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【短歌の感想】真夜中をおんぶしあって進むのは誰と誰 からだは話の港/瀬口真司

真夜中をおんぶしあって進むのは誰と誰 からだは話の港

/瀬口真司『命中』(ネットプリント『ウゾームゾーム vol.9 おまけ 第63回短歌研究新人賞応募作』)

 

 <真夜中をおんぶしあって>という部分は、複数人が同じ夜を共有しているということだと個人的には解釈した。

 そう解釈したのは、<しあって>の存在が大きい。複数人(<誰と誰>と記されているため、2人だろうか?)が真夜中に背中を丸めながら歩いていく姿を思い起こさせる。

 <おんぶしあって進む>人たちは誰なのだろうと思う。しかし、<真夜中をおんぶしあって>いる人は、歌の中では<誰と誰>という疑問として読者に提示され、答えは分からない。作中の主体は少し離れたところで見ているような印象も受ける。

 個人的に一番好きな部分は、一字空けからの<からだは話の港>だ。すうっと体に馴染んでくる比喩だった。話は<からだ>へとやってきて、そこから他の人の<からだ>へと出発していく。この短歌を読んでいる私も港なのだろう。

 一字空けの前と後ろのつながりは読み切れないが、二つがそれぞれ別世界のものには思えない。<おんぶしあって進む>人たちが話をしている光景から想起されたものなのかなと思う。

 時々ふとした瞬間に思い出すので、好きな短歌として身体に馴染んでいるんだろうなと感じる。