コムギココメコ

備忘録と不備忘録を行ったり来たり

第27回文学フリマ東京に参加するまで、参加、参加して

 毎年1回もしくは2回、インド料理を食べる機会がある。なぜかというと、文学フリマ東京に参加しているからだ。

 

 11月25日(日)に、第27回文学フリマ東京が行われた。過去最多のサークルが出店したとのことだった。今回は、第27回文学フリマに参加するまで、参加している時、参加した後という流れでレポートを書いていきたい。

 

 話は去年秋に行われた第25回文学フリマ東京までさかのぼる。大学時代の友人たちと『メゾン文芸部』というサークルを作り、本を頒布した。初めてサークル側として参加し、本も無事出せたという達成感もあったが、準備不足を露呈し、課題も多く残った。来年もまた合同で小説本を作ろうという話になり、その日から第27回文学フリマが始まった。

 始まったのだが、半年ほどは特に何も起こらず、5月下旬ごろに出店料を払うことになった。出店料を払うと、途端にカウントダウンのスピードが速まったような気になった。

 そこから数か月は特に進展はなく、私は短歌を中心に細々と活動しつつ、資格試験の勉強をしていた。他のメンバーがどういった日々を送ったのかは詳しくは分からないが、まあ生活していたのだろう。

 夏が始まり、うだるような季節が一生続くのではと心配し、やがてその暑さも落ち着き、資格試験も落ち着いた10月中旬、ようやく小説本の話が進みだした。とりあえず進捗の話をしたが、完成している人はいなかった。進捗という言葉を発すると、途端にLINEには三点リーダーが増える、どういった相関関係があるのだろうか。

 私も10月に入ってから、小説について考え始めた。同時に頒布予定の短歌冊子については、今年作った連作がいくつかあるし、構成も大体思いついていた。しかし、小説に関してはあまり思いつかなかった。

 色々考えた末に、以前ブログに投稿した架空のバンド紹介が、中身としては中途半端なものになっていたため、大幅に増補していくことにした。架空のバンド紹介は小説と言えるのだろうか。皆さんもおうちに帰ったら、家族と架空のバンド紹介は小説にあたるかどうか話し合ってみましょう。

 1年近く小説を書いていなかったため、リハビリとして掌編小説を書いてみることにした。脳内のIKKOが叫ぶことによる主人公の苦労を描いた『私の頭の中のIKKO』というものである。以下にリンクを貼っておくので、夜ご飯を食べた後、次の行動に移すには少し休みたいなと感じた時に是非読んでほしい。丁度いい分量なので。

kakuyomu.jp

 11月に入り、焦燥感を全身に浴びながら小説を書き進めた。日程自体は苦しかったが、書いている時はとても楽しかった。IKKOの小説を書いている時も楽しかった。書いていて楽しいかどうかはかなり重要視していて、3分の1書いてみてあまり自分の中で面白くなかったらやめてしまうことが多い。

 短歌を同時並行で進めつつ、先に出来上がった人の小説の校正を行う。校正が得意な友人がいてかなり助かる。スケジュールのミスとして、貴重な締め切り直前の休日に、野球をやって用水路にボールを放り込んでしまうハプニングもあった。

 何とか小説の校正も終わり、組版を急いで済ませる。初めて参加した去年はゼロからのスタートだったため、昼過ぎに作業を初めて、何とか区切りがつくのが深夜の4時ごろという地獄みたいな時間を過ごす羽目になったが、今回は多少なりとも経験値があったため、毎日6時間睡眠を確保できた。設定した締め切りから大幅に遅れる人がいなかったことも功を奏した。去年は提出状況があまり芳しくなく、修羅になってしまい、修羅の状態でバスに乗ったりもした。心は穏やかなほうが良い。

 組版や表紙の作成が終わり、どうにかこうにか印刷会社にデータを入稿できた。入金も忘れずに行った。同人誌や個人冊子を作成する際に一番重要なポイントは、お金を払い忘れないことである。

 生活を繰り返していくうちに、3連休になった。

 1日目の金曜日は、渋谷の東急ハンズで必要物品を買い揃えるところから始まった。去年は何が必要かいまいち把握しておらず、使い勝手があまり良くないもので挑んでしまった。定期的に文学フリマにサークル参加をしようと考えている人は、使い勝手(持ち運びやすさと言い換えることもできる)が良いものを選んだほうが後々苦労せずに済むだろう。

 渋谷の東急ハンズは品ぞろえが豊富なのだが、同じ階にあっても高低差がやや激しい。ひーこらはーこら言いながら売り場を行き来して、物品を揃える。そういえば、レジの近くに応援うちわ(ライブなどで出てるアーティストやアイドルの名前が書いてあるうちわ)の例として、「斬って!」と言うものがあったが、死への欲求がカジュアルすぎてビックリしてしまった。

 物品を買いそろえた後は、いったん休憩しようという話になり、カフェに行くことを試みた。しかし、3連休の渋谷は人だかりというにはあまりにも人が多すぎた。多く、苦しく、狭く、そして大盛況過ぎた。それは正にごった煮だった。カフェと言うカフェが満席で、渋谷をひたすら歩いたが、なかなか座る場所が無かった。もうはなまるうどんでも良いのではいう話が出てきたが、コーヒーやジュースを飲もうとしている人間は、妥協してうどんを食べないのでカフェ探しを続行した。それでも見つからず、ファミレスならどうだと思って入ったサイゼリヤで、空席は発見された。サイゼリヤ最高、一番好きなサイです。

 かれこれ一時間近く彷徨い歩いていたらしく、体力の回復に予想以上の時間を費やした。なんとか落ち着いたので、ポスターをコピーするためにキンコーズに向かった。

 初めて利用したが、コピーやラミネートもできるし、パソコンの貸し出しも行っている。また、文房具も貸してくれるので結構使い勝手が良かった。途中でお腹を下してしまい、キンコーズ内にトイレが無かったためダッシュで通りを駆け抜けたこと以外は予定通り作業が進んだ。

 その後は当日売り子として参加してくれる友人の家に泊まった。

 

 2日目は起きると昼で、そのまま友人とつけ麺を食べに行った。前回大盛を食べたので今回も大盛を食べたが、結構厳しい戦いになってしまう。どのサイズを食べたかはぼんやり思い出せても、食べ終わった後どれくらいお腹がいっぱいだったかは思い出せなかったから、毎回同じような失敗を繰り返すという友人の主張は、的確だと思った。

 その後はお腹を落ち着かせるためにあえて遠回りして渋谷に向かい、ガルマン歌会の会場になっているカフェミヤマへ向かった。少し早く着いてしまったので、近くにある無印用品で時間を潰す。無印に売っていそうな商品がそのまま売っていた。

 時間になったのでカフェミヤマに入り、詠草を受け取る。今年はいくつかの歌会に参加させていただいたが、ガルマン歌会が一番緊張する。オレンジジュースを飲む手が震えていたり、胃が痛くなったりした。

 歌会が始まると、震えはおさまった。評がどんどん出てくる。自分も少し発言をしたのだが、なかなか上手いこと読めていない部分も多い。自分は特に詩的な飛躍や文字からは直接発せられていないものを読み取るのがまだ下手だと感じた。歌に関しては、結構情報や内容を詰め込みすぎてしまうきらいがあるのだが、今回もそこを指摘された。今後も考えていきたい。

 3時間ほどで歌会が終わり、懇親会が行われるベトナム料理店へと向かった。前回は電車の都合で20分ほどしかいられなかったが、今回は最後までいることができた。相変わらずじゃがいも料理は美味しかったし、パクチーはあまり得意ではないらしい。色々な短歌の話が聞けて面白かった。

 その後は宿泊先のホテルに行き、ひたすら通販番組を見た後、深夜3時前に眠りについた。基本的にビジネスホテルなどに泊まるときは、通販番組かウェザーニュースを見ていることが多い。特にウェザーニュースは聴き流せるBGMとしてかなり優秀だと思う。

 

 3日目、いよいよ文学フリマ当日である。前回は当日になって色々足りないものが判明したのでかなり焦っていたが、今回は事前準備をしっかり行っていたため、特に慌てることもなかった。10時に入場し、時間内に準備を終わらせることができた。ブースレイアウトも去年より向上していた。一つ心残りがあるとすれば、キャッチコピーとあらすじが書かれた紙をリングなどでまとめて、手に取りやすい形で置けばよかったなと感じた。

 最初の1時間ほどは店番をしていたが、その後はちょくちょく欲しい本を買いにいった。基本的には短歌の本を多く購入した。

 短歌関連で言えば、私は7月あたりに石井僚一短歌賞に15首連作を応募していて、それの結果が本でまとめられていた。私は1次選考を通過していたため、名前とタイトルだけは最初のページに載っていた。最初は「おおっ!」となったが、時間の経過とともに悔しさが増してきて、時系列としては飛ぶが、帰りの新幹線の中でずっと悔しさが渦巻いていた。

 時系列を元に戻す。時系列を元に戻すというだけで元に戻るのだから、文章はある程度まで都合良く動いてくれる。時々小説や短歌冊子が売れるのを眺めながら、友人ととりとめのない話をしていた。

 13時頃に人員が増えたため、昼ご飯を食べることにした。バターチキンカレーとタピオカドリンク(チャイ)を購入し、休憩スペースで食べた。バターチキンカレーを食べると「インドだなー」としみじみ思うが、私は1回もインドに行ったことが無いため、感じているのは架空のインドである。このくだり、毎回やっている気がする。

 午後になると、大体お目当ての冊子や本も買い終わり、ひたすらとりとめのない会話をしていた。あるいは5文字以上の単語縛りでしりとりをした。私はしりとりが強いので5文字以上のしりとりで勝つコツを教えます。人名を使うことです。

 ぽつぽつと私たちのサークルの本を購入してくれる方がいて、かなりありがたさを感じた。私が不在の時に、そこそこの時間悩んで、購入してくれた方がいたらしい。「普段どんな小説を書いているんですか?」と聞かれたらしいが、最初にかけ算とアルバムレビューを組み合わせた小説(?)が入っているため、そう聞かれてしまうのも無理はないと思う。私は去年、遺灰を投げる大会に打ち込んでいく男の話を書きました。

 あっと言う間に午後は過ぎていき、少し早めに後片付けをして私たちの文学フリマは終了した。その後は当日参加したメンバーで中華料理を食べに行った。私はゴマ団子を見つけるとハチャメチャに食べる習性があるのだが、それが原因で以前お腹を崩壊させてしまったので今回は抑えめにした。学習能力がある。

 その後は今後の話をして、新潟へ戻った。かなり疲れていたのと、様々な思考が渦巻いていたため、電車を乗り間違えてしまい、もう少しで詰む(地方は都会より終電で詰むとどうにもならない)ところだった。

 

 今回会場で売れた冊数は、小説が6冊、短歌(新刊)が7冊、短歌(既刊)が3冊だった。小説は伸長したが、短歌は販売冊数が下がってしまった。外に放流してこそ冊子なので、少し悔しい結果である。小説は半年以上書いていなかったし、短歌もあまり外に出す機会が無かった。出さなければ気づかれない。生活も落ち着いてきたので、少しずつ外に出す量を増やしていきたい。

 それ以上に悔しかったのが石井僚一短歌賞で、寺井龍哉さんに私の連作を8位にしていただいたが、選考会で連作が話題に挙がるためにはあと順位を3つ上げる必要があったし、5番は1番ではない。短歌に勝ち負けや順位という概念はあまり似合わないのかもしれないが、私は町一番の負けず嫌いなので、悔しいものは悔しい。M-1グランプリ後の反省会で、ゆにばーすの川瀬名人が「自分を殺したい」と発言していて、なぜだかこっちが泣きそうになってしまったのだが、それと同系統の感情として、後で見返しても満足いくものを作れていない自分に腹が立ってくる。

 そう思うと、色々創作意欲は湧いてくる。やってみたいことはたくさんあるし、倒すべき自分はたくさんいる。沢山良い冊子を買ったし、それらを少しずつ読みながら、少しずつ短歌や小説を作っていければと思う。

 

 来年の秋も文学フリマ東京に参加予定である。来年はどんな冊子を出しているのだろうか。

 

 今年はこんな冊子を出しました。

合同小説集『メゾンの闇鍋』

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『伝説のバンド、Multiplication Table』という小説(?)を書きました。かけ算九九が登場する音楽レビューです。

 

短歌冊子『だけの日だった』

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 短歌、レポート、写真が載っています。

 

 よろしくお願いいたします。