コムギココメコ

備忘録と不備忘録を行ったり来たり

読書感想文その7

 読書感想文をブログに書いていたが、年の瀬ですっかりご無沙汰になっていた。記録として残しておきたいので、再び書くことにする。取りあえず11月に読んだ2冊の本の感想を書いていく。

 

舞城王太郎煙か土か食い物

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 去年読んだ『好き好き大好き超愛してる。』で衝撃を受け、とりあえず最寄りの図書館で読めそうな舞城作品を読んでみようと思い、借りたのがこの『煙か土か食い物』である。
 この作品は2001年に第19回メフィスト賞を受賞し、そのまま出版された。商業的な作品としては処女作である。
 読んでまず思うのが、文体が独特だという事である。良くスピード感ある文体と評されているのを見かけるが、改行や読点が少ない。しかしこの文体は、主人公の感情がでる場面や、終盤物語が目まぐるしく動いていく場面では盛り上げ役として存分に生かされる。
 内容は家族+ミステリーである。家族といってもアットホームあったかのんびりというものではなく、文字通り血みどろの家族である。暴力描写は沢山あり、汚い言葉も容赦なく飛び交う。そして父親もその子供である4人兄弟も現実離れしているほどの性格と行動力だ。リアルさを求める人は序盤で投げ出してしまうかもしれない。
 それでも終盤の怒涛の展開は読んでいる手が止まらなくなる。文章の波状攻撃が続く。とにかく勢いのある小説である。
 上でも言っているが、暴力描写が多いので、そういう類が苦手な人は注意したほうがいいかもしれない。

 

筒井康隆『やつあたり文化論』

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 タイトル通り。作者が様々な文化、流行、出来事に半ば八つ当たり的に文章を書いていくエッセイである。
 まず初めに言っておくと、この本は1979年に出版されたものなので、内容は古い。私は1979年、まだこの世にいないので、いまいちピンとこないところもちらほらあった。まあ、当時あったことを(主観ではあるが)書いてくれているので、文化史としての見方もできなくもなくもなくもない。
 しかし、エッセイの鋭さ、痛快さは古くならない。この本が発行されてから40年弱経った今でも、頷ける意見も沢山ある。マスコミの話に関しては、個人的にも「その頃からあんまりマスコミの状況は変わっていないんだなあ」と妙にしみじみしてしまったし、差別語の話は、納得納得大納得であった。
 しかしまあ、筒井康隆のエッセイは読んでいて面白い。悪口が陰湿にならない所が良い。ここまで爽快な悪口はなかなか見られない。悪口を言いたい人々が目指すべき姿こそ、この本にあるのではないだろうし、筒井康隆くらいの気概をもってほしい。中途半端が一番よくないのだ。

 

 最近直接的な言葉を言えば罵倒になると思っている人が多すぎる気がする。罵倒をするならするで、ただ適当に汚い言葉を使えばいいだろうなんて誰でもできることはしないほうがいいだろう。埋もれてしまう。美しい言葉で罵倒する(汚い言葉に丁寧を付けただけなど、付け焼刃的な発想は違うぞ)など、工夫が垣間見れる罵倒を考えてみてはどうだろうか。