コムギココメコ

備忘録と不備忘録を行ったり来たり

小説

散りつつ歩く(2)

※前回 散りつつ歩く(1) - コムギココメコ 川に沿って並んでいた工事用フェンスが無くなると、サッカー場が現れた。試合ができそうな広さだったが、すぐ横が川だ。ボールが川に飛び込まないようにネットが張られているが2〜3メートルほどの高さしかない…

散りつつ歩く(1)

駅を降りるとすぐに、年季の入った階段が見えた。階段を登ると車道になっているらしく、車が行き交っている。 階段を登るとすぐ目の前を自動車が通り抜けた。地元の人は慣れているのかもしれないが、初めて駅に降り立った自分は心臓が少し冷えたような気持ち…

私の頭の中のIKKO

夕方、訳も分からず病院へ行くことになった。状況も呑み込めないまま車に乗せられる。どうやら父方の叔父が今日もたないだろうという話で、最期を看取りに行くとのことだった。 だが、自分はその親戚にあまり思い入れがなかった。小学生の時に何回か会ったこ…

fugitive

好きだからこそ、ひたすらに待つ。もう会わなくなる最後の最後まで、ただただ待ち続ける。 私は高校3年間の間、好きな人がこの場所に来るのを待っていた。正門から校舎へ向かう道を少しずれたところにある、昔の卒業生たちが記念に植えた桜の木の下。そこで3…

お寿司ノート(1月)

1か月前までお団子が大好きで、そればっか毎日毎日食べてたけど、最近は食べなくなりました! 卒業の季節も近いもんね。そろそろ他のものも食べなきゃいけないし、遠いところに行かなきゃいけないし。 昨日は回転寿司に行きました。近くに3つくらい回転寿司…

箱ⁿ(Remix)

ある日、玄関のチャイムが鳴った。誰かが家を訪ねてくると連絡は来ていなかった。郵便か宅配便だろうと思い、男がドアを開けると、そこには誰もいなかった。いたずらかと思い、苛立ちはじめる。ドアを閉めようとすると、地面に箱が置いてあるのに気が付いた…

箱ⁿ

ある日、玄関のチャイムが鳴った。男がドアを開けると、誰もいない代わりに箱が置いてあった。箱はいわゆる段ボール箱で、A4用紙がピッタリ入るような大きさであった。 男は段ボール箱をリビングの床に置いた。差出人も箱の中身も書いていない。一体誰が置い…

箱⁴

「ミカちゃん誕生日おめでとう。プレゼントだよ」「ありがとうおじいちゃん!! ねえ、開けてもいい?」「もちろん」 ミカはラッピングされた箱を開け始めた。「あれ、ただの箱?」「取っ手を引いてみなさい」 ミカが箱に付いた取っ手を引くと、中から小さな…

Several Seven

【木曜日】 秋雨はしとしとしとしとと降り続いている。白線も連日の雨で、溶けだしてきている。横断歩道は白と灰色が混ざり合ってもう原型をとどめていない。それらはスープになっているような気がした。私はアパートからコップを持ちだして、横断歩道を渡る…

はがね/いわタイプ大学

大学には一般的に食堂というものが存在し、咳止めシロップの購入費を節約して遊園地に行ったりするのだが、鳩鳩鳩鳩鳩鳩から海老名サービスエリアに移動する際の注意点、ハニートーストを180個用意しました。や。や。ややや██████っぱそまめろろめめ████████…

バクレツパンチインマイヘッド

ある朝、高橋美嘉が不安な夢から目を覚ましたところ、ベッドのなかにいる私の頭の中でばくれつパンチという言葉が焼き付いていることが分かった。おわり。 おわりおわり。だってそれだけだし。巨大な虫に変わっていたり神輿を担いでいたりするならまだまだ不…

Fugicide

行動力行動力って人はいつもプラスのイメージで言うし、それ以外認めないような空気を漂わせてるけど、そんな訳ないって思ってる。マイナスの行動力だって立派な行動力だ。何かから視線を逸らしたり、逃げたり、死んだり。全部行動力があるからできるんだ。 …

SCP-???-JP-意識の高いコーヒー店

SCP-???-JP-意識の高いコーヒー店 Object Class:Euclid 取扱方:SCP-???-JPはその性質上、特定施設への収容が困難です。SCP-???の中には常に席数分のDクラス職員を待機させ、30分毎に交代させる必要があります。SCP-???入口付近には1人、コーヒーショップの…

それでも、私は考えている方が好きかもしれない

この手紙を読んでいる時、私はどうなっているかなんて分からない。生きているか死んでいるかのどちらかで、それらはコインの裏表のようになっているけれど、決して50%なんてことはあり得ない。あり得ないけど、結局は50%になってしまう。なぜなら、生きて…

帯分数 独占インタビュー(後編)

鬼才、帯分数への独占インタビューの後編である。前編を見ていない方は先に前編を見る事をおすすめする。 komugikokomeko.hatenablog.com 【帯分数 独占インタビュー(後編)】 -- 今あなたはベルリンに住んでいますが、それがあなたの音楽やインスピレーショ…

帯分数 独占インタビュー(前編)

2006年日本人として初の、イギリスのレーベルBreadからリリースされたデビューアルバム "ソーナンスの性感帯って尻尾じゃないんですか" でシーンに衝撃を与えて以来、続けて2008年制作の "プププランドってインフラという概念があるんですかね" もスマッシュ…

株式会社[テキストを入力してください]

株式会社[テキストを入力してください] エントリーはこちら! 私たちはこんな事業をしています! 企業が抱える経営課題の約80%は「視力」で解決できると言われています。 経営において最重要であるスライド式消しゴムに対し、酸っぱいほうの課題解決を行っ…

10個のビーンズ

図書館には何があるか知ってるかい? 知っている? 本? 馬鹿言え、ここは2016年だぞ。本なんかとっくにあるもんか。図書館に入った時点で本は養分にされて、分解されて死んだんだ。ありゃ本じゃねえ。 しかし、リストカットに関しては自己愛という解釈が一…

伝説のバンド「掛け算九九」を知らない子供たち

計9枚のアルバムを出した伝説のバンド「掛け算九九」。君たちはこのバンドを知っているだろうか。解散して25年経った今でも、私たちの心を揺さぶり続けている。かくいう私も、小学生の頃に「掛け算九九」を知り、衝撃を受けたものだ。一時は社会現象になった…

20??020512134

あいつは突然、何の連絡も無しにやってきた。 仕事から帰った俺を、あいつは部屋の中で待っていた。あいつは白い襟付きのシャツとジーパンを履いて、俺の姿を認めると軽く手を上げた。 あいつと会うのは今日が初めてだった。顔も見たことがないし、名前すら…

スローモーション→スローモーション

白い目玉焼きを見た瞬間、雪が降っていることを思い出して、窓を見た。ツートンチョコレートの白い部分だけが浮いているような雪。もはやツートンとは言えない。ホワイトチョコレートで良かったのだろう。 黄身は部屋中を跳ねまわっている。捕まえようと手を…

ドラキュラ屋敷

「困ったものだ」 町内会長はため息をついた。ため息が飛んでいく先には、巨大な屋敷があった。 町で一番大きな建物で、外国の映画に出て来そうな立派な洋館だったが、ここ数年、誰も借り手がいなかった。とある噂のせいで管理したがる人もいないため、草は…

処刑講義

人は集団で行動したがるものである。集団で行動すると、大抵の場合交流が始まる。交流が始まると同時に、お互いが喋ることも多くなる。そして、お喋りがひどくなると騒音と区別がつかなくなってしまう。 P教授は3時限目の授業時、不満のピークに達していた。…

シュルジョシリスム。

「今日は何する? 何したい? 先週は爆撃やったじゃん? 今日は違う事やろうよ! 毒薬? ねえ毒薬とか良くない? 毒薬作ってみたくない?」「なんでシリアス限定で事を進めたがるんですか。もうちょっと楽しいことをやりましょうよ」「じゃあ豚肉に片栗粉ま…

ベンチに誘われて

誰も座らないベンチが私が住んでいる近くの公園にあると気づいたのは、確か春だったか夏だったか秋だったか冬だったかは分からないけども、とにかく、いつの間にか気づいていた。その公園は別に寂れているわけじゃない。 平等に座られていないベンチが4つあ…

エンターテイメントなら馬鹿でもできるもの

強盗は犯罪だ。犯罪はやってはいけないことだ。でも私には関係ない。彼がやろうと思っているだけだ。だから私には関係ない。 彼は社会に適応しない。適応できないと言った方が正しいか。社会に適応しないから、職にも就けない。職に就けないという事は、お金…

いつだって鎧の中は柔らかい

灰色の建物が、10月の夕暮れにぽつりと佇んでいる。6階建てで、周りに高い建物が無いという事もあり、何とも言えない威圧感を帯びていた。近づいてきた空気は建物にぶつかり、地面へと力なく墜落していく。そうして死んだ空気が地面に積み重なり、異臭を放っ…

掌編トリメチルアミン

【飼い行列と野良行列】 季節は10月になった。今日は10月にしては寒い日だ。寒い日だろうが暖かい日だろうが月曜日は平等にやってくる。そんな月曜日を僕は嫌いになりそうになる。曜日は七人いて、それぞれ違う顔をして、違う性格をしている。だから、この曜…

私のための記念碑(機械)

以下の文章は、翻訳ツールとの共同執筆になります。方法といたしましては、私が元の文章を書き、翻訳ツールに校正をしていただき、それを元にまた私が文章を手直して完成というものです。このような試みは初めてであり、まだまだ試用段階の部分も多いですが…

ナンセンスは繰り返す

私の大学にはラウンジがある。そこは、よく学生が勉強をしたり、友人と話をしたりするために使われている。ラウンジには窓がいくつもあり、陽の光は部屋を心地よく満たす。机も温かみのある色合いだ。私も時々利用していた。 ラウンジの常連に、百瀬という知…