コムギココメコ

備忘録と不備忘録を行ったり来たり

石井は生きている歌会@福島に参加しました

 遠足感、というものがあると私は考えている。

 楽しみなものかつ、まだ何が起こるか分からないものが近づいてきたとき、頭の中でずっとカウントダウンの数字が刻まれていて、ずっとカチカチ鳴っているような気がする。何か別の作業をしていても、ふとした瞬間にカウントダウンの存在を思い出す。当日に近づくにつれてカウントダウンの音は大きくなって、当日になると急に音が消えて正気に戻る。すると何が起こるか分からないものに対して、少し不安になる。

 最近は遠足感を味わえるような経験はあまり無かったが、久々に味わえるような経験をした。遠足感を引き起こしたイベントは、石井は生きている歌会@福島である。

 

 石井は生きている歌会を主催している石井僚一さんとは、ゴールデンウィークに行われた、石井僚一『死ぬほど好きだから死なねーよ』批評会後の二次会で1回話したことがあった。気さくな方だった。石井さんは歌会活動家と名乗っているため、次は一緒に歌会をしてみたいと感じた。

 

批評会の感想は以下の記事にまとめています。よろしければお読みください。

komugikokomeko.hatenablog.com

 

 少し経つと、石井は生きている歌会@福島が開催されるというツイートが目に入った。ゲストは井上法子さんだ。井上さんは書肆侃侃房の新鋭短歌シリーズより『永遠でないほうの火』を出版している。良い歌が揃った歌集なので、是非手に取っていただきたい。

www.shintanka.com

 

 私の住んでいる新潟から福島は高速バスを乗り継ぐ必要があったが、お金を工面し、労働も回避できたため、参加することにした。

 歌会当日まで残り一週間になった頃に、提出する自由詠を考え始めた。選あり(歌会では選といって、良いと思った歌を選ぶシステムが採用されているところが多い)の歌会は参加したことがなかったため、どういう気持ちで臨めばいいのかわからず、ひたすら肩に力が入った。私は結構な負けず嫌いなので、どうしても選が欲しいとついつい考えてしまう。しかし、誰が来るのかほとんど分からないのに顔色を伺えるわけがないし、本当に詠みたいものを変えてまで選を取りに行くのは今後の自分のために良くないと思い、いくつかできたものの中から、一番納得がいったものを提出することにした。締め切り数分前だった。

 

 前日は早く寝たほうが何事も良いのだが、遅刻をすると死ぬシステムだったため、寝るのをためらう。結局あまり眠れなかった。まあ高速バスでずっと寝ていれば大丈夫だろうと思い、電車に乗った。そしていつの間にか眠っていた。

 目を覚ますと、電車の中に誰もいなかった。終点に到着したことに気づかなかったらしい。幸い、高速バス乗り場の最寄り駅と終点が一緒だったため、事なきを得た。立ち食いそばを食べ、新潟のお菓子を買い、高速バスに乗った。

 高速バスの中では、初めにKIRINJI『愛をあるだけ、すべて』を聴いた。その中の『時間がない』がかなり良かった。2018年にリリースされた曲の中で今のところ一番聴いている。しかし眠気には勝てず、眠りと目ざめの反復横跳びを繰り返した。

 2時間弱で会津若松に到着した。新潟から福島市に直接行けるバスは無く、会津若松を経由する必要がある。新潟駅から放たれたバスを、会津若松がヘディングして、福島市に叩き込むのだ。高速バスの待合所ではソフトクリームなどが売っていたが、眠気で頭が働いていなかったため、ソフトクリームの美味しさに反応することができなかった。

 1時間半ほどまたバスに揺られ、昼前に福島駅に着いた・ラーメンを食べ、ドトールで時間をつぶしていると、開始時間が迫っていたので、慌てて会場に向かった。

 会場内で迷い、開始1分前に歌会を行う和室に到着する。急いで座布団の数だけお菓子を置いて、空いていた座布団に座った。

 

 全員揃ったところで、主催の石井さんから挨拶があった。前に会った時も思ったのだが、似たような眼鏡を私は持っている。その後、詠草一覧が配られる。そのまま15分程度、13首に目を通す。そして、自己紹介を兼ねて選を発表していく。私は、楽しみと緊張で一週間ほど仕事が手につかなかったという話をしたが、いつも仕事が手についていない可能性もある。参加者の一人であったナイス害さんは、お土産で打順を組んでいたのだが、どんな打順だったのか見るのを忘れてしまった。

 その後、得点の高いものから評を行っていった。最初は様子見をしていたのだが、せっかく福島まで歌会に来たのだから、積極的に評をしていこうという気持ちになり、そこそこ喋ったとは思う。

 私は歌の中の空気感に目がいくことが多く、他の参加者の方が韻律や助詞について評をしていると、そういう視点ももっと持っていく必要があるように感じた。もっと歌の良さをできるだけ取りこぼさないような評の仕方をしていければと思う。

 全部の歌の評を終え、作者が発表された。発表している途中に、井上さんが首席の方にお菓子のプレゼントがあると、ちょっとしたサプライズを発表していた。

 結果として、私はお菓子を貰うことができた。仕事が手に着かなかった甲斐があった。首席を取ることが歌会の目的ではないけれども、初めての選ありの歌会で首席をが取れると嬉しい。お菓子の話があった後、左手が震えだしたので、私はポーカーの才能が無い。

(後日、石井さんから、お菓子を貰っている自分の写真が送られてきたのだが、すごい小物感が出ていた)

 歌会が終わった後は、井上さんと石井さんの即席サイン会になった。井上さんにサインを貰い、喋ろうとしたのだが、緊張しすぎてア行しか話すことができなかった。緊張するとア行しか話せなくなる癖をどうにかしていく必要がある。

 

  その後、懇親会があった。刺身やから揚げ、馬刺しなどを食べた。あとおしぼりもあった。歌会に提出された歌についても感想を言い合った。

  その後、二次会もあり、齋藤芳生さんが参戦した。山田航『桜前線開架宣言』に載っていた方なので、ひえーとなった。二次会ではメロンソーダを頼んだり、ずっしりとした短歌の話をしたりした。

 二次会が終わった後は、石井さんとラーメンを食べに行った。最初に狙いを定めたラーメン屋は、Googleに裏切られ休みだった。二度目に狙いを定めたラーメン屋は空いていたため、そこでラーメンを食べた。そこではやはり短歌の話がメインだった。

 石井さんと別れた後、ホテルに到着し、ワールドカップアイスランド vs アルゼンチンの試合を途中まで見て、力尽きた。

 次の日はまたラーメンを食べて、高速バスを乗り継いで家に戻った。時間の都合上、福島観光ができなかったのが残念である。やはり、三連休で無いと色々動くことができない。二連休は私にはまだ使いこなせそうにない。

 

 歌会が違うと、システムも違い、人が違えば評も違うのだが、今のところ参加した歌会は全て和やかな雰囲気なので、主催の方や参加者の方には頭が上がらない。これからも続いていってほしいし、可能ならば参加していきたいと思う。