コムギココメコ

忘れてもいいことを書くので不備忘録

読書感想文:せきしろ×又吉直樹『カキフライが無いなら来なかった』

 咳をしても一人/尾崎放哉

 分け入っても分け入っても青い山/種田山頭火

 

 これらは自由律俳句と言われるものである。

 私のパソコンはガタがきているため、「自由律俳句」と打ち込んでスペースキーを押すと「自由律は行く」に変換されてしまう。こういうタイトルのブログが頭の中に現れる。中高年が運営していそうだ。自由律はどこに行くのだろう。

 俳句は通常5・7・5に季語を入れたものを指す。しかし自由律俳句は定型が存在せず、季語を入れる必要もない。

 俳句は生活の中で触れ合う機会が多少存在する。テレビ番組では芸能人が俳句を詠み、先生に斬られている。また、松尾芭蕉正岡子規などはよく知られている。

 対する自由律俳句はどうだ。私の記憶では教科書に自由律俳句は載っておらず、国語便覧の片隅に載っていた気がする。

 私は国語便覧を読むことが大好きだった。国語は国語便覧を読むためのものだと言っても過言ではなかった。社会科の資料集も大好きで、授業中ずっと読んでいた。こういうサブテキスト的なものは、様々な情報が所狭しと載っているから、見ていて飽きない。

 俳句には有名な俳人がいるが、自由律俳句には有名な人はいるだろうか。私は尾崎放哉と種田山頭火しかしらない。一人も知らない人がいてもおかしくはないだろう。

 現在、あまり自由律俳句に触れ合う機会はほとんどない。いや、なかった。自由律俳句に触れ合うことができる本が数年前に日本へと放たれている。

 今回はせきしろ×又吉直樹『カキフライが無いなら来なかった』を紹介していく。

  

 

 作家であるせきしろ氏と相方が海外進出している又吉氏。元々自由律俳句を作っていたせきしろ氏が、又吉氏を自由律俳句の世界に誘ったのがきっかけとなり、我々のもとに、500以上の自由律俳句といくつかの散文が届けられている。2人が作る自由律俳句とはどんなものなのだろうか。以下に2人の自由律俳句を3句ずつ引用する。

 まずはせきしろ氏から。

 

 手羽先をそこまでしか食べないのか

 現地集合現地解散なら行く

 黒い雪ならまだ残っている

 

 続いて又吉氏。

 

 ほめられたことをもう一度できない

 まだ何かに選ばれることを期待している

 便座は恐らく冷たいだろう

 

 これらの句は、世間一般の人が思い描く風流な句世界とは遠いところに位置するものである。自意識と世界を少し斜め下から見たような視点。これこそが2人の自由律俳句の肝となっている部分だと私は思う。

「現地集合現地解散なら行く」という句を取り上げてみる。おそらく何らかのイベントに主体(俳句の中の私)は誘われているのだろう。イベント事態に惹かれる部分はある。しかし、主体には引っかかるものがある。それは、行き帰りだ。

 おそらく現地に向かうとき、近場の人々と集まっていくことになる。帰りも同じだ。しかし、行き帰りに誰かと一緒にいることがなんとなく気まずい。二人とも別行動をしていればいいのかもしれないが、それも何か後ろめたい。行き帰りが一緒になる人は、気の置けない友人とは言い難いのかもしれない。様々な考えが頭をめぐり、頭の中で出した主体の結論が「現地集合現地解散なら行く」なのだ。

 続いて「便座は恐らく冷たいだろう」を取り上げる。場面はトイレで、おそらく自宅のものではない。駅か、何らかの施設の中かは分からないが、個室トイレの中にいる。そして、ズボンを下ろしながら便座を見て思う。「便座は恐らく冷たいだろう」と。冷たいと思われる便座にこれから座るのだ。お尻は不快な冷たさに触れることになる。しかし、座らなければならない。一種の諦めに近い自由律俳句だと思う。

 自由律俳句に出てくるものは、どれも身近なもので、特別感の欠片もない。時々はさまれる作者2人による写真も、日常によくある風景のように思える。また、主体の感情が表れる自由律俳句も、どこかくすぶっていて、自意識過剰気味である。

 歌人穂村弘氏は、『はじめての短歌』という本の中で、せきしろ氏や又吉氏の自由律俳句に触れていて、そこで「自分は社会的にダメだ、サバイバル力が低いってことを知っている」と評している。そして、そういった人間は「小さな死によく遭遇する」と言う。

「小さな死」とは、例えば「飲み会の席を選ぶ」ことである。飲み会に行ったとき、どうにか自分が話しかけやすい人が近い席に座ろうとする。そのために、頭を滅茶苦茶に働かせる。こういった行動をとるのはなぜか。それは、もし自分が話しかけやすい人が近くにいない席に座ってしまうことは、「小さな死」だからだ。社会的にダメだと感じている人ほど、「小さな死」が世の中にたくさん存在し、それらを避けようとする。

「現地集合現地解散なら行く」も、「小さな死」を避けたいという主体の想いが滲み出ている。完全には親しくない人と行き帰りが一緒になるのは、「小さな死」なのだ。

 また、穂村氏は「社会的にはぜんぜん意味がない」ものに詩は宿ると述べている。「黒い雪ならまだ残っている」が良い例だろう。雪と言えば空から降ってくる白い物体である。それらが積もると、世界が白く染まる。雪は白いものであり、小説や短歌、俳句でもほとんどの場合雪は白いものとして登場する。

 しかし、せきしろ氏は黒い雪に焦点を合わせている。土やほこりなどが付いた状態で日陰にたたずむ黒い雪は、雪としてあまり価値をなしていない。しかし、黒いからこそ自由律俳句になり得るのだ。

 

 小さな死をなんとか避けつつ、社会的には意味のないものに焦点を合わせる。それらから生み出された自由律俳句は、単なるあるあるではなく、詩になる。あるあるは平面的で、そこで完結してしまうが、自由律俳句は背景に奥行きをもたせ、余韻を残す。俳句や短歌も面白いけれど、自由律俳句だって忘れてはならない。

 自由律俳句の間に、散文がいくつか挿入されている。そこではやはり、小さな死を避けようとする、自意識が過剰な世界がある。特に「オハヨウは言えなかったサヨナラは言おう」で書かれている又吉氏による散文は是非読んでほしい。

 

 小さな死を避け続けている自覚がある人、自由律俳句がありますよ。

ここ数年、温かいそばを能動的に食べていない

 時々そばを食べる。

 時々って言うと皆さんはどれくらいの頻度を想像するだろうか。時々の尺度は一人ひとり違うだろう。皆さんが思う時々の頻度を、私の文章にも当てはめていただきたい。

 数年前までは家でよくそばを食べていたのだが、引っ越しをしてからは家でそばを食べることはほとんどなくなり、大体立ち食いそば屋が主になった。最寄りのスーパーであまりおいしそうなそばが無いためだ。

 少し話は変わるが、冷凍のうどんはかなり美味しいのに、冷凍のそばはなぜあんなに微妙(個人的に)なのだろう。冷凍技術が麺類間で共有されていないのか、麺を構成している物の違いか。そういうもやもやとした思いを抱きながら、日々生きている。

 皆さんはいつもどんなそばを食べるだろうか。盛りそば、天ぷらそば、カレーそば、たぬきそば……など様々なそばがあるだろう。温かいものと冷たいものもある。今の季節だと温かいそばを食べたくなるだろう。

 私は冷たいそばしか基本的に食べない。季節も関係ない。

 別に温かいそばが苦手だったり、冷たいそばこそ至高と考えているわけでもない。なんとなく冷たいそばしか食べない。能動的に温かいそばを食べたのは、ここ10年くらいで片手で収まる数だと思う。一番最近だと、大学生の時にかきあげそばを食べたことだろうか。美味しくなかったことだけ覚えている。

 大みそかには年越しそばという風習があり、その時期実家に帰っている私は家族と一緒にそばを食べるのだが、わたしだけ冷たいそばである。ちなみに弟はそばをいやいや食べている。おそらく前世でそばを食べすぎたのか、そばに殺されたかに違いない。そばに殺されるとすると皆さんはどういう死因を思い浮かべるだろうか。私はそばが首に巻かれたことによる絞殺である。皆さんもそばに殺されるとしたらどういう死因か、家族と話し合ってみましょう。

 よく降りる駅には立ち食いそば屋があり、値段もそこそこ安いため頻繁に利用するのだが、そこでも私は冷たいそばを食べ続けている。1回食券のボタンを間違って押してしまい、提供されるまできづかず、動揺うどん(動揺うどんとは、意図せずうどんが出てきたために動揺しながら食べるうどんのことです)になったのだが、それ以外は冷たいそばを食べていた。冷たいそば好きの男に憑りつかれているのかもしれない。

 日本海側に住んでいるため、関東より寒く雪も降る。それでも冷たいそばを食べる。体は温まらないので、店から一歩外に出ると寒さが体を刺す。それでも食べ続ける。

 そんな生活を続けていたある日、お昼ご飯を食べようと立ち食いそば屋に入った。比較的新しい店で、一回も入ったことが無かったため開拓のつもりだった。食券の前に立つ。数秒後、恐ろしい事実に気が付いた。この店、冷たいそばがないのだ。

 

 私の眼は食券を一目ひとめ見るや否や、あたかも硝子で作った義眼のように、動く能力を失いました。私は棒立に立ち竦すくみました。それが疾風のごとく私を通過したあとで、私はまたああ失策ったと思いました。もう取り返しが付かないという黒い光が、私の未来を貫いて、一瞬間に私の前に横たわる全生涯を物凄く照らしました。そうして私はがたがた顫え出したのです。

 

 どうにか気力を保ちながら、代替案を考える。かきあげそばが安かったため、かきあげそばにする。数分後、そばがやってきた。食べてみるが、あまり味が分からない。動揺しすぎているのかもしれない。かきあげも、あるなあという感想しかなかった。頭が真っ白になりながらそば屋を後にした。そばでこんなに怖い思いをしたのは初めてだった。

 ちなみにうどんは冷たいのを好むが、温かいものも食べる。家では大体温かいうどんだ。なぜそばだけ、と思う方もいるかもしれないが、個人的な感覚なので説明ができない。

 今日はサーモン漬け丼を食べた。

2018年に購入/レンタルしたアルバム紹介①

 私はかなり飽きっぽい性格である。就職活動ならば好奇心が旺盛と言い換えることになる。

 そういう性格であることも手伝って、アルバムを頻繁に購入している。同じものばかりをずっとは聴いていられない。それが例え自分の好みど真ん中だとしてもだ。そのため、CDを購入しては聴き、全て聴き終わったらまた購入というプロセスを繰り返している。また、Bandcampというツールを去年あたりに活用するようになってから、アルバムの購入頻度は飛躍的に増加した。産業革命である。

 2年前から、1年間に購入/レンタルしたアルバムで特に好きだったものは年末に紹介していた。以下にリンクがあるので、目を通していただけるとありがたい。

komugikokomeko.hatenablog.com

komugikokomeko.hatenablog.com

 

 今年は購入/レンタルしたアルバムを5枚ずつまとめて紹介していきたいと思う。私自身Twitterやブログがきっかけでアルバムを購入することが多々あるため、私なりのネット社会への恩返しをしたいと思う。上記リンクでは1作品ずつ写真を貼り、紹介していく形式をとっていたが、ここではまとめて写真を貼って、まとめて紹介していく。

 今回は以下の5枚のアルバムを聴いた。

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 左上から時計回りに、

OSCOB『チャンネルサーフィン1978-1984

GenomeTV『ゲノムテレビネットワーク』

chris†††『social justice whatever』

New Dreams Ltd.『Fuji Grid TV EX』

猫 シ Corp.『lofi』

である。今回はVaporwaveに属するアルバムが揃った。

 Vaporwaveに関しては各自検索してほしい。Vaporwaveにも様々な特徴があり、1、2、4番目のアルバムは日本の1970年後半~1990年代あたりのCMをサンプリングし、スクリューしたものがメインになっている。こういう作品は個人的にグッとくる率が高い。深夜にぼんやりしながらテレビを見ているような感覚になれるからだ。

 3作品とも大まかな骨組みは似ているが、アルバムによって異なる部分もある。例えば『ゲノムネットワーク』は1曲1曲が短く、ザッピングをしているような感覚になる。フィルターのかかり方も違う。『チャンネルサーフィン1978-1984』は少し眠くなり始めたころに見ているテレビ、『ゲノムテレビネットワーク』『Fuji Grid TV EX』は寝落ちしそうな時に見ているテレビである。3作品とも様々なCMをサンプリングしていて、世の中にはたくさんのCMが消費されてきたんだなと、当たり前のことを感慨深く感じてしまう。

 ちなみに、『Fuji Grid TV EX』はFuji Grid TV『Prism Genesis』という作品が元になっている。 アーティスト名とタイトルを変え、収録曲も一部変更している。また、内部の話になってしまうが、Fuji Grid TVはVektroidというアーティストの変名であり(New Dreams Ltd.もvektroidの変名)、Macintosh Plusという、Vaporwaveに属する作品の中で1番有名だと思われる『Floral Shoppe』も作っていたりする。ジャケット内にある像はVaporwaveのイメージキャラクター的な存在になり、サンプリング元になった曲のコメント欄はVaporwaveの文脈で汚染されていたりする。

 『social justice whatever』は現実世界やインターネットで有名になった曲(例を挙げると、スキャットマン・ジョンの『Scatman (ski-ba-bop-ba-dop-bop)』やダフトパンク、AVGN*1の主題歌など)をスクリューし、ぶつ切りにした楽曲群が揃っている。このアルバムのレビューは、以下の捨てアカウント氏が執筆した記事に詳しく載っているので、そちらをご覧いただければと思う。

themassage.jp

 『lofi』は、lo-fi hip hopというジャンルのアルバムである。ざっくり説明すると、サンプリングしたものを古ぼけた質感にして、そこにやはり古ぼけた質感のビートをのせたhiphopである。このアルバムは雨音が途中で挿入されているところが良い。この作品を含め、lo-fi hip hopは夜に聴くとかなり心地いい。

 

 最後にアルバムのリンクを以下に貼っておく。

dmttapes.bandcamp.com

elemental95.bandcamp.com

christtt.bandcamp.com

vektroid.bandcamp.com

catsystemcorp.bandcamp.com

 

 アルバム紹介を定期的に続けていければと思う。

*1:アメリカのナードが名作/迷作ゲームをレビューする動画

本屋に行くとき、私は生きのびる必要がなくなる

 時々本を買う。

 私の家の最寄り駅から、電車に20分ほど乗ると大きな駅がある。その駅を出てすぐに本屋が存在している。

 その本屋は地方にしては品ぞろえが良く、引っ越してきてから本を買うときは、いつもその本屋に行くことにしていた。

 私は本屋に行くと本を買ってしまうことがある。本屋に行ったからといって、本は買わなくてもいい。今すぐに必要のないものであれば、出来るだけ買わないほうが世界で生きのびるためには良い。

 しかし、本屋に行くと生きのびる必要がなくなる。我々は食べるためにスーパーに出かけたり、賃金を貰うために職場に出かけたりする。これらの行動は言わば生き抜くために必要なものである。しかし、生きのびるために本は必要ない。そのため、本屋に入ると武器を外して安全に歩くことができる。言わば精神のセーフティーゾーンとも言える。

 生きのびる必要がないのであれば、今すぐ必要ではないものを買っても何ら問題はない。問題がないから本を何冊も買ってしまう。まだ読んでいない本は沢山あるのにも関わらずである。

 私は様々なことに興味があるし、様々な事を身に着けたい。コントロールフリークとまではいかないものの、できることなら全て自分で行えるようにしたい。

 世界中にバラバラになって散らばっている知識の破片を拾い集めるように、本を買っていく。気になったら買う。目を惹いたら買う。心に引っかかったら買う。買う。そして買う。

 こうして数十冊のまだ出番を迎えていない本が山のように重なっていく。少しずつ本を読んでいきたいのだが、精神が赤点を回避しないと本が読めないので、あまりペースが上がらない。そうしている間にも興味のある本が増え、それらを購入し、また山が高くなっている。いつしか私は、私の興味に殺されてしまうのかもしれない。

 山を整理しようと考え、本棚を購入した。カラーボックスとも言うらしい。6段あるものを買ったため、持つとかなりの重量があった。死体を背負って旅に出るのはかなり難しいと思う。皆さんは死体を背負って旅をしたことがありますか。

 30分くらいで完成すると説明書には書いてあったが、実際には60分かかった。雪の日のバスみたいだ。途中板を反対にしてしまうミスがあったのも要因の一つだろう。そのまま続行してもいいかなと一瞬思ったが、私の右手と左手が逆のまま、神に「まあいっか」と言われて誕生させられたらどうしよう。怖くなったので直す。

 今は立派な本棚が建っている。墓標にしたい。上から4段目を積読エリアにしているが、まもなく入りきらないほどの量になる。少しずつ他の本棚を侵食していって、やがて全ての本棚が埋まり、別の本棚を侵食し始め、衣装ケース、床、押し入れ、冷蔵庫、電子レンジ、トイレ、風呂、洗濯機、口、臓器、血管……とどまることを知らない。 

読書感想文:キリンジ『自棄っぱちオプティミスト』

 音楽をある程度聴いている人であれば、好きなバンド/アーティストが存在すると思う。様々なジャンルのバンド/アーティストを好きになる人もいれば、1つのバンド/アーティストをずっと好きでいる場合もあり得る。ちなみに私は前者である。

 私はしばしばCDを購入、もしくはレンタルするが、それはずっと同じアルバムばかり聴いているといずれ飽きるからである。いくら好きなアルバムでも何百回も聴くとさすがに他のアルバムを聴きたくなってくる。

 様々なアルバムを借りていく中で、一定の周期でまた聴きたくなってくるバンド/アーティストの作品も出てくる。そういった思いを抱かせるバンド/アーティストを、私は好きなバンド/アーティストと定義している。

 好きなバンドの中の1つにKIRINJIがある。元々はキリンジという名義で、兄(堀込高樹)と弟(堀込泰行)で活動していた。

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 この画像は2000年にリリースされた3rdアルバム『3』のジャケットである。なぜ油を塗ったのだろう。左が弟の泰行。年を経る毎に風貌が大幅に変化した。右が兄の高樹。年を経てもあまり風貌は変わらなかった。

 弟が抜け、今は名義をローマ字にして、5人体制で活動している。どちらの名義も名曲ばかり作っている。

 ちなみに私が1番好きなキリンジの曲は『愛のCoda』である。時期によっては世界にある曲の中で1番好きな時もある。この曲はとにかく歌詞が最高である。「赤に浸す 青が散る 夜に沈む 星がこぼれた」という、限りなく切り詰めた字数で夕方から夜になる時の風景を歌う部分は鳥肌が立つし、「不様な塗り絵のような街でさえ 花びらに染まるというのに」というキラーフレーズも出てくる。あらゆる手段を用いて聴いてみてほしい。

 また、KIRINJI名義で1番好きな曲は『AIの逃避行 feat. Charisma.com』である。この曲はとにかくベースがカッコいい。私自身がまだ、すごさを咀嚼しきれていないため、とにかくすごいとしか言えないが、是非聴いてみてほしい。

www.youtube.com

 

 本題に戻ろう。今回読んだ本はキリンジ時代に出版された『自棄っぱちオプティミスト』である。

自棄っぱちオプティミスト

自棄っぱちオプティミスト

 

  ちなみに同名の曲もある(6thアルバム『DODECAGON』に収録されている)。キリンジのロングインタビューに惹かれて購入した。

 内容は、エッセイが30話(兄弟でそれぞれ15話ずつ)、ゲストとの鼎談が2つ、デビュー時から2010年(8thアルバム『BUOYANCY』)までの道筋に関するロングインタビュー、兄弟に関係のある単語が載せられた大百科『奇林辞』が載っている。

 まずエッセイについて触れていく。やはり兄弟とはいえ、文章の雰囲気は結構違っている。兄の文章は落ち着いていて、視点が弟よりひねくれている。弟の文章は兄よりノリが軽い。

 似通っている部分もある。兄弟とも一つの物事について深く掘り下げる(想像/妄想していく)文章である。地面に落ちている靴を拾いに戻る男を見て、靴を拾う競技を考える兄。ウォシュレットの水圧に少し怒った後、水圧を調整している人のこだわりについて考える弟。こういう想像力があるからこそ、見事な歌詞を書くことができるのだろう。

 この本最大の魅力は、ロングインタビューだと思う。どういうことを考えながら活動をしてきたのかが語られている。マネージャーも登場し、二人が覚えていないことに関して補足をしてくれるし、インタビュアーも兄弟と長年の付き合いがある方なので、細かいところまで掘り下げてくれている。個人的に面白かったのは、兄が「同じアーティストのライブを2時間も聴いていられない」と答えている部分である。兄の一筋縄ではいかない性格が表れている気がした。また、キリンジの代表曲である『エイリアンズ』(少し前にCMで流れてましたね)に対する兄弟のスタンスの違いも読んでいて面白かった。キリンジの2人でもそういうことを思うのかという部分と、キリンジの2人ならそういうことを思ってもおかしくないなという部分があり、見ごたえがあった。

 キリンジにまつわる言葉を集めた『奇林辞』も面白い。短いがその言葉に関するエピソードも載っているので、キリンジファンは一読の価値があると思う。

 

 アーティストによる本は、その人の考え方を知ることができ、後で曲を聴くときに少し背景が見えて面白い。今回はキリンジファン以外の方は少しとっつきにくいかもしれないが、好きなアーティストの本を読んでみるのも、また新たな発見があって面白いと思う。

2018年、勝ちに行くために

 明けましておめでとうございます。

 

 皆さんは2018年に無事たどり着けましたか? たどり着けた方は良かったですね。たどり着けず、2017年に取り残されてしまった方、次回のチャンスを待ちましょう。

 今回は毎年決めている目標について書いていく。毎年作っては破り、作っては破り、まるで筆が進まない小説家のように目標を屑籠に向かって投げ捨てていた。今年こそ達成できるようにしたい。

女「どうせ今年も未達成で終わるんでしょ」
 今年はちゃんとやるぞ!! あと女って誰だ?

 

 去年は目標を小分けにしすぎて、覚えておくことすら難しかった。そのため、途中で目標を再設定している。再設定した目標は以下のとおりである。

 

・小説、短歌を文学フリマに出す

・本を20冊読む

・選歌がある短歌投稿媒体に自分の短歌が載る

 

 本を20冊読むことはできなかったが、残りは達成することができた。文フリで小説と短歌を頒布したし、ネットプリント毎月歌壇やうたらばといった短歌投稿媒体に短歌を選んでいただいた。また新潟で活動をしている空き瓶歌会さんから歌会のお誘いを頂き、歌会に初めて参加した。今までTwitterに閉じこもっていたが、7年目で初めて、肉体をもって外部へと踏み出したのだ。

 2017年の出来事を踏まえて、今年のコンセプトは以下の通りである。

「勝ちに行く」

  これだけだとさっぱり分からないと思う。このコンセプトを基に、目標を立てた。

 今年の目標はこれだ!

 

①本を23冊以上読む

②ブログ記事を46本以上書く

文学フリマ東京(秋)で短歌・小説を頒布する

④イラスト・デザインの勉強・練習を続ける

 

 1つ目と2つ目の数字が中途半端なのは、2017年の数字を参考にしているためだ。目標を達成することで、去年の自分を超えることになる。

 2017年は小説や短歌のアイデアが枯渇していくようになった。理由の1つにインプットが少なかったということが挙げられる。アイデアはしっかりとしたインプットがあってこそ創造できると私は考えているため、本を読む習慣を取り戻したい。また、本だけでなく、漫画や映画などもある程度見るようにしたい。2017年はほとんど漫画や映画を見なかった。生活が変わったことで、気力が失われていたのかもしれない。

 インプットだけでなく、アウトプットも必要である。2017年はブログの記事が45本で、2016年の70本と比べると、7割弱ほどに減ってしまった。文章は日々書き続けていないと衰えていくばかりなので、気を付けていきたい。

 2017年は先述のとおり、文学フリマで短歌・小説を頒布することができた。来年は表紙のデザイン・内容共にもっと完成度の高いものを作れればと思う。

 イラスト・デザインの勉強と練習は、文学フリマに初めてサークル参加して痛感したことで、表紙がある程度目立つものでないと、なかなか手に取ってもらえない。小説は特に顕著である。他の人に依頼するのも一つの手だが、自分である程度出来たほうが困らないと感じた。

 

 2017年ほど、自分の頭の中で思い描いている光景と、小説や短歌にしてアウトプットした時のギャップに苦しんだ年は無いかもしれない。自分のような人間は、口を開けていても餌にはありつけない。様々な事象をインプットして、いくつもアウトプットしていかなければ世界に見つけてもらうことができない。とにかくアウトプットしたものを外に向かって投げる、これも2017年に痛感したことである。作品(自分の作ったものを作品というのが恥ずかしいのは、自分が満足いくものを作れていないことの表れなのか)は外に向かって投げなければどうにもならない。

 日々終わりに向かって近づいているのだから、動いていく必要がある。

 

 2018年は、勝ちに行くぞ!!!!

2017年に購入/レンタルして良かったアルバム10選

 2017年の電池がそろそろ切れそうで、ランプが弱々しく点滅し始めた。そろそろ今年のまとめに入ろうかと思う。

 今回は2017年に購入/レンタルしてよかったアルバムを10個紹介していく。すぐ聴けるようYoutubeなど(公式のもののみ)をリンクしているため、多少重くなると思うが勘弁していただきたい。

 2017年に「購入/レンタル」したものが対象のため、今年リリースではないアルバムを多く含んでいる。読む前に是非ご了承いただきたい。

 今年は207枚のアルバム(ミニアルバム含む)を購入/レンタルした。去年が149枚なので58枚増えている。それだけ発掘が充実した年だった。来年以降も引き続き色々なアルバムをチェックしていきたいと思う。

 ちなみに、10作品の中で順位付けはしていない。どれも良い作品だった。

 

スカート『20/20』

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 2017年リリース。上質なポップスを作るビックな男のソロプロジェクト、スカート。メジャーデビューして初めてのアルバムとなる。前作『CALL』もかなり良いアルバムだったが、今作はポップさがかなり強調されていて、一番バラエティに富んだアルバムだったんじゃないかと思う。曲も短めにまとまっているため、あっという間に聴き終えて、もう1回初めから聴きたくなる。おすすめ曲は『視界良好』。

 

スカート / 視界良好【OFFICIAL MUSIC VIDEO】 - YouTube

 

 

 

Jon Hopkins『Immunity』

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 2013年リリース。イギリス出身のアーティスト、ジョン・ホプキンスの4枚目のアルバムである。ジャンルはテクノもしくはエレクトロニカだろうか。前半は呻るような、後半は少し物憂げなトラックが並ぶ。崩壊一歩手前のメロディに、ピアノが時折乗り、怖さを見せながらも荘厳な雰囲気を漂わせるアルバムとなっている。おすすめ曲は『We Disappear』。

 

Jon Hopkins - "Open Eye Signal" (Official Music Video) - YouTube

 

 

 

Bonobo『Black Sands』

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 2010年リリース。イギリスのアーティスト、Bonoboの4thアルバム。Bonoboは今年、『Migration』というアルバムをリリースしていて、そちらも良かったのだが、初聴の衝撃度でこちらを選んだ。。叙情的な世界を連想させる楽曲群に、激しいわけではないが、しっかりと主張してくるビート。いつまでも聴いていられる傑作である。おすすめ曲は『Kong』。

 

Bonobo : Prelude - Kiara [Live] - YouTube

 

 

 

stream_error『old_loops』

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 2017年リリース。『Lo-fi Hip Hop』というジャンルがある。かなりざっくり説明すると、サンプリングしたループを古ぼけたような質感にし、そこにビートを乗っけたものである。今年Lo-Fi Hip Hopを知り、Bandcamp内で検索したときに出てきて、虜になったのがこのアルバムである。タイトル通り、サンプリング元を押し入れの片隅に長年置いたかのような質感のヒップホップが並ぶ。夕方これを聴きながら散歩するとかなり気持ちが上がってくる。

 

 

 

 

ムーンライダーズ『CAMERA EGAL STYLO / カメラ=万年筆』

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 1980年リリース。ムーンライダーズの5thアルバムである。まず、ジャケットが最高にカッコいい。ちなみにタイトルは映画理論から取られており、全ての曲が映画を作品をモチーフにしている。ニューウェーブに少し実験的要素を入れたこのアルバムは、リリースから35年以上が経った今でも色あせていない。リマスター版だと全ての曲のリミックスが収録されたCDも付いてくる。おすすめ曲は『太陽の下の18才』。

 ※公式の動画が見つからなかったため、リンクは無しです。

 

 

 

柴田聡子『愛の休日』

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 2017年リリース。柴田聡子の4thアルバム。日常のゆるい雰囲気を漂わせた楽曲群に、奇異な言葉を使わなくてもハッとさせることのできる歌詞。特にアルバム2曲目の『後悔』は2017年に聴いた曲の中で個人的に1番良かったんじゃないかと感じた。『後悔』について書いているとテンションがおかしくなってしまうので軽く触れるだけにするが、一見明るめの歌詞の最後に「たら」「れば」を多用することで明るい雰囲気を少し残しながらも、着地点を変えてしまう部分が最高なんですよね。おすすめ曲はもちろん『後悔』。

 ちなみにアルバムについては個別の記事もあるので、よろしければどうぞ。

komugikokomeko.hatenablog.com

 

柴田聡子「後悔」(Official Video ) - YouTube

 

 

 

2562『The New Today』

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 2014年リリース。オランダ出身のアーティスト2562の4thアルバム。今までのアルバムはテクノ色が強かったが、このアルバムは少し毛色が違うように思えた。持続する低音が不気味さを醸し出す『Arrival』、異国的なリズムとコズミックな音が混ざり合う『Terraforming』など、漆黒と神秘が両立されたアルバムになっている。おすすめ曲は『Terraforming』。

 

soundcloud.com

 

 

 

The Cinematic Orchestra『Every Day』

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 2002年リリース。イギリスの映画音楽的ジャズ集団、The Cinematic Orchestraの2ndアルバムである。ジャズをDJのような視点で編集し、しっとりとしたジャズの音世界に、現代的要素を注入したアルバムである。個人的にアルバム最大の山場はラッパーを起用した『All Things To All Men』である。もの悲しげなトラックに、落ち着いた口調のラップが入る、カッコいい曲になっている。夜に部屋で聴くとかなり合うアルバムだと思う。おすすめ曲は『All Things To All Men』。

 

 

 

 

Two Fingers『Stunt Rhythms』

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 2012年リリース。ブラジル出身のアーティストAmon Tobinの別プロジェクト、Two Fingersの2ndアルバム。Amon Tobin名義でもカッコいいアルバムをいくつも出しているが、こっちの名義はとにかくビートとベースがえげつなく、ヒップホップにビートの増強剤を注入した楽曲群が勢ぞろいしている。全てをなぎ倒していくようなビートが好みという人は絶対聴いたほうがいいと思う。おすすめ曲は『Snap』。

 

Fusq『Polarity』

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 2017年リリース。フランスのアーティスト、Fusqの2ndアルバム(曲数的にミニアルバムかもしれない)。Twitterでたまたま流れてきたのだが、一聴して好きになってしまった。音楽ジャンルの1つに『Kawaii Future Bass』という、日本のアニメやイラスト+フューチャーべースを合わせたものがある。このアルバムもそのジャンルに該当するのかもしれないが、このアルバムはかわいさはそのままに、ポップさより強調している。かわいい+エレクトロポップの模範解答の1つがこのアルバムなのかもしれない。おすすめ曲は『Inner (feat. MYLK)』。

 

 

 

 

 今年も音楽は最高だった。来年もたくさんのアルバムを購入できればいいと思う。