コムギココメコ

備忘録と不備忘録を行ったり来たり

読書感想文その10

 読書感想文を最近書いていないことに気付く。読書もあまりペースが上がっていないことに気付く。この世は目標の作成と断念の繰り返しである。ちゃんと再起動しなければならない。定期的に書いていきたい。世の中にならないためにも。

 今回は最近読んだ2冊を紹介する。前に読んだものはまた後で。また後が実際に来るかどうかは未来の私に聞かないと分からない。

 

『ニッポンの刑務所』外山ひとみ

 人は法を犯すと、刑務所に入る場合がある。刑務所の中での暮らしは普通に生きているとなかなか分からない。いつ起きていつ寝ているのか、どんなものを食べているのか、自由に過ごせる時間はあるのかなどといった疑問点が浮かび上がってくる。そういう人々の好奇心を満たすために、刑務所の中での暮らしについて、様々な人がルポ、エッセイという形で残している。刑務所の中を舞台にしたドラマも存在する。

 この本は、そうした刑務所の中の暮らしを題材にしたルポである。

 男子刑務所、女子刑務所、少年刑務所、少年院、官民協働の刑務所など、様々な刑務所に著者は取材を行い、暮らしぶりや問題点などが載っている。こうして並べてみると、様々な刑務所が存在するのだなと思う。クイズ番組で「日本にある刑務所を5つあげなさい」と司会に言われても正解するのは難しそうだ。そのままタイムアップになり、司会に「走って!」と促され、隣で解答権を得るためにルームランナーをひたすら走らされるパートナーはかわいそうである。

 暮らしぶりを見ていると、社会が変わっていくのと同じように、刑務所の中も変化していることが分かる。特に、刑務所内での貧富の差というものは興味深かった。そういえば、そこそこお金を持っている状態で逮捕された著名人は、釈放された後に刑務所暮らしについて語るとき、過酷な生活というよりは、体当たりレポートのような話し方をするように見える。刑務所の中でも外での所得があるものは、刑務所内である程度のものを購入できるので、ダメージも少ないのかもしれない。

 他にも問題点として、過剰収容について述べられている。一時期よりは収容率は減少したものの、依然として刑務所内は高い収容率で推移している。その結果、受刑者と刑務官両方がそれぞれ不満を抱えている。

 様々な刑務所での暮らしが分かり、刑務官の人にもスポットをあてている。また、刑務所が抱える問題点もわかる。刑務所について知りたいという人にはおすすめの本だと思う。

 

『はじめての言語ゲーム橋爪大三郎

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 「言語ゲーム」という単語だけ聞くと、何か言葉遊びめいたもの、もしくは言語を使ったゲーム(しりとり・たほいやなど)を想像するかもしれない。

 実際の言語ゲームは、ヴィトゲンシュタインという人物が『哲学探究』という本で挙げている考え方の1つである。『はじめての言語ゲーム』の中に書いてある定義を示しておく。

 

言語ゲーム:規則(ルール)に従った、人々のふるまい

 

 定義だけ聞くと、あまり言語と関係がないように見える。言語ゲームは言語に対する考え方というより、世界に対する考え方と言ったほうが正しいのかもしれない。

 この言語ゲームを中心に、ヴィトゲンシュタインの半生と、様々な人物が生み出した言語ゲーム(のようなもの)を紹介したものがこの本の内容である。

 哲学に関する本は難しいと思われがちである。実際難しい本も多数存在し、私自身、読んでみたがさっぱり分からないものもあった。しかし、この本はやわらかい文体で書かれているため、文体の堅苦しさでやられてしまうことはない。ヴィトゲンシュタインの『論理哲学論考』を説明する場面や『言語ゲーム』に関する説明で難しい箇所がところどころあるものの、おおむねわかりやすい解説となっている。

 哲学関連の本はとりあえず読んでみるか、となりにくいように思える。「読んでやるぞ!」とポーズをとらないと、頭に入ってこないような気がするからだ。この本は、家でゴロゴロしながら読む本としては向いていないかもしれないが、図書館などで背筋を正して読む本でもない。哲学関連の本として、この本は堅苦しすぎずくだけすぎない、ちょうどいい位置にいる本ではないだろうか。

 

 終わりです。