コムギココメコ

備忘録と不備忘録を行ったり来たり

読書感想文その3

 お元気ですか?

 

 九月に読んだ本に関する感想をブログで書いた。その後も、何冊か本を読んでいる。しかし、あまり時間が空きすぎると、内容に水がどんどん入り、薄まってしまった。記憶の賞味期限は割と短いので、やはり読んで早い段階に感想をどんどん書いていく方が良いものが書けるのではないかと思い、十月は終わっていないが、感想を書いていく事にする。

 

土屋賢二『ツチヤ教授の哲学講義』(岩波書店)

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 何とも難しいイメージのある哲学を、講義形式のこの本は、哲学初心者が挫折しないよう、優しい語り口で書かれている。プラトンアリストテレスデカルトなどの有名な哲学者の考え方も分かりやすく書かれている。また、そういった有名な哲学者の考えを丸飲みにせず、批判的に考えている。例えもふんだんに使われていて、似非入門書のはびこる世の中、初心者に寄り添っている。私も挫折せず読むことができた。

 一つ言うならば、後半のヴィトゲンシュタインの考え方が出てくる部分で、批判的な見方がかなり少なくなってしまったところは残念に感じた。せっかく既存の考えに批判的なのだから、最後まで批判的な見方を貫くべきではないかと感じた。まあ、著者自身も「自分の考えに賛同しなくても良い」と言っているし、私が述べているこの感想も、単なる一意見である。

 「哲学に興味はあるけど、難しそうで……」という人は一読の価値ありだと思う。

 

夏目漱石『こころ』(新潮文庫)

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 高校の国語の教科書常連の『こころ』。教科書で読んだ部分は「先生と遺書」の後半で、クライマックスに近い部分だけをかじったようなものである。最近、『こころ』に触れる機会があったので、改めて読んでみた。

 全体は「先生と私」、「両親と私」、「先生と遺書」で分かれている。やはり、「先生と遺書」の部分が一番、物語の引き込み力が強いと感じた。「先生と私」から「両親と私」の終盤までは割と地味な展開が続くが、さすが文豪と呼ばれるだけあって、ぐいぐいと読ませてくれる。特に、「私」の両親に対しては、「私」と同じように苛立ちをついつい覚えてしまった。気になるところは、遺書が長すぎて、服の下に忍び込ませるのは苦労するだろうなという点くらいである。

 『こころ』は高校で一部分読んだだけで、全部読んだ人は少ないという話を聞いたことがある。名作中の名作なので、是非読んでみてはいかがだろうか。

 

 本を読んでいると、文章を書きたくなる。書いてみて、自分の文章の下手さに辟易することは数知れないが、それでも本を読んでいると文章を書きたくなる。十月まであと十日ほどある。出来る限り時間を作って本を読んでいきたいものである。