コムギココメコ

備忘録と不備忘録を行ったり来たり

金沢に対してやや尖っていた友人と旅に出る

 基本、旅行に行くときはあまり計画を立てないタイプである。

 生活の外に出ていくのが旅行だと思っているので、計画という生活で何べんもやらされるようなことをあまりしたくない、というのが本音だ。だから、行く県や街だけ決めて、後は当日歩きながら決める。そうすることで、視点や思考が観光地以外の街並みや、生活の外にある生活に目が向いて、面白いものが発見できたりする。これは私の感覚なので、計画を決めて観光地をどんどん巡るのも、別の楽しみ方があるのだろう。

 12月中旬、友人の誘いで金沢へ行った。大体1か月前くらいに行くことが決まったのだが、当日まで何も考えないことにした。私のイメージとしては、金沢と言えば兼六園だったのだが、友人としてはあまり興味がないとのことだった。金沢に対して尖っている人を初めて見た。

 なんやかんやで当日になり、私は新潟から金沢へ向かった。皆さんは新潟を知っていますか? 寝ぼけながら見ると怪獣に見えなくもない県です。

 ほとんど寝ていなかったため、電車ではほとんど眠っていたが、信越本線にあるトンネルを抜けると海がばーっと広がる瞬間は記憶に残っている。突然海を見せられると人はワクワクするらしく、乗客の中には写真で海を取っている人もいた。

 その後は新幹線に乗り換え、出発から5時間で金沢に着いた。新潟から金沢はそこまで離れていないのではと思う人もいるかもしれないが、乗り合わせが悪いとかなり待たされることになる。私は途中の駅で1時間以上待った。ポケモンで登場するマサラタウンとグレンタウンは地理上は近い(分からない人は各自ググってください)が、ゲームではかなり遠回りをする必要がある。そういう感覚に近い。近いのかな。近くないかもしれない。いや近くない。いらん比喩を生み出してしまった。忌み比喩だ。

 金沢に集合時刻の1時間ほど前に到着したが、気力が無かったため待合室で居眠りしていた。やがて集合時刻に近づいたので改札を出て、友人と合流した。どうやら友人も行きたい場所が決まっていなかったらしい。金沢でいきなり宙ぶらりんになってしまう二人。とりあえずひがし茶屋街に向かうバスに乗る。500円出すと特定のバスが乗り放題になるチケットがあり、友人の勧めでそれを買うことにした。

 バスに乗っている間、資格の話をした。世の中には強い資格と弱い資格があり、それらを組み合わせて最強の資格を作ることもできそうだ。

 ひがし茶屋街にあるビストロで昼食をとることにする。二人とも一番安いカレーを頼んだ。旅行をするときはあまりお金をケチらないほうがいいというのは、様々な場面でささやかれているが、単純にビストロというあまり聞きなれない場所にビビってしまい、こういう結果になった。

 その後は金沢城公園を見に行った。とにかくだだっ広い。昔はかなり栄えていたのではないだろうか、ということが身をもって体感できる。ただし、城自体に高さはない(火事で焼失したらしい)ため、城に高さを求めている人は拍子抜けするかもしれない。

 城の中も見学した。

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「ボタンを押すと3分間音声がとまりません」の言い方が怖い。

 城はムーンウォークができる場所があったり、降りるのが怖い階段があったりと、エンターテイメントに富んだ場所だった。

 その後は兼六園に向かった。観光地だったからだ。

 見ごたえのある庭というのも存在するらしい。友人もしきりに「最初から行けばよかった」と悔しがっていた。観光地に対して尖ってもあまり意味は無い。雪が降るともっと見ごたえがあると思う。

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 新旧揃い踏みの杭があった。

 

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 左手のやり場に困っている像もあった。

 兼六園を見終わった後は、甘いものが欲しくなったので再びひがし茶屋街に向かった。景観に配慮したカフェに入り、コーヒーと大福を食べた。

  その後は駅に向かい、夜食の買い出しをした。二十数年生きているのに夜食のコツをつかんでいない私は、蒲鉾と生ハムを買うことにした。

 やることも無くなったので、宿へと向かうことにした。宿がカプセルホテルだったので、どうなんだろうと思いつつ了承したが、友人はどうやら併設されているレストラン的な場所をかなり気に入っているらしい。

 実際、友人は夕食を食べ呑みしている数時間、かなり口角が上がりご機嫌だった。気兼ねなく過ごせる友人が上機嫌な状況は、見ていて気持ちが良い。仕事の話、プライベートの話、普段自分が作っている短歌の話をしていたが、後々聞いたところ後半は覚えていなかったらしい。料理は美味しく、ブリは炙ると強くなるという知見を得た。

 その後は夜食を食べたのだが、お喋りは楽しかったものの、蒲鉾と生ハムは完全に蛇足だった。気力で蒲鉾を食べるという行為はあまりしたくない。

 その後は詠草参加の歌会の詠草について評を書こうとしたが、寝落ちしてしまった。

 

 2日目。起きるという行為が苦手な私は、かなりぐったりしながら朝食が提供されるレストランへと向かう。友人は元気だった。

 宿をチェックアウトして、近江町市場へと向かった。鳥のフンがすさまじい道路を越え、10時半頃に到着したが、人でわんさか賑わっていた。私たちはホタテの貝柱や鰻の蒲焼、コロッケを食べた。新鮮なホタテの貝柱には、のどごしという概念があるらしい。

 その後、少し時間をとってもらい、歌会の評をスタバで書いた。友人が友人でよかったと思う瞬間だった。

 お昼になったので、色々悩んだ結果回転寿司に行くことになった。20分ほど並び、寿司を食べた。寒ブリノドグロは暴力だし、あら汁は格闘だった。美味さで体力を消耗した結果、あまり量を食べることができなかった。

  昼食を終えた後は、他の場所に移ることにした。

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 金箔の巻き方がかなり雑なソフトクリーム。金沢旅行で一番グッときたものかもしれない。

 特に行きたい場所は思い浮かばなかった(金沢に対する知識が足りない)が、検討の結果金沢21世紀美術館に行くことになった。

 展覧会一覧を見ていくと、「DeathLAB:死を民主化せよ」というフレーズが目についた。二人で行ってみると都市と死に関する展示が行われていた。自分が先に飽きてしまい、近くのグッズ売り場へ移動した。良いアウターがあったのだが、結局買わなかった。今は少し後悔している。

 美術館を後にして、金沢駅に向かった。各々でお土産を買った後、本屋へ向かって簿記は取ったほうがいいかという話をした。旅行で簿記の話をするとは思わなかった。簿記だってそう思っているに違いない。

 その後は少し立ち話をした後、私は電車で、友人は飛行機に乗るため別れた。帰りの電車ではひたすら眠っていて、あまりにも眠りすぎていたためか、途中で乗る電車を間違え、詰んでしまうところだった。何とかタクシーを拾える駅で降り、家の近くまでバスが出ている場所まで向かい、帰ることができた。

 

 気兼ねせずに済む友人と行く旅行は、何もしない状況を楽しむことができる。だから楽しいのだと、1泊2日の金沢を通してしみじみ思った。