コムギココメコ

備忘録と不備忘録を行ったり来たり

逃げ出した名前

髙橋と言う男がいた。

髙橋は小学校から高校まで常に人気者であった。大学でも人気者であった。しかし、大学2年生になってすぐ、事件は起こった。

彼の「名前」が逃げ出してしまったのだ。

それからの彼は誰からも見向きをされなくなった。名前が逃げ出すその瞬間まで、彼は人気者だったはずなのに。その後彼は大学を休学した。

髙橋が休学した後、彼と入れ替わりになるように高橋の名前が戻ってきた。高橋の名前は誰からも好かれているようだった。

 

自分の名前が消えた場合、自分は自分でいられるのだろうか?名前はその人を表す。しかし、その名前が消えた場合、今までの関係、信頼、出来事も消えてしまうのではないだろうか。逆もあり得る。今までの悪事も、名前が消えてしまえばなかったことにできるのではないだろうか。

名前が消えたなら、そこにあるのはただの物体である。身体が生きてるのか名前が生きてるのか、おそらく名前が生きているのであろう。いつ自分の名前が逃げ出してしまうかわからないまま、明日も生きていかなければならないのだ。

 

名前の消えた人は名前探しの旅にでればいいのではないでしょうか。自分探しの旅よりよっぽど有意義だと思いますが。