寝る時に音楽をかけていないと安心して眠れない。無音、なおかつ眠る前は頭の中で反省文を書くのに最適な時間だからだ。音楽があったほうが気持ちよく眠れるのだが、歌詞やリズムが耳につくことがあるため、専らアンビエントを聴くことになる。
今回は寝る前に聴くのに丁度良いアルバムを紹介したい。
The Caretaker『An empty bliss beyond this World』
『An empty bliss beyond this World』はThe Caretakerの8枚目のアルバムである。どんなアルバムなのかと言われると、おそらくアンビエントに属するだろう。アメリカの音楽メディア、Pitchfork内の『The 50 Best Ambient Albums of All Time』という記事に載っていて、そこでこのアルバムを知った。
このアルバムの特徴は、埃っぽさである。家の奥底で、埃をかぶって何十年も開けられていないレコードを流しているようなアルバムだ。ブチブチとしたノイズが絶えず聞こえてくる。また、1900年前半のサイレント映画のサウンド版で流れてそうな音楽をサンプリングしている。こもったような音質が、埃っぽさをさらに感じさせる。後半になると、さらにレコードノイズがひどくなり、ノイズの雨の中からぼんやりとピアノや金管楽器が現れてくるように思えてくる。
目を閉じながら曲を聴いていると、頭の中で白黒映画が上映されたような気分になる。どんどん身体が白黒になっていくような気がしてきて、いつの間にか眠っている。
このアルバムに関しては、曲に着目するよりも、アルバムを通しで流して、雰囲気に浸るほうが合っているように思える。聴いていて耳が疲れないのも夜に聴くのに適している。
寝る前に、レコードノイズと埃をかぶった音楽が流れるこのアルバムを、小さめの音量でかけてみてほしい。
ちなみにこの人はいくつか名義を持っていて、その中のひとつにV/Vmという名義がある。この名義では結構癖のある曲(人によっては曲と言うのをはばかるかもしれない)を作っていて、上のアルバムを作っている人とは思えない。
かの有名な『Imagine』をサンプリングした曲で、曲名もそのまま『imagine』である。『Imagine』を歪ませまくったこの曲は、歌謡曲をスクリューするVaporwaveに似た雰囲気を感じさせる(ちなみに、Vaporwaveのアーティストが集まってThe Caretakerのトリビュートアルバムを作っていたりするので、親和性はあるように感じられる)。