コムギココメコ

備忘録と不備忘録を行ったり来たり

第二十九回文学フリマ東京に参加しました

 年に1回、バターチキンカレーを食べるイベント。それこそが文学フリマ東京だ。このイベントが無いと、バターチキンカレーを食べないまま1年が終わってしまうかもしれない。文学フリマ東京のおかげで、私とバターチキンカレーの縁は切れないで続いている。

 第二十九回文学フリマ東京の感想文を書いていくことにする。

 

前日まで

 とりあえず昨年の販売数は超えよう、という目標のもと、第二十九回文学フリマ東京に向けた戦いが始まった。毎年余裕をもったスケジュールを組もうという話をしていて、当然今年の春頃にも同じ話をしていた。結論から言うと、余裕をもったスケジュールにはならなかった。はたして本当にそんなものが存在するのだろうか。都市伝説かもしれない。

 申し込みをしないと文学フリマ東京には出られないので、お金を支払いに行く。無事に申し込みが完了したことを確認し、さらに数か月寝かせる。カレーだったらとっくに腐っている。

 9月ごろにそろそろ動き出さないとまずい、と言う話になった。1つでも作品を出しておきたいと思った私は、友人に連絡をとり、卒業式の際に披露した謝辞を借りた。

 謝辞のリミックス、というアイデアが浮かんだためである。

 もともと既存の文章の単語をほとんど違うものに置き換えて、全く意味のない文章に作り替えるのが好きだった。謝辞という固い文章で置き換えを行った場合、どうなるのかが気になったのだ。

 ちなみに、いくつか同じ手法を使って書いた文章があるので、リンクを掲載しておきたい。

komugikokomeko.hatenablog.com

komugikokomeko.hatenablog.com

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kakuyomu.jp

「帯分数 独占インタビュー」は、確かClarkのインタビューを基にしたように記憶している。そろそろアルバムを出してほしいと願っている。

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 とりあえず1つ完成したが、これだけでは寂しいしあまり書いた気もしなかったので、あと2つほど小説を書くことにした。

  1つ目の小説では、会話文をできるだけ普段話しているような形に近づけようと試みた。会話文で状況の説明がすぐにされてしまうと、不自然だ。会話は仲が良い間柄であるほど、文脈の共有がされているため、説明はされず外から聞いていると虫食いになっているようなイメージになるのではないだろうか。虫食いの会話について考えながら小説を書いた。

 また、派手なことをしないというのもテーマにした。生活は少し熱が上がったり下がったりするだけで、基本的にはずっとフラットなまま進む。そういう気持ちが小説に反映されているのかもしれない。そういう時期だったんだと思う。

 生活に即したものを目指した結果、結局アルバイト体験記のようになってしまった。今まで教授が学生を殺す小説や、遺灰を投げる大会に出場する小説などを書いていたため、今回の小説はかなりあっさりした仕上がりになった。

 2つ目の小説は、普段ブログで書いているような感じにしようと決めてから取り掛かった。また、1つ目が割とフラットで実際の生活に即したものだったので、反動でずっと嘘を書こうと思った。その結果「くしゃみが大きい人は、くしゃみを大きくする手術を受けている」というテーマになった。

 手術の流れについて調べるために、様々な病院のホームページを見た結果、割とグロテスクな画像を見てしまい、精神がグラついてしまった。

 

 11月の初めを締め切りにしていたのだが、くしゃみの小説が思ったより進まず、他のメンバーも終わっていない。各々が地獄のようなスケジュールをこなしつつ、なんとか参加表明をしていたメンバー全員が小説を提出することができた。

 しかし、いっせいにメンバーの大半が小説を提出したため、校正が間に合わなくなってしまった。校正をしながら校正を受けた箇所を直すという、ながら作業を行う羽目になり、母親がいたら怒られていたと思う。

  その合間にも会社の人を駆り出して表紙の写真を撮りにいったり、組版をしたりなど、かなりの作業をこなした。一太郎を導入した結果、楽になった作業も多々あったが、ソフトに慣れていないこともあり、スピードはそこまで上がらなかった。来年は締め切りを1か月早くしようと心に誓いつつ、なんとか締め切り1時間前に印刷会社に入稿した。

 その後は当日のブース設営で必要なものを適宜購入したり、お品書きを作成したりした。ありがとう東急ハンズキンコーズ。あなたたちのおかけで文フリに使う物品が揃いました。そして雨。お前のせいで髪の毛がぐちゃぐちゃになった。

当日

 ブース設営で使用する道具を用意して、8時半前に実家の最寄り駅から電車に乗った。電車の中ではFlying Lotus『Los Angeles』を聴いていた。

Los Angeles (WARPCD165)

Los Angeles (WARPCD165)

 

  Flying Lotusの中で一番好きなアルバムだ。1曲1曲が短いので、目まぐるしく音が変わるような印象。その中でビートは一貫して存在感を保っている。

 乗っていた車両が階段から遠い位置で停車したため、乗り換えを失敗してしまった。予定より5分ほど遅れて、流通センター駅に到着。駅を出てすぐのところ(というより駅の一部に取り込まれていたように記憶している)にゆで太郎が出来ていて驚く。今年はインドカレーを食べるとして、来年はそばという選択肢もできた。

 設営を手伝ってくれる友人と合流し、第一展示場へと向かう。サークル入場の列に並んでいる間、今年の反省点や、来年どういう小説を書くかという話をしていた。まだ出来上がった本を見ていなかったが、入稿してしまうと今年よりも来年の話をしたくなる。「来年はKawaii Future Novel」を作るぞとその時は言ったが、今は分からない。

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 元ネタの『Kawaii Future Bass』におそらくカテゴライズされる曲。ボーカルやピアノのカットアップが特徴的。良い曲ですね。

 

 10時15分頃に会場に入る。会場のほぼ中央に私たちのブースがあった。

 ブースを設営する前に、作成した本を見ることにした。

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 まず短歌。少し構図が思い通りにいかなかったところもあったが、なかなか良い出来上がり。情報量が少ない表紙にしたかったので、目的は達成できたと思う。来年はタイトルと作者名を表紙に入れなくてもいいかな、と思っている。

 次に小説。カバーを付けたことにより、自分で言うのもなんだが見栄えが格段に良くなった。本棚に入れても遜色なさそうだ(実際にメンバーが本棚に入れてみたところ、遜色がなかったとのことだった)。かなり思った通りの仕上がりで安心する。強いて言うなら、表紙は別にマット加工(ツヤが出ないようにする加工)にしなくてもいいのかなと思った。

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 本を確認した後は、設営をひたすら行った。意外に時間がかかってしまい、見本誌を出しに行く頃には、一般入場まで残り十分を切っていた。

  Y軸を意識することにより、机の上に本が多すぎて収拾がつかなくなる事態は避けることができた。

 

 11時。一般参加者が入場してきた。毎回1冊売れるまでは、かなり緊張する。会場内に人がどんどん広まっていく。我々のサークルに1番最初に来る人はいないのは重々承知しているが、早く1冊売れてくれ、と思う。

 スタートから十数分後、1冊売れた。しかし売れたのは既刊のほうだった。今までにないパターンだったので、肩透かしを食らった。その後もやきもきする時間帯があったが、スタートから30分経たないうちに短歌・小説の新刊が1冊売れ、安心することができた。

 その後もぽつぽつと短歌・小説が売れていく。昼頃には2冊しかなかった小説の既刊が売り切れた。初めて売り切れという文字を書いた。

 昼過ぎにタピオカを買いに、インドカレー屋(ターリー屋)のブースに行ったが、お目当てのチャイは既に売り切れていた。売り切れを突き付けられたのは、文学フリマでは初めてかもしれない。代わりにナッツなどが入った甘めのナンを食べた。

 店番を友人とローテーションしながら、欲しい本を買う。今回は9割が短歌関連の本になった。

 13時過ぎに昼ご飯を食べることにした。友人たち数人とともに再びターリー屋に向かう。並んでいると別の友人が後からやってきて、「あんバターナンはいいぞ」とひたすら勧めてくる。前に、あんバターナンが美味しいらしいという話をしたので、おそらく実際に食べてみたのだろう。しかし、あまりにも機械的に「あんバターナンはいいぞ」と言っていたため、真偽を一緒に並んでいた友人たちに問い詰められる。結局、「甘いものが好きだったら食べても良いと思うが、個人的にはしんどかった」と白状した。自分はすでに甘いナンを食べていたため作戦を変更し、いつも通りバターチキンカレーとジャンボチキン串を購入した。

 毎回バターチキンカレーを食べるたびに、「インドだなー」と思うのだが、1回もインドに行ったことがないため、自分が感じているのは架空のインド感である。

 昼ご飯を食べながら、来年の小説案を出した。オフハウスに行くと憤死してしまう小説というアイデアが出て、友人たちとかなり盛り上がったのだが、今考えると一体何だったのだろうか。

 その後は基本的に店番をしていた。ぽつぽつと小説・短歌は売れ、Twitterを見て購入してくれた方や、相互フォロワーの方もわざわざいらっしゃってくれた。湿気のせいか髪の毛がぐちゃぐちゃで申し訳ないと思う。大学の後輩も来てくれたとのことだったが、ブースを訪ねてきたとき、自分は昼食を食べていたため残念ながら会うことはできなかった。

 あっという間に17時になり、片付けを行う。17時20分頃に流通センター駅を出て、上野でメンバーとお疲れ様会を行った。来年も参加する方向で話は進んだ。ひとしきり喋った後、20時頃に解散した。こうして、今年の文学フリマが終了した。

これから

 結果として、小説は10冊、短歌は17冊売ることができた。今までの当日販売数の推移としては、小説が2→6→10、短歌が9→15→7→17なので、両方とも過去最大の数値になった。小説に関しては、1年に1回、しかも文フリでしか発表していないのに2ケタ売れたのは大健闘と言える。

 今のところは、来年の秋に行われる文学フリマ東京に出る予定で、さらなる販売数アップを見込むために、広報・宣伝活動をしたほうがいいという話になった。ペーパーカンパニーではなく、実体のある部として動き出す。Twitterアカウントとホームページのリンクを以下に記載する。

twitter.com

maisonlc.home.blog

 定期的に更新できればいいなとは思っているが、人間や文明はいつの日か滅ぶと考えているので、そのうちウェブ上にひっそりと佇む廃墟になるだろう。その時、少しでも味わい深い廃墟になっていることを願うのみだ。

 3年間活動を行っているわけだが、年々メンバーのモチベーションが高くなっている気がする。とても良いことだと思う。さらに言えば、私のモチベーションも今のところ、高い状態で維持できている。思考を自分の中で反芻せずに、アウトプットしたほうが色々捗ることに気がついて、実行に移せている。このモチベーションを保てれば、来年の秋頃には今年をはるかに超える、ものすごいものができているんじゃないかという、ただぼんやりとした希望がある。毎日文章を書いたり、短歌を作りたいと思うので、そのうち反動がくるか、最悪の場合死ぬんじゃないかとも思えてくる。それか、今自分は最悪の状態で、そこから抜け出す手がかりを探すためにひたすら何かを作っているのかもしれない。

 

 廃墟になるときに、味わい深いものになれているといいですね。