コムギココメコ

備忘録と不備忘録を行ったり来たり

アップルパイを初めて食べた

 私は一般の人々に比べて、食べたことの無いものが多いらしい。

 例えば、パスタだとつい半年前までミートソース(などを代表とするトマトソースを使用したもの)とナポリタンしか食べたことが無かった。半年前にやっとペペロンチーノを食べたが、まだカルボナーラは食べたことがない。

 以下にペペロンチーノを初めて食べた時の話を書いたので、よろしければどうぞ。

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 基本的に自分がある程度美味しいと確信を持って言える食べ物以外の関心が薄く、新しく出てきた料理にはあまり興味がわかない。1日に基本3回しかないご飯の時間で、リスクを冒したくないという気持ちがある。

 社会に本格的に進出してからは、自分の食べたいものだけを食べていればいい、というわけにもいかなくなってきたので、結果自分では絶対頼まないような料理を食べることもしばしばある。

 こういった受動的なお食い初めはしばしばあったのだが、能動的なお食い初めはあまり無い。舌が安定志向に走っているためだ。

 しかし、最近能動的にお食い初めをしたものがある。それはアップルパイだ。

 

 元々、子どものころはリンゴが苦手だった。理由は今となってはよく分からない。給食でリンゴが出ることがあっても、大体は残していたように記憶している。しかし、高校に入ってから、母親が毎日弁当にリンゴを入れるようになった。世が世なら拷問である。無理やり拷問を受けていると、次第にあまり苦痛を感じなくなって、最後には食べられるようになった。これを労働に置き換えると、気分が悪くなるのでやめましょう。

 こうして、リンゴを食べられるようになったのだが、リンゴ界を代表する食べ物、アップルパイだけは食べずに過ごしてきた。リンゴを甘く煮たものは割と好きだったので、食べれば好意的な反応が身体で起こるとは思ったものの、食べる機会が無かった。アップルパイがあるお店では、大体それ以上に自分の好きな食べ物が存在するからだ。リンゴ煮で思い出したが、以前クックパッドに、「CCレモンでリンゴを煮ると美味しい」と書いてあったので、レシピ通り試したら全く美味しくなかった。悔しい。世が世ならクックパッド抵抗軍を作っていたと思う。テニスコートの誓いに似たものを、暇な皆さんと一緒にやりましょう。

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 アップルパイを食べない生涯を送ってきたのだが、つい最近食べる機会があった。

 ある日、タリーズコーヒーに行った。いつもはココアを頼むのだが(ココアは美味しい。今回言いたいことはこれです)、その時は朝から何も食べていなかったので、食べ物を頼むことにした。

 時間帯がお昼過ぎだったためか、軽く食べられそうなものがアップルパイしかなかった。一回けじめをつけたほうが良いと思い、アップルパイを注文することにした。すると、「あたためますか?」と尋ねられた。アップルパイはあたためても美味しいらしい。ライフハックだ。

 せっかくだからあたためてもらうことにして、席を確保して少し待つ。アップルパイが運ばれてきた。ナイフとフォークもついてきた。アップルパイはナイフとフォークで食べるらしい。これまたライフハックだ。

 食べてみることにする。ナイフとフォークを握る。1回目はリンゴまで届かず、ただのパイだった。2回目もリンゴまで届かず、ただのパイだった。3回目こそはと思ったが、またもや届かず、ただのパイだった。

 そして4回目、やっとリンゴに届いた。そこで新たな事実を発見する。タリーズコーヒーのアップルパイにはキャラメル的なクリームが入っていた。リンゴとキャラメルとパイが手をつなぎながら、口へ入ってくる。

 美味しかった。

 

 良い体験をしてから数日後、街を歩いていると、急に無に全身を強く打ち付けられ、無になりかけていた。身体の輪郭が曖昧になっていたため、これはまずいと思い、急いで近くのパン屋に逃げ込んだ。

 どのパンを買おうか迷っていると、アップルパイと言う文字が目に入った。これしかないと思い、会計を済ませ、電車に揺られ、家に帰ってアップルパイを食べた。

 美味しかった。

 気が付くと輪郭は元に戻っていた。

 

 こうして、私の好物にアップルパイが追加された。アップルパイを食べたいので、暇な人々はアップルパイを各自で食べましょう。

 applepie_kakujidetabeyou@gmail.com