コムギココメコ

備忘録と不備忘録を行ったり来たり

空気系『simple life』

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 2018年リリース。空気系の1枚目の作品。

 Vaporwaveの中には、signalwave(あるいはbroken transmission)というカテゴリがある。音楽性としては、昔のCMやテレビ番組の一部をスクリューしたものにフィルターをかけて、ループさせている作品が多い。1曲1曲がかなり短いものが多く、あっという間に次の曲、次のループへ移行するのでテレビをザッピングしているような感覚にさせられる。今回紹介するアルバムも以上の例に当てはまっている。17曲で19分と収録時間は短い。

 曲名を見てみると、朝起きてからの行動が時系列的に並んでいる。まるで朝の行動をダイジェストで見ているかのようだ。フィルターやスクリューのかけ方が露骨ではないため、ドロドロと溶けていくような曲は無く、穏やかでのどかな、少しだけ眠たいような雰囲気が曲全体に漂っている。晴れた休日の朝に、少しだけ早起きできた時のイメージが浮かぶ。

 全体的に使っているサンプルが古いのも特徴的である。7曲目の『congratulations』で出てくる『小林ゆかり』という人物は、1960年代に子役として有名だったらしい。また、10曲目の『simple』で外人(?)が歌っている曲は『どこまでも行こう』という、1960年から70年代にかけて愛された曲だったりと、よくあるsignalwaveで使われるサンプルより10年~20年ほど古い。現在とかけ離れればかけ離れるほど、サンプリングされる素材は牧歌的な性質を帯びるのかもしれない。