コムギココメコ

備忘録と不備忘録を行ったり来たり

路上歌会に参加しました

 短歌を始めると、序盤のほうに『歌会』というものがあることを知る。ポケモンで言うならば、カントー地方におけるニビシティくらいだろうか。ニビシティに住んでいる人、あんまり娯楽がなさそうだけど住んでいて楽しいのか疑問に思うことがある。

 歌会というものについてざっくり説明しておくと、短歌を1人1首(の場合が多い)持ち寄って、集まった歌についてあれこれ感想や評を言っていく催しである。よく喫茶店の個室や貸し会議室を使って行われることが多い。地方の場合だと公民館や市や県の施設の一室を借りて行うこともあるだろう。

 ここで、歌会は部屋の中で行うものなのかという疑問が生じてくる。座る場所があったほうが疲れないし、机があったほうが何かを書くときに便利というメリットがあるため室内で歌会が行われることが多いが、特に場所の規定は無い。以前ブログで書いたことがあるが、海の中で浮き輪を付けてプカプカ浮きながら歌会をしても別に問題はないはずだ。詠草を防水加工にしなければならないし、溺れないよう気を付けなければいけないため、なかなか実現は難しそうだけれども。まあ、歌会はどこでもできるよなとぼんやり思う。

 今回は『路上歌会』という、外で行われた歌会についてレポートを書いていきたいと思う。

 

 路上歌会は伝右川伝右さんが主宰している歌会である(『伝右川伝右』さんと打ち込むとき、皆さんならどうやって打ち込みますか? 私は最初「伝える」と打ち込む→「える」を消す→「右」と打ち込む→「川」と打ち込む→「伝える」と打ち込む→「える」を消す→「右」を打ち込むという順序で打ち込んでいましたが、今は辞書登録をして、快適な生活を送っています)。その名の通り、路上を歩きながら、歌会ができそうなスペースが見つけてそこで歌会を行うのだ。伝右川さんのブログに以前行われた路上歌会の記事がアップされているので、そちらを見ていただけると詳しいことが分かると思う。

fukafukadanchi.hateblo.jp

 

 伝右川さんとは3月に行われたガルマン歌会200回記念歌会で初めて互いに存在を確認した。伝右川さんが以前使っていたTwitterアカウントと私のアカウントが相互フォローだということが分かり、わーっとなった。その日の歌会では別グループで、二次会でも別テーブルだったため、その後は直接話をすることはなかった。

 その後、4月中旬あたりに伝右川さんがTwitterで路上歌会を開催するというツイートをしていて、おっ、やっぱり外で歌会をしてもいいんだなという気持ちになり、参加表明をした。その後歌会の概要と集合場所・時間・参加者をDMで送っていただいた。主催者の伝右川さんの他に、斎藤見咲子さん、睦月都さん、山階基さんが参加するとのことだった。参加者一覧を見て、さっそく緊張してしまった。名前を見た・聞いたことがある方と会うことになると、とても緊張してしまう。

 その後、4月が終わり、5月になり、よく分からないまま元号が変わり、元号が変わった日の夕方から38度を超える熱を出し、インフルエンザの検査を受け、ひたすら待合室で祈り続け、インフルエンザではなく環境の変化による疲れということが分かり(復職したばかりだった)、友人との飲み会を泣く泣くキャンセルするという出来事が起こり、歌会当日となった。

 

 電車に乗っている間、ずっとSCPの記事を読んでいた。SCPとは「自然法則に反した物品・場所・存在を取り扱う架空の組織の名称であるとともに、それについての共同創作を行う同名のコミュニティサイトである」(Wikipediaより引用)。もともと都市伝説など、本当にあるのか不確かな話が好きだったので都市伝説要素もあるSCPに関しても数年前からハマっている。特にSCP-261(異次元自販機)とSCP-414(それでも、私は病んでいる方が好きかもしれない。)が好きである(SCP-414はリンク先の画像が不気味なので、閲覧する際は気を付けてほしい)。

ja.scp-wiki.net

ja.scp-wiki.net

  

 集合時間の30分前に上野駅に着く。ドトールでココアを飲みながら、『稀風社の経験』を読む。

kifusha.hatenablog.com

↑本の詳細について。そのうち感想文を書ければと思っている。

 

 集合時間10分前に伝右川さんと合流。その後斎藤さんとも合流した。睦月さんと山階さんは遅れてくるとのことだった。

 快晴だったこともあり、上野では多くの人が歩いていた。気温が高かったこともあり、半袖の人もいる。私は半袖のシャツを新潟の家から持ってきていなかったため、初めから手札になかった。我々は配られたカードで勝負するしかないのだ……。

 はじめにコンビニに行き、各自食料を買った。私はソースマヨもんじゃと海味鮮(うみあじせん)、コーラを購入した。海味鮮、食べると止まらなくなるので気を付けてほしい。

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 コンビニやスーパーに売っていると思う。世界中に存在する丸いものの中でも、かなり上位にくる丸である。

  コンビニを出ると、伝右川さんから詠草を貰った。はがきサイズでかっこいい。詠草の日付が令和になっていて、まだ私のなかで新元号がなじんでいないことに気づいた。

  上野公園へ向かう途中、パイナップルを凍らせたようなアイスを伝右川さんが食べていた。こういうものは手軽で食べやすいし、袋から少し出して食べれば手も汚れない。対してソースマヨもんじゃは、手軽に食べられる力が少し劣る。手が汚れるし。さすがは路上歌会経験者である。

 

 上野駅で睦月さんと山階さんと合流することができた。このときが緊張のピークだったと思う。とりあえず上野公園内を歩いていくことになった。

 上野駅の公園口を出てすぐのところに、『パンダは前に並んでいた人が見ることができます』という旨が書かれた掲示物があって、ひとりで面白くなってしまった。そりゃ前に並んでいる人がパンダを比較的早く見ることができるだろう。

 途中で自動販売機に並ぶ人の群れを見ながら数分歩き、とりあえず噴水の近くで歌会をすることになった。子供が鳩を追っかけまわしていたがなかなかつかまらない。子供が鳩に遊ばれている感じがした。また、噴水は背の高いやつと低いやつがあるらしい。

 噴水の近くで1首目を行い、少しお喋りをした。以前は渋谷でも路上歌会をやったことがあるらしい。その時は座るところが無くて苦労したとのことだった。公園は座れる場所が割と多くて路上歌会には向いているのかもしれない。

 

 再び公園を進んでいき、屋台が並んでいるところに出た。人口密度がそこだけ高くなっているのが一目でわかった。屋台の中に『桜のソフトクリーム』というものがあった。”まるで桜餅のような美味しさ”(うろ覚え)というキャッチフレーズがあったが、桜餅とソフトクリームだとどちらが美味しいのだろうと疑問に思った。ソフトクリームは桜餅に負けているのだろうか。そこらへんは宗教になってくるのでこれ以上の追及は止める。

 屋台の近くで子供が「1時間! 1時間!」と親に叫びながら通り過ぎていった。何かをお願いしているような口調だったが、いつ、どこで、誰が、なぜ、どのような目的で1時間なのかは分からなかった。

 屋台を進んでいく。チーズハットグの屋台があり、屋台も最近の流行を取り入れているのだなと感じた。チーズカリカリスティック、最新式コンピュータ手相占いなど他にも面白そうなものがあった。手相占いはやっていないが、傍から見ると最新感は感じられなかった。最新すぎると逆にチープに見えるのかもしれない。

 屋台を抜けると、常香炉という魔よけの効果があるらしい煙が出ている場所があった。山階さんと100円を入れて、線香に火をつけてみる。私のやつは途中で火の勢いが強くなり、慌てて灰の中に刺したが倒れてしまった。火は熱いので怖い。でもラーメンは熱いのに怖くない。何が違うのだろう。

 常香炉近くの休憩スペースで2首目・3首目について評を行うことになった。近くの池のほとりでは、鳥たちが集まっていた。池の奥にケンタッキー・フライド・チキンの看板が見えて、弱肉強食感がある構図になっていた。

 2首目の評が終わった後、お土産の話になった。私は個人的に思っていた、『○○に行ってきましたクッキー』を買ってくる人のお土産力を疑ってしまうという話をした。あのクッキー、どこの観光地でも売っているような気がして、ご当地感が少ないと私は思う。個人的には貰ってもうれしさが少ないのだが、あれを買うことでお土産を買ったという実績が解除されるという利点が存在する。また、個数が多いわりにはお手頃価格のため、人数の多い職場にお土産を持っていくには便利かもしれない。

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 こういう感じのクッキーである。

 

 再び公園を歩く。途中で元号が変わった5月1日に熱を出して夜間外来に行く羽目になった話をした。改元疲れという単語がお喋りの中から出てきて、そういうのがあるのかなと少し考えてみた。しかし、確認するには元号が再び変わる必要があり、しばらく時間がかかりそうだ。また、「平成最後の」という言葉が消費されすぎて、自分の取り分が残っていないように感じたという話もした。4月に入ってから「平成最後の」という言葉があまりにも素早く消費されていて、もう私は使わなくてもいいのかなという気がしていたのだった。

 歌の話からお喋りへ向かっていくと、いつの間にかソフトクリームの話になった。ソフトクリームでよく見かけるミックス(バニラ&チョコなど)との付き合い方について意見が交わされた。睦月さんはミックス懐疑派らしい。私はうずまきソフトが好きなので、ミックス許容派である。伝右川さんもミックス許容派だったと記憶している。

 ここで宣伝です。市販のファミリーパックのアイスの中で個人的に一番美味しいものは、ヨーロピアンシュガーコーンです。好きすぎて1回短歌の中に詠み込んだこともありました。宣伝終わり。

 特に誰にも言う必要を感じなかったので誰にも言わなかったが、高校の時に大学見学で東京に来た際に使ったトイレと巡り合った。見た瞬間、このトイレを使ったという確信で頭がいっぱいになった。なぜ思い出せたのだろう。

 公園の一歩外を出て、ミニストップに寄ることになった。私はバニラ味のソフトクリームを食べた。最近ソフトクリームを食べていなかった気がする。新元号セールでソフトクリームが安くなっていて少しお得だった。新元号のテンションにはついていけないけど、こういうセールは少しうれしい。

 再び公園に戻り、歩きながらスペースを見繕い、そこで立ったまま4首目の評を行った。立ったまま歌会をするのは初めてだった。

 

 数分で再び歩きはじめ、池のほとりのスペースで5首目の評を行った。おみやげという単語が5首中2首で出てきた。山階さんの話だと、「カルピスの原液を一気飲みする」という旨の歌が被った歌会もあったらしい。部分的に流行ったのだろうか。

 途中であの世や地獄の話題になり、地獄にもお土産があるのかという話になった。HELLと書かれた地獄Tシャツや地獄に行ってきましたクッキーなどが提案された。地獄の皆さん、こういったお土産はいかがですか。もしかしてもうありますか? 誰か分かる人はご連絡ください。

  

 その後解題し、夕方の公園を歩いた。公園の一部ではフリーマーケットをやっていて、様々な古本が並んでいた。中には俳句雑誌であるホトトギスも売っていて、高浜虚子が「俳句の作り方」的な文章を書いていた。紙質やフォントを見ているだけで時代~という感じがした。

 さらに公園を歩く。通りすがりの母親が、「お母さんも初めから大人だったわけじゃないの」(うろ覚え)と言っていて、山階さんが思わず「エモいなあ」と言っていた。フィクションの世界でしか聞いたことがなかった言葉だったが、現実でも使われるらしい。街で聞いた人々の言葉の断片が面白くなる瞬間に出会うことがその日だけで何回かあり、穂村弘『空想委員会』を思い出した。あれも街中の看板や話し言葉の面白さについて書かれたエッセイで、短歌を始める前に読んで面白いと感じたのだった。私は穂村弘の短歌をあまり読んだことがない(手紙魔まみくらい)が、エッセイはいくつか読んだことがある。

 その後上野公園を出て、二次会に行くことになった。山階さんは別の用事があるらしく、ここで別れることになった。また歌会などでお会いできればいいと思うし、お喋りができればと思う。

 

 アメ横付近を歩いて、空いていた居酒屋に入る。メニューを見て、適当に注文をする。睦月さんが「この店には幻と書かれたものが多すぎて信頼に欠ける」という旨を言っていて、少しメニューを見てみると確かに幻がいくつか見受けられた。メニューが幻、居酒屋も幻、上野も東京も日本も地球も幻、そう、この世界もすべて幻(こういうコボコラがある)。

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 こういうコボコラ。

 途中、なんかの拍子で自分が小説を書いていることを話した。2018年秋の文フリ東京に出した小説(架空のバンドが掛け算九九のそれぞれの段のアルバムを出していて、それをレビューするという内容)について話してみたところ、曖昧な雰囲気になった。7の段は難解で、5の段はポップなんですよと補足をつけてみたところ、曖昧な雰囲気が少しだけ薄れたような気がした。

 居酒屋を出て、4人で上野駅へと向かった。帰りの上野を歩いているときの空気が、ceroの『街の報せ』っぽくてかなりグッときた。

www.youtube.com

 

 その後上野駅で3人と別れた。電車がもう発車する寸前だったので別れてすぐ走った。後ろを振り返る余裕もなかった。その反動で電車内ではほとんど寝ていた。

 

 路上で歌会をしたのは初めてだったが、良い感じでのんびりできるし、散歩中に色々なものを発見できるし、評からお喋りがシームレスに続いていく感じでとてもゆったりとした気分になった。伝右川さんが路上歌会でチルアウトできたといった旨のツイートをしていたが、自分もそう感じた。普段、歌会では緊張しっぱなしなので。

 都合が合えばまた参加してみたい。次はどこでやるのだろうか。東京に1回の人生では使い切れないほどの路上が、まだまだある。