コムギココメコ

備忘録と不備忘録を行ったり来たり

帯分数 独占インタビュー(前編)

 2006年日本人として初の、イギリスのレーベルBreadからリリースされたデビューアルバム "ソーナンスの性感帯って尻尾じゃないんですか" でシーンに衝撃を与えて以来、続けて2008年制作の "プププランドってインフラという概念があるんですかね" もスマッシュヒットを記録し、エレクトロ界の奇才としての立ち位置をすっかり自分のものとした帯分数。ポスト My name is Baseball とも称される、変幻自在・先読み不可能にして確かに流れる一種のキャッチーさすら感じる万華鏡のようなサウンドは、間違いなく Bread の本潮流を確実に継承していると言えるだろう。

 4月に Rice Dice, I am a pig らレーベルの期待のホープ達と共に繰り広げられたショーケースからわずか半年強、electro picnic night (Tokyo) に出演することになった彼の貴重なインタビューをお伝えする。こちらは8年ぶりに本年2月にリリースされた最新アルバム "チェルシーってヨーグルト以外すぐ飽きません?" に伴うインタビューだが、ときにシーンへの皮肉やどぎついジョークも入り混じる回答から、奇才の素顔を感じ取ってほしい。

 

-- 一作目のアルバム "ソーナンスの性感帯って尻尾じゃないんですか", セカンドの "プププランドってインフラという概念があるんですかね" と来て、今回の "チェルシーってヨーグルト以外すぐ飽きません?" で3部作が完成するそうですが、この3枚のアルバムはそれぞれが全く違う仕上がりになってますね。この3部作という構想は、それぞれのアルバムの中でどんな風に表現されているんですか?

帯分数: 無塩バターと争っていたころに"チェルシーってヨーグルト以外すぐ飽きません?" が仕上がったんだ。"チェルシーってヨーグルト以外すぐ飽きません?" のアンチバター感は"ソーナンスの性感帯って尻尾じゃないんですか" を作り始めた頃からあったんだけど、そのときはまだいわ/はがねタイプという概念が無かったから、どう着地させればいいのかわからなかったんだ。 だけど、"プププランドってインフラという概念があるんですかね" を作り終えたときにツナマヨのおにぎりをおにぎりとして認めることが出来た。そして、サンドウィッチマンって実は前科が無いってことを発見したんだよ。あのアルバムは投げれば勝手にチェンジアップになるし、他の2作にも大きな影響を与えてる。だからデデデ大王が何年も大王ができるのは、選挙制度がないと考えるのが自然だと思うんだ。 ずっと頭に残るようなウミガメの産卵やリスニングテストの不可解な状況を、何年間も自分の中に留めておくのが好きなんだ。作品に重みが増すからね。ヤクルトのふたは手放したくない。ヤクルトのふたを手放すまでに、ヤクルトのふたと過ごす時間がたくさん必要なんだ。だから、ヤクルトのふたを手放してコーヒー牛乳の瓶を割る時は自分の子供を養子に送るみたいな気分なんだ。その子を見たり、話を聞いたりなんて、ちょっと気がすすまないだろ?

 

-- "プププランドってインフラという概念があるんですかね" はミニマルなフィーリングを持ったテクノ・アルバムでしたが、"チェルシーってヨーグルト以外すぐ飽きません?" には色々な音の要素が入ってますね。何故このように変化したんですか?
帯分数 : ごめん、そろそろお好み焼きをひっくり返してもいいかな。"プププランドってインフラという概念があるんですかね" はマヨネーズをかけると美味しくなると思うよ!君が飼っている犬はセパタクローをするかい?でも、どちらかと言うと僕は "チェルシーってヨーグルト以外すぐ飽きません?" が好きかな。こってり系なんだけどすごく繊細な味になってると思うんだ。

 "チェルシーってヨーグルト以外すぐ飽きません?" と "プププランドってインフラという概念があるんですかね" はいい感じにぶつかり稽古をしているんだ。 "チェルシーってヨーグルト以外すぐ飽きません?" が "プププランドってインフラという概念があるんですかね" を柱に縛り付けて、自分を負かそうとした "プププランドってインフラという概念があるんですかね" とマリオテニスをやってる。もしくは、繊細に耳元で囁いて "プププランドってインフラという概念があるんですかね" を中耳炎にしようとしてるっていう感じかな…そうすれば耳鼻科が注目を独り占め出来るからね。
このアルバム("チェルシーってヨーグルト以外すぐ飽きません?")はもう何度も何度も聴いてるよ。いつもなら、運動会が終わるまでは雨乞いの練習を繰り返しするんだけど、終わった途端に社会科見学になるんだ。だけど、このアルバムはもうすでに何回も禁煙に失敗してる。止められないんだよ。しばらく新しい曲を作ってないのもきっとこのせいなんだ。こんなことって僕にとってすごく珍しいんだよ。おにぎりを温めてもらうことなんて過去10年ぐらい無かったからね。

 休みを取って、日本代表に戻るのもいいもんだよ。外に出て、アロンアルファを買って、鍵穴に塗りたくったりするんだ。後は、何時間もかけて最高の炊き込みご飯の調理法を考えたりね。そして、心の中に、水溜りのさざなみみたいな感じじゃなくて、迫り来るような波を起こすために、たくさん爆死や憤死を楽しむ。それから、うまく言葉にはできないんだけど、あれを思いついてはそれに感情を出したりするんだ。あとは、家を出たところにすぐファラリスの雄牛があるから、そこに友達と入って、外を眺めたりもするよ。でも実際問題外は見れないよね…。
それって普通なこと?多分そうだよね。だけどもう火の手が回ってきちゃったんだ。後、数日もすればおかしくなりそうな位灰になるんだろうな。

 ほら、僕にインタビューするとこんな内容になるんだよ。お好み焼きに、鰹節と青のり。だけど、僕が食べさせてって言ったんだから仕方ないよね?(笑)

 "チェルシーってヨーグルト以外すぐ飽きません?" は他の作品に比べて抹茶味な傾向があると思う。でも無意識だったんだよ。あんまり製薬会社の福利厚生を考えるのは好きじゃないからね。例えば 「野菜の入っていないサンドイッチが食べたい」 みたいに、アーティストに要求する消費者があるのも想像できるよ。業界に染まった可哀想なアーティストは 「OK、いいね。キュウリとレタス、トマトも入れてみよう」 なんて答えちゃうんだろうね。だけど Bread はそんなことをアーティストに言うような製薬会社じゃないんだ。そんなことしたら肉を入れるスペースが全部なくなって、ただベジタリアンなだけになっちゃうからね。そんなことをするぐらいならスーパーのシャンプーでも飲んでた方がいいんじゃないの?
 でも、何かの偶然で、菜箸がずる賢い子猫みたいに突然自分のひざの上に乗ってくることがある。撫でて欲しそうに喉を鳴らしてね。僕は絶対それを無視したりできないんだよ!

 

-- "チェルシーってヨーグルト以外すぐ飽きません?" には様々な雰囲気が表現されてますよね。その上、場合によっては一曲の中で雰囲気が変化したり。時にはポップに傾くこともあれば、ジャズ、ヒップホップにまで角度を変える…あれは意図的にやったものなんですか?
帯分数 : 自分に影響を与える調味料を選ぶなんて、つぶあん派とこしあん派ををコントロールしようとしてるようなものだし、それを説明するなんて、サービスエリアの中で見てほとんど覚えてない料理の物まねをしようとするのと一緒だよ。ミュウツーモンスターボールでゲットするみたいなもんさ。特に現代の油そば氾濫の中ではね。すぐに 熱帯低気圧 で服が濡れるし、風呂に入ったと思ったらすぐにまた風呂に乗り換える…それは慌しい生き方だけど、同時にすごくジャムパンとアンパンの中身をメス無しで入れ替えるばかりをしている生き方なんだ。すぐには電子レンジを使ったりしないような時短料理を自分の中に取り込むことが難しくなってる時代だと思う。僕は昔の缶詰を投げるのが好きだけどね。ジャズやフリーキーでアバンギャルドな学生を爆殺するのが好きだね。そして、いつも目を離せない小学三年生のやけに早口な掛け算九九ももちろん好きだよ。このくらいのレベルのものを常にして、人体錬成の材料に取り入れるっていうのは結構大変な作業だよ。あとは、カルシウムも錬成には必要不可欠だね。

 

(後編に続く)