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ドレスコーズ『ジャズ』

 

ジャズ【通常盤】

ジャズ【通常盤】

 

  2019年リリース。志磨遼平によるソロプロジェクト、ドレスコーズの6thアルバム。

 

 前作『平凡』ではディストピア的世界観をコンセプトにしていたが、今回も「人類最後の音楽」というテーマのもと作成されたコンセプチュアルなアルバムとなっている。

 前作の重要な要素であったファンクはごっそりと抜け落ち、どこか熱の抜けた、異国的な音楽になっている。廃れた土地を歩む音楽隊のようなM-1『でっどえんど』、アルバムの中ではアップテンポ寄りなのに、どこか虚しさを漂わせるM-3『エリ・エリ・レマ・サバクタニ』、ジプシーミュージック要素を押し出したM-5『カーゴカルト』、スカ調の音楽が破滅への狂乱をかき立たせるM-9『プロメテウスのばか』、後述するM-12『人間とジャズ』が個人的には好みだった。

 M-12『人間とジャズ』が、アルバムの締めくくりとしてかなりしっくりきた。ノイズの混じった音質の悪いピアノとボーカルが、滅びた後の世界のどこかから流れているように思えてくる。最後のノイズが途切れた時、もう音楽を鳴らす存在は消えてしまったような気がしてくるのだ。

 ちなみにタイトルは『ジャズ』であるが、ジャズ要素はそこまで多くないように感じた。インタビューによると、から騒ぎし続けた人類の歴史と共にあったものとして、狂騒という意味をもつこの言葉を選択したとのことだった。

 曲単位だと前作『平凡』のほうが個人的には好きではあるが、コンセプトの完成度としては今作のほうが優れているように感じた。人類が滅びる様を約50分にまとめたアルバム。

 

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