コムギココメコ

備忘録と不備忘録を行ったり来たり

ランニングマシンに初めて乗った

 年々体力が無くなってきているような気がする。それに比例して、気力も失われている気がする。小説や短歌、もしくは何らかの文章を書こうと決心してから実行に移すまでには一定の気力が必要になるが、仕事などで疲れていると気力が足りず、実行しようとしても目の前に「きりょくが たりません!」と出てきてしまう。水、木曜日は特にその傾向が強い。

 体力をつける必要がある。定期的に議題に挙がるテーマなのだが、なかなか続かない。体力をつけるための体力が無いためだ。体力をつけるために一定の体力が必要だという事実は、いつも私の足を重たくさせる。今回こそはと思いつつ、やってみることにする。n回目の挑戦になる(n=任意の自然数)。

 

 私は普段おもしろフラッシュ倉庫で検品作業をして生計を立てている。ある休憩時間、運動不足に関する話をしていると、上司が近くにある市民体育館が便利だと言った。調べてみると、比較的安価でトレーニングルームを使えるらしい。トレーニングルームの写真は1つしかなかったが、そこにはランニングマシンが写っていた。ランニングマシン。なんか東京フレンドパークで見たことあるな。そういえば、ウォールクラッシュ(ジャンプして得点の書いてある壁に貼りつくアトラクション)のデモンストレーションをしていた人は、今美味しくご飯を食べることができているのだろうか。

 その後も行くか行かないか迷っていたのだが、ある日、同僚が偵察に行ったと話してくれた。同僚はホラー系フラッシュの検品作業を行っている。皆さんが安心して『赤い部屋』や『ウォーリーを探さないで』を不安げに視聴することができるのも、同僚の検品があってこそなのである。同僚の話だと、中履きが必要らしい。私は中履きを持っていなかった。

 ここである事実に気が付く。運動するのには初期投資が必要なのだ。走るのにお金を取られるトレーニングルームという施設、声を出すのにお金を取られるカラオケという施設並みに悪質だ。人間が行動をすると、お金が減っていく。

 まあ、お金をある程度出したほうがもったいないから強制力が出るだろうと思い、近所の靴屋で安いランニングシューズを買った。

 運動に適した服を何とか家から探し、いつトレーニングルームに行くか考えることにした。平日ど真ん中に行くと、おそらく走った後何もできなくなってしまう。休みの前の日、すなわち金曜日が適しているのではないか。そのあと泥のように眠れる。「泥のように眠る」という慣用句、泥サイドの視点が全くないため、本当に泥があんな感じで眠っているのかは分からない。

 労働を繰り返していくうちに、金曜日になった。靴と運動に適した服、タオルを袋に詰める。会社に持っていく荷物が多くなって困る。自転車で普段通勤しているのだが、カゴに荷物が入りきらず、肩にかけるが、なで肩なので落ちてくる。肩を上げる動作を何回もする必要があり、傍から見るとビートたけしの物まねをしているように見えたかもしれない。

 何とか倉庫にたどりつき、労働を終え、いよいよ市民体育館へと向かう。倉庫から自転車で10分程度のところに市民体育館はあった。中に入ると公共施設感がすごい。料金を支払い、更衣室で着替える。ロッカーが想像の0.7倍くらいしか無かったため、荷物を何とか押し込む。

 着替えが終わり、トレーニングルームへ向かう、ランニングマシンのほかに、エアロバイク、バランスボール、筋トレのためのマシンなどが揃っていた。ランニングマシンは何種類かあるらしい。私はとりあえず、一番入り口に近いランニングマシンを使うことにした。

 私はランニングマシンで絶対に聴こうと思ってたアルバムがある。それは、The Chemical Brothersの『Push the Button』である。なぜそれを聴きたいと思ったのかは分からない。なんとなく走るときに合いそうだからだ。料理を作るときになんとなく合いそうだからといってオリジナリティーを出すのは良くない。しかし、これはランニングなので許される。

 ランニングマシンに乗って、徐々にスピードを上げていく。時速何㎞で走ればいいのかが分からず、試行錯誤の末時速10kmくらいがちょうどいい強度だということを知る。何㎞走ったか、どれくらいのカロリーを消費したのかが一目でわかるのは優れものだが、走っても走っても景色が変わらないため、夢の中にいるみたいだった。また、走っている最中、走ればカロリーを消費するわけだから、その時に食べ物を食べれば実質カロリーゼロなのでは、という理論を思いついたが、ちょっと何言ってるか分からなかった。

 30分ほど走り、きつくなってきたのでやめることにする。降りたとたん少し気持ち悪くなる。走っているのに景色が動かないことと、ベルトコンベアの上でずっと走っていたこともあり、ランニングマシン酔いになってしまったのだろう。しかし、走ると底のほうで沈んでいたものがかき混ぜられるため、若干気分が晴れることが分かった。気力の最大値をある程度増やすためにも、休み前は走ってもいいのではないかと感じた。ちなみに私は、マラソン大会などを見ると「車を使えば楽なのに」と思ってしまうため、マラソンとウマが合わない。マラソンも私の事をそんなに好きではないと思う。

 

 満足したので、夜はラーメンの大盛りを食べた。