コムギココメコ

備忘録と不備忘録を行ったり来たり

Fugicide

 行動力行動力って人はいつもプラスのイメージで言うし、それ以外認めないような空気を漂わせてるけど、そんな訳ないって思ってる。マイナスの行動力だって立派な行動力だ。何かから視線を逸らしたり、逃げたり、死んだり。全部行動力があるからできるんだ。

 そう定義してみると、私は行動力をもっていたのか疑問に思ってしまう。何か輝かしいものに向かって私が率先して進んでいく事はなかったし、反対に何か黒々としたものから逃げてしまったこともない。ただ、サークルや講義中のグループワークなんかで私の前に訪れた課題はしっかりこなしていたと思うけども。

 受け入れる。良いことも嫌な事も全部全部受け入れる。文句なんて言っても世界を破壊しかねないから言わない。聞こえだけは聖母のようなイメージだけど、実際は動くことを放棄しているだけだったのかも。今だって、動こうと思えば動けるのかもしれない。でも、もう私は動かないって思ってしまうし、その予感は間違いじゃない気がする。

 あー。ちゃんと逃げ出したかったな。逃げ出そう逃げ出そうと考えていたら躓いてしまったんだもの。ツイてない。普段あまり考えていないこと考えたら、そりゃ頭の中の筋肉も準備運動ができていないわけだし、怪我をするに決まってる。そうなると、体だってついていかないから、上手く動かすことができない訳だ。全部、全部必然の中で起こった出来事だ。

 死にたくなる時ってどんなときだろう。返せないほどの借金を背負ったとか、人生の岐路で選択した道が崩れて落っこちてしまったとか色々想像してみる。絶望の中で体中びしょ濡れになって、上も下も右も左も分からなくなって、助かるにはどうすればいいんだどうすればと考えてるうちに、死ぬことがもしかしたら助かる最善の方法だと思うのかもしれない。死ねばまた地上で大きく息を吸い込めるって。

 でも私は返せないほどの借金を背負っているわけでもないし、人生の岐路を間違ったわけでもない。間違ったわけではないと言い切るのは少し変な気分になるけれど、選んだ道はある程度舗装されていたし、私自身満足はしてないけど別にいいかもって思ったわけだから大外れではないんだと思う。

 それでも死にたくなる時はある。私が21年間生きてきて出した死にたいことに関する結論。

 希望と絶望がちょうど半々になった夜に死にたくなる。しかも純度の高い死にたさ。

 ほどほどの生き方をしていると、普段の生活や将来に対する希望と絶望がちょうど半分ずつになるときがある。半々になる時は決まって夜だ。朝や昼は生活に専念しているし。やることはそこそこあるのよそこそこ。

 夕ご飯を食べてお風呂に入って飲み物飲んでテレビ見てぼんやり笑ってスマホ見て寝る準備をする時、突然死にたいはやってくる。

 今死んだらどうなるんだろう?

 純粋な疑問。絶望から逃げたくて死ぬんじゃなくて、死んだらどうなるか知りたくて死にたくなる。

 昨日だってそうだ。から揚げを食べてバブが入ったお風呂に入ってお茶飲んで芸人が司会やってるバラエティ見てTwitterとLINEいじって電気消して布団にもぐったときにあいつはやってきた。

 あいつはどんな形をしているんだろう。そもそも人間なのだろうか。人間だったら男、女? 男だったら、芸能人に例えると誰に似てる? そんなことを考えて眠りについた。

 窓を叩く音で目が覚めた。ここ3階だよね? 気のせいかな気のせいだよねうん気のせいだろうと再び眠りにつこうとしたら再びコンコンと窓をたたく音。

 気のせいじゃない。どうしようどうしよう。開けたらヤバイ気がする。でも開けなかったらヤバくないとは言い切れない。どうしようどうすれば怖い怖い怖い怖い。

 でもそれ以上窓は叩かれなかった。私は軽はずみに死について考えるべきじゃなかった。なるべく考えないようにしようと心に誓った。小学校のころ、学校の怪談を読んだら1週間謎の熱に侵されたことを思い出した。

 考えないと誓えば誓うほど考えてしまう事はよくある。今回も同じだ。ふとした瞬間に思い出してしまう。そうなると夜もなかなか寝付けない。いつ窓を叩かれるかと思うと怖くて怖くてどうしようもない。もう軽はずみに死について考えないから、どうか私から死にたいと思った記憶を消してください神様! 仏さま! あと誰かいたっけなまあ誰でもいいから!

 1週間くらい、ひたすら願っていたら想いは通じたらしい。でも思ったのと違った。願いを叶えてくれたのは、神様でも仏様でもなく、悪魔だったのかもしれない。

 逃げたいと思うのはやめた方がいいのかもしれない。いっそこちらから向かっていって蹴散らしてやろうという考えが少しでも持てればな、と後悔したが遅い。そもそも蹴散らす事なんて考えられないだろうし。1回カンフー映画を見た後にハイキックをしてみたら思い切り転んでしまったから到底無理。

 私から言えることは、普段考えないようなことを考えながら歩いていると危ないよってことだけ。あとちゃんと舗装された道を歩いた方がいいよ。田舎大学で妥協しないで、浪人して都会の大学に行けばよかったな。

 崖の下で咲いてるからさ、早く誰か摘みに来てね。