コムギココメコ

備忘録と不備忘録を行ったり来たり

坂本龍一『async』

Async

Async

 

  2017年リリース。前作『out of noise』以来、8年ぶりのアルバム。ちなみにタイトルは「非同期」という意味である。

 

 かなり実験的なアルバムだと思う。ドラムなど、リズムがはっきりするような音は使われておらず、大半の曲はこれがメロディだと言えるような部分が無い。プリペイドピアノのようなものが使われていたり(”disintegration”)、フィールドレコーディングが用いられていたり(”walker”など)と、様々な音が取り込まれているところも、実験的な要素を強めている。

 アルバムを一聴して感じたのは、メロディを形成しない音の存在感だ。”andata”のゆっくりと通り過ぎていくノイズは、メロディを隠しきらない程度に空間を覆っている。”ZURE”にいたっては、無音という音が曲の後半部分で緊張感を生み出している。

 全体的に悲しげなトーンで統一されているのだが、メロディや音が悲しさを生み出しているというよりは、音の余韻や間などが悲しさを生み出しているのかもしれない。音楽が構成する空間、耳を介して感じるアルバムなのだと思う。

 

 ちなみに、アルバムのリミックス版もリリースされている。Alva NotoやFennesなど、コラボレーションの経験があるアーティストや、Oneohtrix Point NeverやArca、Yves Tumorといった、電子音楽の先頭を走るアーティストたちが名を連ねている。

 

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