コムギココメコ

備忘録と不備忘録を行ったり来たり

腹痛のチケット

 最寄り駅前のすぐ近くに、ラーメン屋が存在する。最寄り駅の近くにあるラーメン屋というだけでポイントは高くなるのだが、私にとっては美味しいラーメン屋なので、さらにポイントは高くなる。

 そのラーメン屋はいわゆる家系と言われるジャンルに属している。家系について雑に説明すると、豚骨醤油のスープに鶏油が浮かんでいて、海苔とほうれん草が乗っているラーメンだ。また、オプションとして、麺の固さ・味の濃さ・油の量をある程度客側が指定することができる。カスタマイズ可能なラーメンである。自分好みにラーメンをカスタマイズさせ育てたり、通信対戦で他のラーメンと戦ったりするのだ。

 最初に訪れた時は、家系というジャンルの存在も知らず、また食べた事も無かったので、ビックリしたものだ。体には悪いと思うが、おいしい。この世には、体に悪い食べ物ほど美味しいという真実が存在する。

 美味しいラーメンなので、その後も何回も訪れるようになった。しかし、年月が過ぎるにつれ、1つ気付くものがあった。

 昔より量が食べられなくなったということだ。

 その店には量が3つあり、並盛・中盛・大盛の順で増えていく。最初は大盛を頼んでいたのだが、ある日を境にかなり苦しい思いをしないと完食できないことに気づいた。そのラーメン屋に行くときは大抵の場合電車かバスに乗ることになるので、公共交通機関で苦しい思いをすることになる。 

 ちゃんと腹八分目にしなければならない、もう沢山食べれば満足する年でもないのだからと思い次からは中盛に半ライスをつけることにした。今考えると、あまり大盛と大差ない。満腹中枢への攻撃方法が多少変わっただけである。

 その後、中盛と半ライスを食べると辛いという事が分かった。大盛の時は1年近く気づくのに時間がかかったが、中盛と半ライスの時は2ヶ月で済んだ。頻繁に行くわけでないため、気づくのに時間がかかる傾向がある。

 現在は中盛のみを注文するようになった。これにより腹九分目くらいですませることができる。人間は失敗を繰り返して学ぶ生き物なのだ。

 しかし、新たな問題が発生するようになった。その店のラーメンを食べると、高確率でお腹を壊すということだ。

 今までは二郎系ラーメンを食べると高確率でお腹を壊していたのだが、範囲が広がってしまった。どうやら油が多いものを多めに食べるとお腹の調子が悪くなるらしい。

 この問題はなかなか難しく、解決策としては油を少なめにしてもらうしかない。しかし、まだ試した事がない。油少な目でお腹を壊したら、もう解決策がその店のラーメンを断つ以外に無くなってしまうからだ。使える手札がなくなってしまうのが1番怖い。

 美味しいラーメンを食べたい。しかしお腹は壊したくない。電車に乗っている最中にお腹を壊せば、かなり厳しい事態になる。また、数百円だして腹痛のチケットを買うのは損をした気分になる。

 腹痛のチケットを貰わないためには窓口に近づかない事が必要だ。しかし、ラーメン屋で量を食べようとすると、勝手に窓口に案内されてしまう。量を食べれば満足と高校生時代の考えが抜けきっていない。

 私は大人にならなければならない。これからは1番少ない並盛を油少な目で食べるしかないのだろうか。真の大人になるためには、楽しみを犠牲にしなければならないのか。厳しいものである。