどのような活動を行ってきたかが詳しく書かれているので、是非どうぞ。

www.redbullmusicacademy.jp

 

 

SHUREN the FIRE『My Words Laugh Behind The Mask

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 2003年リリース。SHUREN the FIREの1stアルバム。

 このアルバムを知ったきっかけは、PUNPEEがBoiler Room Tokyoで行ったDJである。このアルバムに収録されている『Punk』が流れていた。少し古めのジャズとヒップホップが融合されていて、アルバムをすぐ購入したいと思ったが、廃盤になっているらしく、Amazonには足元を見られてしまった(8000円以上の値がついていた)。最終的には大宮のディスクユニオンで見つけてめでたしめでたしだった。

 ジャズを基調とした落ち着いたトラックに、平和と札幌を押し出したリリックが乗っていて、夜中に聴きたくなるアルバムである。なかなかアルバムを足元を見ていない価格で購入できる手段が少ないのが残念である。

 

※公式のPVなどが無いため、PUNPEEがBoiler Roomでプレイした際の動画をリンクとして貼っておく。11分3秒ころから流れる曲が上記アルバムに収録された『Punk』という曲である。

youtu.be

 

 

印象派『Nietzsche』

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 2013年リリース。大阪のガールズユニット印象派の1stミニアルバムである。

 PVを見ると、奇を衒いに来ているのかなと思ったが、アルバムを聴いた瞬間その偏見は一瞬で覆された。雑食的な音楽性なのに、曲として中途半端にならず、強度が高いところが痺れる。

 まず1曲目の『Volcanic Surfer』で心を掴まれた。4つ打ちのギター中心のロックだが、この曲は1回目と2回目のサビ後半で少し展開が変わっているところにカッコよさを感じる。アウトロのベースラインも印象的だ。

 そんなアルバムの中で1番衝撃的だったのが、4曲目に収録されている『ENDLESS SWIMMER[true]』である。ベースとドラムが基調になって進んでいく、展開としてはミニマルな曲なのだが、後半のドラムが激しくなるところで、一気に場面が変わっていく。ミニマルな展開なのに、ポップさが失われていない。恐ろしい曲だ。

 

※『ENDLESS SWIMMER[true]』の短いバージョン。

www.youtube.com

 

 

Nicolas Jaar『Sirens』

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 2016年リリース。Nicolas Jaarの2ndアルバム。

 大雪の日に歩きながら聴いたことがあったのだが、このまま終末へ向かっていくのではないかという雰囲気に1曲目の『Killing Time』を聴きながら思った。この曲は砕け散るようなウィンドチャイムで始まり、張り詰めたピアノとドラムが響き渡る。11分超という長尺曲でありながら、全く飽きさせない。時折亡霊のように感じるボーカルと、アンビエント、ポストパンクなど様々なジャンルを織り交ぜた曲群と悲劇的な歌詞で、寒々しさと激しさが交互に現れるアルバムに仕上がっている。

 

※公式の動画が見つからないため、リンクは貼りません。 

 

 

天気予報『雰囲気』

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 2017年リリース。天気予報の2ndアルバム。

 天気予報という珍妙な名前で分かる人もいるかもしれないが、ジャンルはVaporwave、もっと細かく言うと、Signalwave/Broken Transmissionである。昔(1980~1990年代のものが多い)のCMやTV番組のサンプリングをスクリュー、ループさせたこのアルバムは、ある時代に対するノスタルジー(まだ筆者は生まれていないが)、を感じさせる。また、幾度かCMが流れるのも、テレビを垂れ流しているような感覚になる。

 そんなノスタルジーを消し飛ばすような不穏な結末がこのアルバムにはまっているが、実際に聴いていただくのが一番早いと思う。

 

 

 

衆道徳『公衆道徳』

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 2017年リリース。公衆道徳の1stアルバム。

 韓国のアーティストらしいが、どういった人物なのかは調べてもあまり出てこない。Lampという滅茶苦茶良い曲を作るバンドで活動している、染谷太陽氏が主宰しているレーベル『Botanical House』から日本盤がリリースされた。

 どの曲も、アコースティックギターと主張しすぎないボーカルが中心となっているのだが、混沌としたアルバムになっている。生々しいアコギの音がグッと盛り上がる部分が特徴的な1曲目の『白い部屋』、少し輪郭がぼやけた歌が浮遊感を与えている3曲目の『パラソル』、終盤で切れ味鋭いアコギとともに音が流れ込んでくる4曲目の『ウ』など、聴きどころも多い。宅録だからこそできるローファイながらも生々しい音像は、リピート必至である。

 

soundcloud.com

 

 

怖い卓球部『スマッシュ1』

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 2018年リリース。インターネットを拠点としたバンド、HASAMI groupの中心人物である青木龍一郎氏の呼びかけで作成されたアルバムである。総勢11人が参加しているが、素性がほとんど分からない人もいた。

 「15分以内にトラックを制作する」「作詞時に15秒以上手を止めない」というルールのもとで作成された曲が集まった結果、完成度という次元では測定できない怪盤となった。

 ドロドロとしたギターのサウンドに乗せて、亀を飼ったあとのささやかな困惑を歌った『ミドリガメ』、作曲・作詞時間0秒の『おかま登場』、最後の最後で外に投げ出されてしまうような歌詞の打ち込み主体の曲『理由なき坊主』など、怪しく光る楽曲が揃っている。約23分という短いアルバムだが、かなり脳をかき混ぜられる。

 

www.youtube.com

 

 ここからダウンロードが可能。

http://iaodaisuke.web.fc2.com/kowaitakkyubu/smash1.html

 

 

HASAMI group『MOOD』

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 2018年リリース。HASAMI groupの19thアルバム。

 HASAMI groupの屈折した世界観とバラエティに富んだ曲のラインナップを維持したまま、聴きやすい仕上がりになっていて、今年何回も繰り返して聴いた。悲しさと楽しさを間を行くようなピアノのフレーズが特徴的な『PIANO』は、帰り道で聴くとかなりグッとくる。

 前半はポップな曲が多いが、インスト曲の『MOOD』を境に、『カズマの面白FLASH倉庫』『ショック情報』『リストカット・ディズニー』と暗めの世界観を打ち出し、社会の理不尽なライムが牙を剥く『 HIKIKOMORI MC BATTLE vol.3』、暗さと気持ち悪さが極まった『Cameraman』で最高潮になる。ポップさと暗さの先で、最後の『景色が欲しい』が始まった瞬間、なぜだか泣きそうな気持ちになるのだ。

 

 

 

Various Artists『WEB / そ の 意 味 で』

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 2018年リリース。 猫 シ Corp.、Nmeshなど、Vaporwaveというカテゴリーの中で名の知られているアーティストたちが参加したコンピレーションアルバム。

 胸像と古いOS・ゲーム画面のコラージュ、執拗なループとスクリュー、フィルターのかかった音像というあまりにもストレートなVaporwave像は、ノスタルジーに対するノスタルジーを感じさせる。Vaporwaveを初めて聴く人は、このアルバムから入ってもいいと思う。

 個人的に一番好きな曲は海岸『すてきな階段』で、ループされた音が少しずつドロドロに溶けていく感覚は、ある種の催眠効果を感じさせる。

 2018年の1月にVaporwaveへのノスタルジーを感じさせるこのアルバムがリリースされた。2019年、Vaporwaveはどこへ向かうのだろうか。

 

 

 

cero『POLY LIFE MULTI SOUL』

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 2018年リリース。ceroの4thアルバム。

 3rdを聴いたときに、2ndの時から結構変化しているなと感じたが、前作と今作を比べてみてもその感想は変わらなかった。3rdアルバムに比べて、リズムに力を入れていると感じた。アフリカ的なリズムがところどころで目立つ。メロディだけでなくリズムの移り変わりでも楽しめるアルバムである。

 2曲目の『魚の骨 鳥の羽根』は3拍子と4拍子を行き来する、流れるように盛り上がっていく曲だ。時折使われるシンセサイザーも効果的である。

 1st、2ndアルバムあたりの、現実から少し抜け出した部分を描いたような歌詞よりも、このアルバムの4曲目に収録されている『薄闇の花』の歌詞で流れている空気に心を動かされる。こういった緩やかに空気が動いている曲、なかなか無いよなと思い何回もリピートした。5曲目の『遡行』の後半で3拍子になる部分も好きだ。

 

www.youtube.com

 

2019年はどういうアルバムに出会えるのだろう。楽しみである。

 

ザマギ『All Bonus Tracks』

 

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 2005年リリース。ヒップホップグループ、ザマギの1stアルバムである。

 ボーナストラックとは基本的に最後に入っている肩の力が抜けている曲である(度が過ぎると悪ふざけになったり、手抜きになったりするので、ボーナストラックを入れるのは意外にリスキーな気もする)。全てボーナストラックとは、タイトルからして何か人を食ったような感じを覚える。

 ゆらゆらとたゆたうようなインスト曲の『INTRO(Out Look)』から始まるアルバムは、『Bom Beat』『トリプルコンピ(Sunset tag)』と、割と肩の力が抜けた、気持ち良い温度の曲が続く。爽やかめなギターが良いアクセントになっている『ショッキングブラック(Drunce Mix)』、少し前のテクノっぽさをまとった『Music Is Music』で少しずつ熱が上がっていくが、圧力を感じないくらいの熱である。

 このアルバムの核だと感じた曲の1つとして、『やりたいように(Mondo Disco edit)』が挙げられる。4つ打ちのリズムに主張してくるベースラインがカッコよく、リリックも「やりたいようにやりなさい」と、ストレートなのだが、押し付けがましくない。押し付けがましくならない温度こそ、ザマギの良さだと思う。

 ステレオタイプの外人が言いそうな単語が並ぶ『/JP』、インパクトのある映像と顔面が良く動くアニメーションが特徴的なAC部がPVを制作した『マジカルDeath (Feel The Vibe)』はフック(サビ)になると急にキックが力強くなり、曲の高まりを感じさせる良曲である。AC部は4曲目の『ショッキングブラック(Drunce Mix)』もPVを担当していたりする。

 ゆるっとした雰囲気に、基本ポジティブだけれども押し付けがましくないリリック。何だか気の良い人たちが作ったんだろうなという気持ちになる。人を食ったタイトルと、なぜか旗あげゲームのようなものを始める、曲の間に挟まれるインタールードから垣間見える奇妙さ、他のアルバムやシングルのジャケット(シングル『くらっ』では、YMO『浮気なぼくら』のジャケットのパロディである)で、色物と早合点してしまうと、大きなものを見逃してしまう。

 定期的に聴き返したくなる、良いアルバムである。

 

 2枚のアルバムを出した後、ザマギは活動を行っていないが、後にメンバーを増やして『POLICEMAN』というグループを結成している。『GAL男宣言』はAC部のPVも相まって、怪曲に仕上がっているので、一度聴いてみてほしい。

 ちなみに、ザマギは『ザ・マインドギフト』の略らしい。

 

【トラックリスト】

1.Intro(Out Look)
2.Bom Beat
3.トリプルコンピ(Sunset Tag)
4.ショッキングブラック(Drunce Mix)
5.Music Is Music
6,モンキートーク
7.Past
8.やりたいように(Mondo Disco Edit)
9./JP
10.マジカルDeath(Feel The Vibe)
11.Circledelic
12.ヤバイ

 

www.youtube.com

 

【好きな短歌⑤】公園のふたりは黙る しゃべるより芝生のほうがおもしろいから/斉藤斎藤

公園のふたりは黙る しゃべるより芝生のほうがおもしろいから

斉藤斎藤比例区は心の花』(斉藤斎藤『人の道、死ぬと町』収録)

 

 誰かといる時に話が盛り上がるという状況は、相手と話している状態が心地よいと言える。2人の関係は友人なのかもしれないし、恋人、同僚、大学の先輩後輩、先生と生徒、いくらでもカテゴライズできる。

 対して、黙っている状態に関しては気まずさを感じてしまう場合が多い。初対面の人と会った時に、共通の会話が特に思いつかず、ただただ黙って状況を打破してくれそうな人や出来事の登場を待ち続ける。中にはそういった沈黙に耐え切れず、どうにかこうにか会話を繋いでいこうと、持っている手札をやりくりしながら話し続ける人もいるだろう。

 では、歌の中に出てくる『ふたり』は気まずい関係なのだろうか。個人的には違うと思う。気まずさを感じるほど、まだ構築されていない関係であるのなら、ふたりで公園には行かないのではないだろうか(何人かで公園に行って、トイレなどに行ってしまった結果、残されたのがふたりだったという可能性は考えられなくはないが、この文章では考慮しないことにする)。

 気まずさではないのなら、どういう関係なのだろうか。ここで考えられるのは、黙っていても場が保たれるほどの信頼ができている関係、喋らなくても良い関係である。

 喋るという行為は、場を保つ効果がある。黙った途端に場は停滞する。しかし、その停滞に関して気まずさを感じないほどの信頼感がこの歌の『ふたり』の中で構築されていると、個人的には解釈したい。

 黙るふたりのうち、主体の心は芝生に向いている。芝生がおもしろいとはどういう状態なのだろう。芝生のディテールに何か興味をそそられるものがあるのかもしれないし、芝生から自分の想像がスタートしていって、想像された何かがおもしろくなっているのかもしれない。そのおもしろさが頭の中にあるとき、相手の存在は隅におかれる。『芝生』のほうがあなたと『しゃべる』よりおもしろいとしても、崩れることのない関係は、かなり理想的な関係なのではないだろうか。

 ふたりが『黙る』ことに関して、『気まずい』と解釈するか、『信頼し合っている』と解釈するかで、この歌の読みはかなり変わってきそうだが、私は後者の解釈が好きである。

 

 ここからは歌と直接的な関係はないが、この沈黙していても崩れることの無い関係について、風見2さんという方が漫画にしているので、最後に紹介してこの文章を終わりにしたい。

 

 

 

 

 

 

 

紅茶とコーヒーがコンビを組んだら、どういう漫才をするのだろうか

 朝起きて意識がはっきりしてきてから、ドスドスという音が時々聞こえることに気が付く。考えられたのは誰かが跳ねまわっているのか、ぶつかり稽古でもしているのか、それとも誰かが私の家に侵入しているのかの3択で、最後の選択肢だった場合、ネズミならまだしも(ネズミでも十分嫌だが)人間だった場合、死ぬ確率はグッと高まる。嫌だなと思いつつ、トイレへ向かおうとすると廊下が異様なほど寒い。そこで第4の選択肢が出てくる。雪がある程度積もって、それがどこかに落ちる音だ。

 外を開けてみると雪が薄っすら積もっていた。約半年ぶりだ。普段新潟と言う場所に住んでいるので、以前住んでいた関東に比べると雪が降り始めるのが早い。

 雪が降ると、なぜだか外に出たくなるのは私の前世が犬だったからかもしれない。のんびりと支度をして、外へ出てみる。地面にはほとんど雪はなく、景色を一部分だけ切り取れば十分雨が降った後だと偽ることができそうだ。

 電車を使って、賑わっている方へ向かう。スーツをあまり持っていないので、買いに行くことを決意する。持っているスーツを変わるがわる来ているのだが、甲子園だったら批判が出ているほどの過密なローテーションになっている。

 自分に似合うスーツが全く分からないため、店員さんにこれこれこういう色のスーツを持っていて、こういう人を相手にした労働をしていますと伝え、アドバイスを貰いながら決めていく。社会ではスーツを着ることによって、労働をしていますよ感を出すのだが、感を出すのに数万円をかけなければいけないのはなかなか厳しいものがある。

 スーツをなんとか購入し、家電量販店に向かう。様々なものが売っていて楽しい。家のノートパソコンがもうボロボロで、持ち運んだ瞬間画面とキーボードが真っ二つになりそうだったので何か良いパソコンが無いかブラブラしてみたが、あまり収穫が無かった。照明コーナーを見るたびに、あの角度で照明がある家は1つも無いなと思う。

 家電量販店を出た後、店先に猫のおもちゃがぶら下げられているのに気がついた。上から糸で吊り下げられていて、くるくると回っている。触るとどうやら鳴き声を発するらしい。人が猫のおもちゃに触る。鳴き声を発しながら猫がクルクルと回る。どこかの部族の儀式みたいで、なんだか不気味だった。

 その後はカフェに行き、本を読んだり、提出する短歌を作ったりした。入ったカフェには紅茶コーヒーというものがあり、注文してみることにする。出てきたものを飲んでみると、コーヒーと紅茶が走って向かってくるような感覚に襲われ、どっちつかずの味に脳が混乱してしまう。「どうもー!!」と言いながら、センターマイクに向かっていくコーヒーと紅茶。コーヒーと紅茶はどういった漫才をするのだろうか。しゃべくり漫才? 間をたっぷり使った漫才? コントチックな漫才? 皆さんも是非考えてみてください。

 

第27回文学フリマ東京に参加するまで、参加、参加して

 毎年1回もしくは2回、インド料理を食べる機会がある。なぜかというと、文学フリマ東京に参加しているからだ。

 

 11月25日(日)に、第27回文学フリマ東京が行われた。過去最多のサークルが出店したとのことだった。今回は、第27回文学フリマに参加するまで、参加している時、参加した後という流れでレポートを書いていきたい。

 

 話は去年秋に行われた第25回文学フリマ東京までさかのぼる。大学時代の友人たちと『メゾン文芸部』というサークルを作り、本を頒布した。初めてサークル側として参加し、本も無事出せたという達成感もあったが、準備不足を露呈し、課題も多く残った。来年もまた合同で小説本を作ろうという話になり、その日から第27回文学フリマが始まった。

 始まったのだが、半年ほどは特に何も起こらず、5月下旬ごろに出店料を払うことになった。出店料を払うと、途端にカウントダウンのスピードが速まったような気になった。

 そこから数か月は特に進展はなく、私は短歌を中心に細々と活動しつつ、資格試験の勉強をしていた。他のメンバーがどういった日々を送ったのかは詳しくは分からないが、まあ生活していたのだろう。

 夏が始まり、うだるような季節が一生続くのではと心配し、やがてその暑さも落ち着き、資格試験も落ち着いた10月中旬、ようやく小説本の話が進みだした。とりあえず進捗の話をしたが、完成している人はいなかった。進捗という言葉を発すると、途端にLINEには三点リーダーが増える、どういった相関関係があるのだろうか。

 私も10月に入ってから、小説について考え始めた。同時に頒布予定の短歌冊子については、今年作った連作がいくつかあるし、構成も大体思いついていた。しかし、小説に関してはあまり思いつかなかった。

 色々考えた末に、以前ブログに投稿した架空のバンド紹介が、中身としては中途半端なものになっていたため、大幅に増補していくことにした。架空のバンド紹介は小説と言えるのだろうか。皆さんもおうちに帰ったら、家族と架空のバンド紹介は小説にあたるかどうか話し合ってみましょう。

 1年近く小説を書いていなかったため、リハビリとして掌編小説を書いてみることにした。脳内のIKKOが叫ぶことによる主人公の苦労を描いた『私の頭の中のIKKO』というものである。以下にリンクを貼っておくので、夜ご飯を食べた後、次の行動に移すには少し休みたいなと感じた時に是非読んでほしい。丁度いい分量なので。

kakuyomu.jp

 11月に入り、焦燥感を全身に浴びながら小説を書き進めた。日程自体は苦しかったが、書いている時はとても楽しかった。IKKOの小説を書いている時も楽しかった。書いていて楽しいかどうかはかなり重要視していて、3分の1書いてみてあまり自分の中で面白くなかったらやめてしまうことが多い。

 短歌を同時並行で進めつつ、先に出来上がった人の小説の校正を行う。校正が得意な友人がいてかなり助かる。スケジュールのミスとして、貴重な締め切り直前の休日に、野球をやって用水路にボールを放り込んでしまうハプニングもあった。

 何とか小説の校正も終わり、組版を急いで済ませる。初めて参加した去年はゼロからのスタートだったため、昼過ぎに作業を初めて、何とか区切りがつくのが深夜の4時ごろという地獄みたいな時間を過ごす羽目になったが、今回は多少なりとも経験値があったため、毎日6時間睡眠を確保できた。設定した締め切りから大幅に遅れる人がいなかったことも功を奏した。去年は提出状況があまり芳しくなく、修羅になってしまい、修羅の状態でバスに乗ったりもした。心は穏やかなほうが良い。

 組版や表紙の作成が終わり、どうにかこうにか印刷会社にデータを入稿できた。入金も忘れずに行った。同人誌や個人冊子を作成する際に一番重要なポイントは、お金を払い忘れないことである。

 生活を繰り返していくうちに、3連休になった。

 1日目の金曜日は、渋谷の東急ハンズで必要物品を買い揃えるところから始まった。去年は何が必要かいまいち把握しておらず、使い勝手があまり良くないもので挑んでしまった。定期的に文学フリマにサークル参加をしようと考えている人は、使い勝手(持ち運びやすさと言い換えることもできる)が良いものを選んだほうが後々苦労せずに済むだろう。

 渋谷の東急ハンズは品ぞろえが豊富なのだが、同じ階にあっても高低差がやや激しい。ひーこらはーこら言いながら売り場を行き来して、物品を揃える。そういえば、レジの近くに応援うちわ(ライブなどで出てるアーティストやアイドルの名前が書いてあるうちわ)の例として、「斬って!」と言うものがあったが、死への欲求がカジュアルすぎてビックリしてしまった。

 物品を買いそろえた後は、いったん休憩しようという話になり、カフェに行くことを試みた。しかし、3連休の渋谷は人だかりというにはあまりにも人が多すぎた。多く、苦しく、狭く、そして大盛況過ぎた。それは正にごった煮だった。カフェと言うカフェが満席で、渋谷をひたすら歩いたが、なかなか座る場所が無かった。もうはなまるうどんでも良いのではいう話が出てきたが、コーヒーやジュースを飲もうとしている人間は、妥協してうどんを食べないのでカフェ探しを続行した。それでも見つからず、ファミレスならどうだと思って入ったサイゼリヤで、空席は発見された。サイゼリヤ最高、一番好きなサイです。

 かれこれ一時間近く彷徨い歩いていたらしく、体力の回復に予想以上の時間を費やした。なんとか落ち着いたので、ポスターをコピーするためにキンコーズに向かった。

 初めて利用したが、コピーやラミネートもできるし、パソコンの貸し出しも行っている。また、文房具も貸してくれるので結構使い勝手が良かった。途中でお腹を下してしまい、キンコーズ内にトイレが無かったためダッシュで通りを駆け抜けたこと以外は予定通り作業が進んだ。

 その後は当日売り子として参加してくれる友人の家に泊まった。

 

 2日目は起きると昼で、そのまま友人とつけ麺を食べに行った。前回大盛を食べたので今回も大盛を食べたが、結構厳しい戦いになってしまう。どのサイズを食べたかはぼんやり思い出せても、食べ終わった後どれくらいお腹がいっぱいだったかは思い出せなかったから、毎回同じような失敗を繰り返すという友人の主張は、的確だと思った。

 その後はお腹を落ち着かせるためにあえて遠回りして渋谷に向かい、ガルマン歌会の会場になっているカフェミヤマへ向かった。少し早く着いてしまったので、近くにある無印用品で時間を潰す。無印に売っていそうな商品がそのまま売っていた。

 時間になったのでカフェミヤマに入り、詠草を受け取る。今年はいくつかの歌会に参加させていただいたが、ガルマン歌会が一番緊張する。オレンジジュースを飲む手が震えていたり、胃が痛くなったりした。

 歌会が始まると、震えはおさまった。評がどんどん出てくる。自分も少し発言をしたのだが、なかなか上手いこと読めていない部分も多い。自分は特に詩的な飛躍や文字からは直接発せられていないものを読み取るのがまだ下手だと感じた。歌に関しては、結構情報や内容を詰め込みすぎてしまうきらいがあるのだが、今回もそこを指摘された。今後も考えていきたい。

 3時間ほどで歌会が終わり、懇親会が行われるベトナム料理店へと向かった。前回は電車の都合で20分ほどしかいられなかったが、今回は最後までいることができた。相変わらずじゃがいも料理は美味しかったし、パクチーはあまり得意ではないらしい。色々な短歌の話が聞けて面白かった。

 その後は宿泊先のホテルに行き、ひたすら通販番組を見た後、深夜3時前に眠りについた。基本的にビジネスホテルなどに泊まるときは、通販番組かウェザーニュースを見ていることが多い。特にウェザーニュースは聴き流せるBGMとしてかなり優秀だと思う。

 

 3日目、いよいよ文学フリマ当日である。前回は当日になって色々足りないものが判明したのでかなり焦っていたが、今回は事前準備をしっかり行っていたため、特に慌てることもなかった。10時に入場し、時間内に準備を終わらせることができた。ブースレイアウトも去年より向上していた。一つ心残りがあるとすれば、キャッチコピーとあらすじが書かれた紙をリングなどでまとめて、手に取りやすい形で置けばよかったなと感じた。

 最初の1時間ほどは店番をしていたが、その後はちょくちょく欲しい本を買いにいった。基本的には短歌の本を多く購入した。

 短歌関連で言えば、私は7月あたりに石井僚一短歌賞に15首連作を応募していて、それの結果が本でまとめられていた。私は1次選考を通過していたため、名前とタイトルだけは最初のページに載っていた。最初は「おおっ!」となったが、時間の経過とともに悔しさが増してきて、時系列としては飛ぶが、帰りの新幹線の中でずっと悔しさが渦巻いていた。

 時系列を元に戻す。時系列を元に戻すというだけで元に戻るのだから、文章はある程度まで都合良く動いてくれる。時々小説や短歌冊子が売れるのを眺めながら、友人ととりとめのない話をしていた。

 13時頃に人員が増えたため、昼ご飯を食べることにした。バターチキンカレーとタピオカドリンク(チャイ)を購入し、休憩スペースで食べた。バターチキンカレーを食べると「インドだなー」としみじみ思うが、私は1回もインドに行ったことが無いため、感じているのは架空のインドである。このくだり、毎回やっている気がする。

 午後になると、大体お目当ての冊子や本も買い終わり、ひたすらとりとめのない会話をしていた。あるいは5文字以上の単語縛りでしりとりをした。私はしりとりが強いので5文字以上のしりとりで勝つコツを教えます。人名を使うことです。

 ぽつぽつと私たちのサークルの本を購入してくれる方がいて、かなりありがたさを感じた。私が不在の時に、そこそこの時間悩んで、購入してくれた方がいたらしい。「普段どんな小説を書いているんですか?」と聞かれたらしいが、最初にかけ算とアルバムレビューを組み合わせた小説(?)が入っているため、そう聞かれてしまうのも無理はないと思う。私は去年、遺灰を投げる大会に打ち込んでいく男の話を書きました。

 あっと言う間に午後は過ぎていき、少し早めに後片付けをして私たちの文学フリマは終了した。その後は当日参加したメンバーで中華料理を食べに行った。私はゴマ団子を見つけるとハチャメチャに食べる習性があるのだが、それが原因で以前お腹を崩壊させてしまったので今回は抑えめにした。学習能力がある。

 その後は今後の話をして、新潟へ戻った。かなり疲れていたのと、様々な思考が渦巻いていたため、電車を乗り間違えてしまい、もう少しで詰む(地方は都会より終電で詰むとどうにもならない)ところだった。

 

 今回会場で売れた冊数は、小説が6冊、短歌(新刊)が7冊、短歌(既刊)が3冊だった。小説は伸長したが、短歌は販売冊数が下がってしまった。外に放流してこそ冊子なので、少し悔しい結果である。小説は半年以上書いていなかったし、短歌もあまり外に出す機会が無かった。出さなければ気づかれない。生活も落ち着いてきたので、少しずつ外に出す量を増やしていきたい。

 それ以上に悔しかったのが石井僚一短歌賞で、寺井龍哉さんに私の連作を8位にしていただいたが、選考会で連作が話題に挙がるためにはあと順位を3つ上げる必要があったし、5番は1番ではない。短歌に勝ち負けや順位という概念はあまり似合わないのかもしれないが、私は町一番の負けず嫌いなので、悔しいものは悔しい。M-1グランプリ後の反省会で、ゆにばーすの川瀬名人が「自分を殺したい」と発言していて、なぜだかこっちが泣きそうになってしまったのだが、それと同系統の感情として、後で見返しても満足いくものを作れていない自分に腹が立ってくる。

 そう思うと、色々創作意欲は湧いてくる。やってみたいことはたくさんあるし、倒すべき自分はたくさんいる。沢山良い冊子を買ったし、それらを少しずつ読みながら、少しずつ短歌や小説を作っていければと思う。

 

 来年の秋も文学フリマ東京に参加予定である。来年はどんな冊子を出しているのだろうか。

 

 今年はこんな冊子を出しました。

合同小説集『メゾンの闇鍋』

komugikokomeko.booth.pm

『伝説のバンド、Multiplication Table』という小説(?)を書きました。かけ算九九が登場する音楽レビューです。

 

短歌冊子『だけの日だった』

komugikokomeko.booth.pm

 短歌、レポート、写真が載っています。

 

 よろしくお願いいたします。

自選十首など

 最近は文フリで出すブースの宣伝マシンになっている気がする。

 ガシャーン ガシャーン 

 文フリ宣伝ロボだよ

 自動で宣伝をしてくれるすごいやつだよ

 とりあえずやれる宣伝はやっていきたいと思う。

 

 ダメ押しのように宣伝をしておくと、2018年11月25日(日)に文学フリマ東京にて、文『メゾン文芸部』というサークルで合同小説集と短歌冊子を頒布する。

以下に情報をまとめる。

日時:11月25日(日) 11:00~17:00

場所:東京流通センター 第二展示場(東京モノレール「流通センター」駅から徒歩1分)

   ※“空港快速”は「流通センター」駅に止まらないので注意

ブース:F-47(第二展示場1階)

   ※位置は下に掲載したブース配置図を参照

サークル名:メゾン文芸部

ジャンルは短編・掌編・ショートショートだけど短歌もあるぞ!! 是非!! 

 

 

 

文フリ東京に関する詳細は公式サイトを参照してほしい。

bunfree.net

 

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 上記画像は文学フリマ公式サイトより引用した。

bunfree.net

 

 私は普段短歌や小説を作っているのだが、どういった短歌を作っているのか分からない方も多いと思うので、十首自分で選んでみた。左に進むたび、比較的新しい短歌になっている。以下の短歌を読んで、文フリの当日に私たちのブースを訪れていただけたのなら、とても嬉しい。f:id:komugikokomeko:20181121202333p:plain

 

自選十首     橙田千尋

 

喋るとき出る「あ」が丁度一〇〇〇回目俺の頭上で鳴れファンファーレ

 

君に合う学部を作りつやつやの単位を飽きるまで渡したい

 

気の利いた会話ではなく僕はただ完璧なおはようが言いたい

 

ゆっくりと空からスタッフロール降る僕らはここで終わるのだろう

 

ミラノ風ドリアの風を言うときの口で私は練習したよ

 

壇蜜は宝石型の飴玉を舐めてるらしい だけの日だった

 

炭酸の気泡、あるいは一斉に放たれる五月の徒競走

 

夕立に囲まれながら濡れ方のアンソロジーをひとつずつ目に

 

町中のシーツを干せばこの町はひとつの入道雲なのだろう

 

図書館を出たあとみんななまぬるい なまぬるいのを笑える人だ

 

好きなジャケット/文フリ(ドラムとハイハット)

 最近のことを思い出そうとするが、特に変わったことはなかったなということに気づく。道を歩いていたらどこからともなく大きいくしゃみがやってきて、その瞬間鳥がばさばさと飛び立っていったのが面白かったり、漫才でよく、手でドアを開ける真似をしてお店に入るシーンがあるけれど、ほとんどの場合店に入ったままで漫才が終わるから、お笑い芸人の大半は架空の店に入りっぱなしなのではと考えたりなど、丁寧な生活とは離れた暮らしをしている。

 コンビニのイートインスペースでおにぎりを食べている時、好きなアルバムのジャケットについて考えた。一番好きなジャケットはRaime『Quarter Turns Over A Living Line』だ。

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 地面と闇と髪の黒と、服と肌の白のコントラストと切り取られた動きが凄まじい。文字が1つも無いところも美しさを際立たせている。ちなみに、このアルバムは漆黒の中から重低音が響き渡るような音が特徴的なので、夜に聴いてみてほしい。部屋の明かりもできれば消してみてほしい。

 そんなことを考えていたが、今日の夕方辺りにRAという電子音楽やクラブミュージックを中心としたウェブサイトを見ていたら、これに匹敵するジャケットを発見した。Jlin 『Autobiography』である。

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 動きと色のコントラストがこちらも美しい。アルバムの内容は、フットワーク(アメリカ発祥のダンスミュージック)が基調となっている。こちらも重低音が強調された、暗めの音楽である。

 こういうジャケットを見ていると、文フリで頒布予定の冊子も影響されそうである。表紙にはタイトルが書かれていたほうが分かりやすいが、文字が入ると蛇足になってしまうものもある。写真やイラストが恰好いいのに、フォントが妙に俗っぽくて浮いてしまうのは勿体ないような気がする。

 今年の秋も文フリ東京で、合同小説集(友人たちと製作)と短歌冊子を頒布予定である。今年の春に出したものより良いものが作れればと思う。最近は短歌を作る際に、ハイハットやキックを歌に合うように作りこむことを心がけているが、あまり量が作れていない。小説もそろそろ作っていかないといけないが、休日をなかなか有効活用することができない。基本的に休日は午後から動き始めるので、二日休みも実際は1日しか活用できていないことになる。

 頭の中にIKKOが現れる小説を書いたので、まだ見ていない方は読んでいただければ幸いです。

 時間も無いので身近なところから掘り進めていきたい。

kakuyomu.jp