コムギココメコ

備忘録と不備忘録を行ったり来たり

28回目の鐘まであと少し

お元気ですか?

 

 朝起きる。何もしないけれど起きる。別に何もしないのなら、起きる必要は無いんじゃないかって思うけど、とりあえず起きてみる。相変わらず部屋はそのままの状態を維持している。飲み終えたココアの缶だって、その場で佇んでいる。逃げ出したりしないのは偉いなと思う。偉いけど捨てる。

 外に出るためにドアを開ける。ドアを開けたら、他の景色になっているんじゃないかなんて、期待してみたりする。そんなことは起こらないかもしれないけど、ドアが逆に開くくらいのサプライズはついつい期待してしまう。結局ドアはいつもと同じように開くし、外だっていつものように向かいのアパートが見えるだけだった。ケチ。

 とりあえず歩く。少しだけ雨が降っていたので、路上の傘もまだ七分咲きといったところ。私は傘を満開にして歩く。

 図書館の近くまで来たので中に入る。図書館は相変わらず静かだ。ストレスを抱えたりしないものだろうか。私はずっと黙っているとストレスが溜まってしまう。だから、いつも図書館に行った後は、自室で大声を出したりする。図書館も真夜中に大声を出しているのだろうか。出しているなら、声帯があるということになる。

 3時間ほど滞在し、帰ることにする。途中中学2年生の集合体に会った。制汗スプレーの臭いをまき散らしながら、私を食べようとしてくる。私は駆け足で逃げようとした。でも私はいつも文化部だったし、靴だって走れるようなものじゃない。食べられるのを覚悟した瞬間、前から先生の集合体が大声でやってきた。私は助かったと思った。けど、中学2年生の集合体に、「ほどほどにしとけよ」と注意するだけ。ほどほどって何を意味しているの? 私の右腕だけだったら食べていいとか、そういうことを言ってるのなら、迷惑だからやめてほしい。カニバリズムとか流行らないよ。この変態。そんな事を思っていたため、一瞬、中学2年生の集合体への注意が途切れた。気づいた時には、私の左腕は噛みちぎられていた。左腕だったか。惜しいなあ。ちぎれた腕からは砂が絶えずさらさらと流れている。痛みは不思議となかった。中学2年生の集合体はそれで満足したのか、それとも先生の言いつけを守ろうとしたのかは分からないが、そのままどこかに行ってしまった。

 取りあえず治療をしたほうが良いだろうと思い、その足で病院に行く。受付を済ませ、待合室で呼ばれるのを待つ。ブラインドを見ていると、首吊りにうってつけの紐が垂れ下がっている。私の腕からは砂は出続けていて、足元は既に砂で絵を書けるくらいの量になっていた。待合室は3時間に1回鐘が鳴るだけで、誰も呼ばれない。いったん外に出て、マユミとの約束を中止にしてもらい、待合室に戻る。こうして、今も待合室の中で27回目の鐘が鳴ったのを確認しつつ、ひたすらに待ち続けている。