コムギココメコ

備忘録と不備忘録を行ったり来たり

短歌(371~380)

 大体2週間ぶりの短歌のお時間である。6月中旬~下旬にかけての十首である。

 短歌を並べていくと、なんとなくこのときの精神状態が分かってくる。この時期の十首のほうがやれ墓石だの、自殺装置だの、殺すだの、物騒な単語が多く、ダウナーな短歌になっている。また、地方都市という舞台を短歌に反映させたいなと強く思っていた時期でもある。背景である。

 

【371~380】

ああ俺は夢の中でも半額のパック寿司を嬉しそうに買う

 

日曜のBOOKOFFにて人々は墓石(ぼせき)のようにただ立ち尽くす

 

また1つ自殺装置が作られた都市で今日もまだ死なないでおく

 

革命のしおりに付け足してください「多めに靴下を用意する」

 

中吊りの健康特集見る僕は血栓として地下鉄にいる

 

夏というものが昔はあったのか 博物館の麦わら帽子

 

難しい顔をしている先生が真っ先に見る校庭の犬

 

ああ叔父は死語の遺骨を大切に抱きしめながら生きるのだろう

 

脳に住む画家なら黒いキャンパスで朝方俺を殺す絵を描く

 

ピチカート・ファイヴにデートもしないでと急かされながらイオンモール

 

 

 次回もよろしくお願いします。

好きなアルバム紹介その10『愛の休日』

 不定期で好きなアルバムを紹介しているシリーズ、第10弾である。

 

 日常生活だとあまり好きなアーティスト予備軍を発見できる機会は少なかったりする。外で様々な音楽を聴く機会は意外に少なく、お店に行くと有線が流れているときがあるが、ほぼ最新のヒット曲なので、自然と情報収集の網目が荒くなってしまいたくさんこぼれてしまう。そのため、好きなアーティスト予備軍がどこかに隠れていないか、よくYoutubeを使って曲を聴く。この方法が1番手っ取り早いと思う。

 アルバムを買おうとするとき、意外にハードルがあるなと思う。借りられるのであれば借りてしまうし、数千円をかけてあまりしっくりこないと結構ショックである。そのため、気になったアーティストの曲を何曲も聴いて、このアーティストならアルバムを買っても後悔しないなと自分の中で結論が出てから、好きな曲が多く入っているアルバムを買うことにしている。

 例外的に、一聴き惚れをした曲があるから、その曲を聴きたいがためにアルバムを買うときもある。ばっちりハマる曲は意外に少なく、イントロは好きだけどサビはあんまりだったり、好きな曲調だけど長すぎたりと、何かしら引っかかる部分があったりするときも多い。

 前置きが長くなったが、今回は一聴き惚れで買ったアルバム、柴田聡子『愛の休日』を紹介していきたい。

愛の休日

愛の休日

 

 『愛の休日』はシンガーソングライター、柴田聡子の4枚目のアルバムである。

 まずはこの曲を聴いていただきたい。


柴田聡子「後悔」(Official Video )

 

 滅茶苦茶良い曲じゃないですか???  序盤・中盤・終盤、隙が無いと思う。こんなポップで爽やかな「後悔」、なかなか存在しない。個人的にはこの曲が2017年に発表された世界中の曲の中で1番好きな曲だ。春っぽい曲調に、少し上ずった声とフルート、合いの手とコーラスが重なってポップさが弾けている。この曲を聴いた次の日にタワレコにCDを買いに行った。それほどにもストライクゾーンど真ん中の曲だった。

 アルバムで注目したいのは「歌詞」である。この人のすごいところは、平易な言葉で心に引っかかる部分を作り出すところである。等身大の言葉に徹しすぎると言葉が引っかからないで通り過ぎて行ってしまうし、かと言ってやりすぎると、歌詞ではなく単語の羅列になってしまう。平易な言葉を使って心に引っ掛かりを作るのは、かなり難しい。

 例えば、「あなたはあなた」という曲に出てくる、

「胸のつかえに目薬さしてくれたあなたと観覧車」

という歌詞。「胸のつかえ」に「目薬」をさすという比喩に一瞬引っかかりを感じる。胸のつかえに目薬をさすことは正しいのかと思う。しかし、心にすっきりしない何かがあり、それを取り除いてすっきりとした気分にしてくれるという感情を表すのに目薬は最適解だと思う。胃薬とかだと何も引っかからない。

 他にも「赤いソファーが届くよ 畳に置いたら変かな?」(「後悔」)、「心臓のはやさに電車が追いつく」(「遊んで暮らして」)、「いっちょまえに いきぬきしすぎ せいせいしすぎて こわい」(「さばーく」)など、デペイズマン(ある対象に全く状況・環境の違う別の対象を組み合わせて違和を作り出す手法)を使ったり造語を作り出さなくても、心の引っかかりが作れるのはすごい才能だと思う。ちなみに私が好きな歌詞は「ああ、バッティングセンターで スウィング見て以来 実は抱きしめたくなってた」(「後悔」)、「温泉が出るんだ センスだけで掘ってやんだぜ」(「さばーく」)である。

 アルバム自体には弾き語りとバンドチックな曲が半々、最後だけ少し毛色の違うマシンビートっぽい曲が入っている。そこに歌が入ることで、何とも言えないリアルを片足だけ抜けたような世界観が生み出されている。

 無知であるために曲の音楽的な構成について話せないのと、本当に良いものを前にした時の語彙力の低下により、伝えきれない部分もあるが、良いアルバムであることは確かだ。みんな買いましょう。

 

【トラックリスト】

1. スプライト・フォー・ユー
2. 後悔
3. 大作戦
4. あなたはあなた
5. 天使を見てる
6. 遊んで暮らして  
7. ゆべし先輩  
8. 思惑
9. 忘れたい
10. さばーく
11. リスが来た  
12. コーポオリンピア
13. 愛の休日

 

 


柴田聡子「ゆべし先輩」(Official Video )

 

 

短歌(361~370)

 大体1か月ぶりの短歌のお時間である。以下の10首は6月上旬~中旬あたりに詠んだものである。

 最近の話をするが、ネットプリント毎月歌壇で石井僚一氏に選んでいただいた。私は承認欲求が強いので、素直に嬉しかった。励みになるので、これからも頑張っていきたい。しかし、以下の10首は自分らしい短歌とは何か四苦八苦し、もがいているときの短歌である。情報である。

 

【361~370】

食パンのカビを結んでいくとほらしし座みたいに見えるね 捨てます

 

くら寿司で生きそして死ぬ寿司たちの自殺を防ぐための鮮度くん

 

停滞を代弁する梅雨の空に甲子園のサイレンよ鳴れ

 

1日がもし72時間ならコンビニの寝顔が見てみたい

 

分け入っても分け入っても全てがThis video has been deleted

 

ゆっくりと空からスタッフロール降り僕らはここで終わりだと知る

 

契約は更新されず求人の広告を見るてるてる坊主

 

どうしよう生まれる時代を間違えたのにこんなにもしあわせである

 

宿題を忘れたせいで数十年人間として立たされている

 

ただひとりイオンモールの真ん中で愛を叫んでいるのは誰だ

 

 

 次回もよろしくお願いします。

整体に行った結果、枕と作曲ソフトを買った話

 日々をループしていたら夏になってしまった。このまま行くと秋になり冬になり2020年になり2034年になりそしてn年に死んでしまうのではないか。日々メメントモっとかないといけないことが分かる。

 最近の近況について話す。まず、身体がなんとなく重いような気がしたので、生まれて初めて整体に行くことにした。時々肩が凝ることはあるが、そこまで重症ではなさそうだったので放置していたが、1回くらい整体に行っておいたほうが話のネタになるかなと思い、口コミで良さそうなところを予約した。話のネタになるから、という理由でどこかに行くことがあるので、そのうち話のネタになるから天国とか未来などに行くかもしれない。

 当日整体に行ってみる。軽いカウンセリングを受けた後、全身をマッサージしてもらう。「どうですかね」と聞いてみると、「バキバキですね」と答えが返ってきた。バキバキすぎて刃牙になった。姿勢が悪いため、首、肩、背中がグラップラーになりやすいらしい。社会に対して後ろめたい気持ちがある人間は兎角姿勢が悪くなりがちである。ポジティブになるため宗教をやろうと決意を新たにしつつ、整体は終わった。

 その足でオーダーメイドの枕を買いに行った。頭の形を計測して、それを元にして枕の中に入れる素材や枕の高さを変えるらしい。実際に寝てみて枕を微調節する。しっくりくるところを教えて、完成させていく。調節が終わり、枕カバーを買ってお会計になる。結構時間がかかると思っていたが、調整含め1時間もたたずに受け取ることができた。安いまくらよりは数段寝やすいが、3万円弱するため、よく考えてから買ったほうがいいかもしれない。3万円あったら牛丼を100杯弱食べることができるため、そういう生き方もありだと思う。正解はない。

 そしてその足で楽器屋に行った。私の趣味は短歌と小説とラーメン屋巡りだが、時々音楽に似たような何かを作ったりしている。Soundcloudにアップしている曲は音楽と呼んではいけないグロテスクな何かだが、パソコン内にはまともなものもある。今まで無料のソフトを使っていたが、もう少し楽に作業を行いたくなったので、ソフトとオーディオインターフェイスMIDIコントローラー、MIDIキーボードを購入した。今は試行錯誤しながら楽しく触っている。今はぐちゃぐちゃなものしか作れないが、「大体5年くらい続けているとまともなものができる」という個人的な持論があるので、気長にやっていこうと思う。Twitterも5年ほどたってから急にフォロワーが増えて人間性が消えたし、短歌は2年弱やって初めて選者に短歌を選んでもらい、ネットプリントに掲載された。曲作りはまだスタートラインである。趣味への気力があるうちに、何かしらで社会に出ていきたい。

 5年以上人生をやってきているのですが、まともに人間になっているのかはまだ分からない。

文学フリマに出る話など

 人生には気づきの瞬間があり、気付きの内容によって喜んだり絶望したりと、様々な反応をする。数十年生きてきて最近気づいたことは、同じ時間に起きるのが苦痛だということである。なぜ朝早く同じ時間に起きなければいけないのかと自問自答してしまう。まだ自問自答するだけなので、特に遅刻をしているわけではない。しかし、年を取った時に朝自問自答をせずに起きる自分を想像することができない。いつか起きるのをやめてしまいそうで、いや、いつの日か起きるのをやめてしまうだろう。

 いつか全てを投げ出してしまうのではという不安に対抗するために、何か行動を起こさないとという気持ちになった。新しい体験によって、全てを投げ出すXデーを先延ばしにするのだ。今までは精神に引きこもりすぎたので、そろそろ外側に出て存在を示していかないといけない(誰に対して?)。Twitterでいくらネタ的なことを呟いていても意味がないのだ。気が付くのに7年近くかかってしまった。みんな色々動いているというのに、自分には動きがなかった。その結果Twitter人間性が薄れていき、bot扱いされるに至った。botになるためにTwitterをやっているわけではない。

 そろそろ色んなところに出る必要がある。まず1つ目として、小説を外に出すことに決めた。今年の秋の文学フリマに参加することがほぼ確定した。お金を払ってしまうことにより、逃げられない状況を作った。友人と「学生」をテーマにした小説の合同誌を作ることが大体決まっている。最近は小説を書いていないが、今の自分に何が書けるのかを知るのとともに、今までブログにアップしてきた小説たちの第一次集大成を見せられればいいと思う。

 また、短歌集も出せればいいと考えている。去年あたりから本腰を入れて短歌について考えるようになっている。連作と今まで作ったものを入れた、音楽でいえばEPくらいの量の短歌集を想定している。

 合同誌、短歌集の両方に関しては、また時期が近付いたら詳しい情報が出せると思う。11月に僕と握手!

 量より質という考え方はあるが、創作関係は量を出す必要があると思う。とにかく他の人の目に入る量を増やす。瓦礫の山から一つでも自他ともに良いものができれば万々歳である。

 1年も5回の表が終わった。1月に考えた目標はすっかり忘れてしまった。細かく目標を決めると覚えられないという欠点も見えた。そこで2017年下半期目標を記しておく。

・小説、短歌を文学フリマに出す

・本を20冊読む

・選歌がある短歌投稿媒体に自分の短歌が載る

 3つにしておけば覚えられるだろう。着々と2017年は終わりに近づいている。終わるために始まらなければならないのだ。現実から抜け出して現実´に行くためには、ひたすら壁に頭をぶつけ続けるしかない。

2017年に買った(借りた)アルバム②

 2017年に買った(借りた)アルバム紹介の第2弾です。ネットの情報から新しいアーティストやアルバムを知る場合があるので、それらに対する還元的な意味合いと、今年はどれだけ借りたのかという備忘録的な意味合いがあります。ただ、それだけです。

 

石野卓球『Mix Up Vol. 1』 

MIX-UP(1)feat.DJ.タッキュー・イシノ

MIX-UP(1)feat.DJ.タッキュー・イシノ

 

  1995年発売。電気グルーヴの楽曲制作を受け持つ石野卓球によるDJミックス。1曲目のDUMDUM TV「D.D.T.Vμ-ZIQ INVADE」では面食らうが、基本的には踊れるタイプのミックス。

 

北園みなみ『lumiere』

lumiere

lumiere

 

 2015年発売。ポップス職人、北園みなみの2枚目のミニアルバム。3枚目のミニアルバムである「Never Let Me Go」は冬の匂い漂う名アルバムだったが、このアルバムは1曲目の「夕霧」以外個人的にはしっくりこなかった。 

www.youtube.com

 

Autechre『Move Of Ten』

Move Of Ten [日本先行発売!!・ボーナストラック付き国内盤] (BRE-31)

Move Of Ten [日本先行発売!!・ボーナストラック付き国内盤] (BRE-31)

 

  2010年発売。収録時間は53分ほどだがEP扱い。このEPの前に発売された『Oversteps』と比べると、のれる曲が多いと思う。しかし、Autechreなので素直にはのらせてくれない。

 

Coldcut『Sound Mirrors』

Sound Mirrors

Sound Mirrors

 

 2006年発売。日本ではガキの使いのオープニングが有名なColdcutが、前作から9年ぶりにリリースしたアルバム。私としては初Coldcutだったが、抱いていたイメージ(もっとカットアップを多用すると思っていた)と違い、あまりしっくりこなかった。歌ものが多い。

 

LCD SoundsystemLCD Soundsystem

Lcd Soundsystem (Dig)

Lcd Soundsystem (Dig)

 

  2005年発売。踊れるパンクロックが2枚組で入った、LCD Soundsystemの1stアルバム。4つ打ち主体のロックは最近では結構多いが、今でもカッコよさを保っている。

 

これで合計10枚になりました。

 

 

短歌(351~360)

 短歌を10首並べるコーナーです。

 

 最近は連作を作ってみようと考えている。タイトルだけはずっと使いたいものがあって、それは「地方都市EP」という名前である。テーマはおそらく地方都市である。今回の短歌には関係がない。また、今年の秋の文フリでは小説と短歌を配布するよていである。これも今回の短歌には関係がない。

 

【351~360】

葉桜かどうかは私が決めること今を今だと思わず進め

 

いつもいつも私を不幸にしてくれる君がちぎって分けてくれるパン

 

ノーロープ有刺鉄線恋心電流爆破超デスマッチ

 

あ、どうも。短歌の神の息子です。警備会社に勤務してます。

 

牛乳に相談なんてできるかよ世界は全て恋敵だぞ

 

友人は微笑む 顔を入れ替えるアプリで遺体になっている俺

 

番号札5番がよく似合っている 君の前世は5番なのだろう

 

神様とじゃんけんをして負けたので人間として生かされている

 

現実を長い時間直視すると失明するおそれがあります

 

ビー玉の中で美しく歪むペットボトルと食いかけと俺

 

 

 次回もよろしくお願いします。