コムギココメコ

忘れてもいいことを書くので不備忘録

読書感想文その5

 お元気ですか?

 読書感想文を引き続き書くことにする。10月分がまだ終わっていないので、早く書いて、と自分で義務にしてしまうと途端に書けなくなる気がするのでやめておく。今まで気楽に、書きたいから書いてきたのだ。別に夏休みの宿題のようにする必要は無い。というわけで感想を書いていく。

 

佐藤信夫『レトリック感覚』(講談社学術文庫)

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 世の中には様々なレトリックが存在する。そんなもの使ってないと思っていても、無意識に使っていたりする。レトリックという言葉を知らなくても、直喩や隠喩という言葉は、大体の人が知っているだろう。
 この本はよく知られている直喩、隠喩といったメジャーなレトリックから換喩、提喩、誇張法、列叙法などあまり耳になじみのないマイナー(知名度という面からすると)なレトリックが詳しく書かれている。また、レトリックの例として、様々な文章が用いられている。偉大な小説家のレトリックの凄さも感じることができる。更に、作者自身も文章中によくレトリックを用いているので。まさにレトリカルパレードとついつい書きたくなってしまう。
 また、レトリックに対する扱いの変遷、日本にいつ頃輸入されたのか、輸入されたときどのような意味合いで使われていたのかについても書かれている。本来レトリックには弁論と芸術という2つの意味で使われてきたと作者は言う。しかし、それらの意味とは別に、第3の意味がレトリックにはあり、作者は第3の意味にレトリックの意義を見出している。気になるのであれば、是非読んでみることをおすすめする。読んだ後、様々な文章中のレトリックが気になることだろう。

 

舞城王太郎好き好き大好き超愛してる。』(講談社文庫)

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 僕の中の小説世界が狭いから10月に入るまで舞城王太郎について全く知らなかったのは僕の小説世界から舞城王太郎という名前がはみ出ていたかデータベースに存在しなかったかのどちらかだろう。たまたまWebサイト上に掲載されている筒井康隆の「偽文士日碌」で作者の名前を知り少し気になったのでネットで調べる。ポチポチポチポチ。あった。作品のリストを眺めているうちに1つの作品のタイトルに惹かれる。それが『好き好き大好き超愛してる。』だ。

 この本はSFチックな短編と主人公と彼女である柿緒についての文章が交互に載っている。作品内で共通しているのはずばり「愛」だ。主人公は女性を愛していてそれは作品内で既に彼女になっている場合もあるけれどまだ会ったこともなく顔を知るのも話の最後になってからという場合だって存在する。つまり人それぞれだ。それでも主人公たちは様々な形で愛することになる。
 個人的に好きだった場面は主人公(柿緒の彼氏)が最後に愛と小説について想う場面だ。読んだときにタイトルの意味が心にじわじわじわと溶け込んでいくような感覚になる。恋愛小説は主人公や彼女を悲しい思いにさせておけば泣くだろうと書き手の意図を考えてしまって読む前に冷めてしまう。僕の偏見。でもこの小説は悲しませて泣かせるタイプのものではない。だから自然に感情が揺さぶられて目は自然に潤んできて涙は頬のどの部分を伝おうかと考えているようだ。
 タイトルを批判する人もいたらしいが私はこのタイトルが一番小説に合っていると思うしこれから他の作品も読んでみたいなと思う。

 

直江 清隆・越智 貢 編『生きるとは(高校倫理からの哲学 第1巻)』(岩波書店)

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 倫理や哲学という単語は人々を身構えさせる力があると私は思う。ああ、あのよく分からない小難しいやつねと人々を警戒させるような気がするのだ。おそらく作者側も多かれ少なかれそのような事を思っているらしく、高校倫理からの哲学と銘打って、読者のハードルを下げようと努力している。
 題名にもなっている『生きるとは』という大きなテーマの中に細かなテーマがあらかじめいくつか設定されている。細かなテーマは、テーマを論考する文章と対話形式の文章、コラムから成り立っている。対話形式という点からも、ハードルを下げようとする意図が感じられる。
 問題に挙げられやすいなる脳死や自尊死、他にも環境について倫理的な説明と考えが載っていて、現代に沿っているし、文章もあまり難しくないので、ある程度倫理や哲学に興味があるのであれば、読むのに骨が折れるということはないだろう。しかし、これは倫理や哲学という、主張が人によって違う分野なのでしょうがないかもしれないが、偏りが無いように、明確な主張は薄いように感じられた。それを良しとするか、曖昧だと不満に思うかは人それぞれだと思う。個人的には万人に読んでもらうにはしょうがないのかなと思う。

 

10月の読書感想文終わり。それじゃ。