コムギココメコ

備忘録と不備忘録を行ったり来たり

V.A.『WEB / そ の 意 味 で』(2018年に購入/レンタルしたアルバム)

 深夜、寝落ちしそうな時に流れているテレビのCM。スーパーなどで流れている曲名があるかどうかも怪しいフュージョン。建物の中で流れる頭にのこらない音楽。それらに耳を傾けてみると、案外面白い発見があったりする。

 Vaporwaveというジャンルがある。昔の曲やCMなどをスクリューしたり、執拗にループした音楽というざっくりとした定義はできるものの、最近は多様化が進み、一概には定義できないジャンルになったように思える。

 Wikipediaには、「2010年代初頭にWeb上の音楽コミュニティから生まれた音楽のジャンルである。大量生産の人工物や技術への郷愁、消費資本主義や大衆文化、1980年代のヤッピー文化、ニューエイジへの批評や風刺として特徴づけられる」と書かれているものの、本当にそこまで考えて行われていたのかは、各個人の頭の中にしか正解が無いため、分からずじまいである。

 今回はそんなVaporwaveを味わうことができるアルバムを紹介したい。

 

V.A.『WEB / そ の 意 味 で』

 

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 このアルバムでは、Vaporwaveに関わっている人の曲が収録されている。このジャンルに揺られているとよく見かけるアーティストの猫 シ Corp.や 豊平区民TOYOHIRAKUMINや、海外の音楽レビューサイト『RA』でも作品をレビューされているNmeshも参加している。個人的にはCMを執拗にループさせた曲が好きなので、
OSCOBや天気予報の参加は嬉しいものがある。

 ジャケットはもうごちゃごちゃで、Vaporwaveではもはやマスコットキャラクター的扱いの胸像や、パソコンの画面、なぜか64版のスマブラのキャラクター選択画面も左上に存在している。右下にはカラフルな色で「週末」と書かれているが、おそらく何も意味は無い。

 曲を聴いてみると、サンプリングした素材をグズグズになるまで煮込んだような曲がたくさんある。

 3曲目の猫 シ Corp.『楽しい』では、スクリューされた素材とディレイのかかったドラムで溶けていくような感覚になる。8曲目のOSCOB『AGES』はメガドライブのCMが執拗にループされる。このCMはいとうせいこうが出演しているが、スクリューしてスピードを下げているため、声の主が誰だか分からない。14曲目の天気予報『不明な送信機』では、テレ玉(テレビ埼玉)のCMや天気予報を聴くことになる。音楽プレーヤーで天気予報を聴くのは、なかなか無い体験かもしれない。

 一番良かった曲は9曲目の海岸『すてきな階段』である。何かの曲の一部分が靄がかかった状態で約7分間続くのだが、どんどん輪郭がぼやけていって、しまいには最初に聞こえていた歌は溶けてしまう。眠る前の感覚にそっくりだ。

  

 このアルバムからVaporwaveのドアを開けてみるのも良いと思う。ちなみに私は寝る前によく聴いている。アルバムを聴いてみて、興味を持った方は、このアルバムに参加している捨てアカウント氏のTwitterや記事を見てみると良いかもしれない。

themassage.jp

 比較的最近(と言っても去年だが)のVaporwaveがどんな動きをしていたのかがうかがい知れる良い記事。

 

 このアルバムは、BandcampにてName your price(自分で価格を決める)で購入できるため、視聴して良いと思ったら購入してみると良いだろう。