コムギココメコ

備忘録と不備忘録を行ったり来たり

文学フリマ東京37に参加しました

 たまにインドカレーを食べたくなることがあり、年に数回インド料理の店に向かうことがある。どの店に行ってもチーズナンは美味しく、そして手で掴めないほど熱い。

 数年前まではそのうちの1回を東京流通センターで済ませていた。文学フリマ東京にカレー屋が出店していたからだ。バターチキンカレーを休憩スペースで食べていると、文学フリマとインドが混ざりあって、カレーを食べるのも文学なのかもしれないという気分になった。しかし、コロナウイルスの影響で飲食のブースが消え、今年春に復活したと思ったらまた消えていた。もう文学フリマ東京でインド感を味わうことはないのかもしれない。

 

 2023年11月11日(土)に行われた文学フリマ東京37に、メゾン文芸部というサークルで参加したので振り返っていきたい。

 

 今年も小説合同誌と短歌冊子を頒布することは早々に決まっていたが、入稿までは結構バタバタになってしまった。去年は比較的余裕があったので何が変わったのだろうと考えていると、1つ思い当たることがあった。去年は無職だったのだ。

 フルタイムで働いていると創作に時間と気力を割くことが難しくなる。仕事をしながら創作活動にリソースを今以上に割ける方法を考えているのだが、最終的に睡眠時間を確保することに着陸してしまう。創作活動に力を入れるため、能動的に何もできない睡眠時間を増やすというのはなんだか矛盾を感じる。

 

 たとえば 早く寝るだけで 心が強くなれること

 

 替え歌が頭の中で響き続けている。カールスモーキー石井の顔はあまり思い出せない。なので石井竜也の顔も同様に思い出せない。米米CLUBにはヴァイキングっぽいフォルムの人がいた気がするが、名前は分からない。

 

 当日はまず品川のキンコーズへ向かった。ここ数年は行きの電車でThe Chemical Brothersの『Dig Your Own Hole』を聴くことにしている。気合いが入るような気がするのだが、毎回寝不足からか途中で眠ってしまう。

 

 品川のキンコーズでお品書きなどを印刷し、時間が余ったのでドトールで休憩をしてから会場へ入る。

 会場では準備に手こずり、開場にギリギリ間に合わなかった。毎年設営をしているはずなのに、一向に上手くなる気配がない。放置しておいたゲームボーイのカセットのように、設営のたびにデータが失われているのかもしれない。

 開場してからは15時過ぎまでひたすら店番をする。時間帯によっては立ち止まるのが困難なほど通路に人があふれていて、来場者数が増えていることを座っているだけでも実感できた。同時にキャパシティという側面では、もっと大きな会場が必要になるのもなんとなく分かった。

 店番を交代し一通り買い物を済ませた後、近くにあるゆで太郎に向かった。本当は大井競馬場駅の近くにある商業施設でうどんをゆっくり食べようと思っていたが、駅を1つ越える気力が無かった。密度の高さは確実に体力を奪っていく。一緒に店番をしていた友人は羽田空港まで行ってうどんを食べたらしく、溢れんばかりに体力があるのか、それとも体力を忘れさせるほどうどんが食べたかったのかは分からなかった。

 基本的には冷たいそばが好きなのだが、その日は辻褄を合わせるように寒く、結局エビのかき揚げが入った温かいそばを注文した。期間限定らしい。

 着席してから10分弱でそばが出来上がり、別添になっていたかき揚げをそばの中に沈めていく。かき揚げはエビがたくさん入っていて、結構食べ応えがあった。しだいにふにゃふにゃになっていく衣が時間を視覚化する。

 近くでは店員と出入り業者の人が話をしていて、朝10時からひっきりなしにお客さんが来ていることが分かった。自分が入った時は15時を過ぎていて、その時はすぐに着席できたが、すぐ待ちが発生していた。本来15時は飲食にとってはアイドルタイムだと思うので、イベントが大きくなっていることが飲食店からも伝わってくる。

 その後ブースに戻り、最後まで店番をした。17時ちょうどに片付けを始め、20分ほどで会場を後にした。駅に向かう道は人でごった返していて、とてもじゃないがその塊の一部として加わっていく気になれない我々は、バスを使って流通センターを出発した。夜ご飯をサークルのメンバーと食べ、電車で一人になってからはDeerhunter『Halcyon Digest』を聴いていた。

 

 

 フラっとブースにやってきた方が小説合同誌を購入してくださったり、いつも作品をチェックしている方がブースで短歌冊子を購入してくださったりすると、作って良かったなという気持ちになる。また、新刊を買いに行った先で笹井賞に出した連作を直接評価いただく機会もあった。嬉しさと驚きがぶつかった結果、口から意味のある言葉があまり生まれなかったことは反省したい。

 広報宣伝の遅れや、短歌・小説の発表をほとんどしてこなかったことも影響したのか、売り上げは昨年より下がった。今年発表したは短歌連作は1つ、小説は断片が2つほどだった。側から見るとほとんど活動していないようなものだろう。もう少し発表の機会を増やしていきたい。つまり、今よりもたくさん眠りたい。

 来年の秋は会場が大きくなり、ブース数もおそらく増えると思われる。入場料が発生するため来場者がどう増減するのかは正直読めないが、ふらっと会場に来て、見本誌を読んでピンと来たものを買うようなパターンはこれからも減り続け、あらかじめチェックしたものを買いにいくパターンは増え続けるだろう。自分もここ数年は出店者側として参加していることもあり、事前にチェックしたものを買う形になっている。そういった変化の中でサークルとしても策を講じていく必要はありそうだ。

 現在のところは来年もブースを出店し、サークルとして何らかの新刊を出す予定である。今よりも面白いものを作っていければと思う。