コムギココメコ

備忘録と不備忘録を行ったり来たり

被害者はスペシャルサンドのようなもので殴られ、

 時々菓子パンが食べたくなる。

 普段パンを食べるときは、近所のスーパーの中に入っているパン屋まで買いに行く。市販の菓子パンより若干割高ではあるが、塩パンとカレーパンが美味しいからだ。

 予測変換で「市販の菓子パン」を出そうとしたら、「師範の菓子パン」になってしまった。菓子パンの中にも模範的な存在はあるのだろうか。

 私の中で師範の菓子パン的市販の菓子パンは、、フジパンから出ているピザパンと、ヤマザキから出ているスペシャルサンドだ。この2つがスーパーの品ぞろえにあった場合、購入率はグンとあがる。

 ピザパンは、チーズとマヨネーズと玉ねぎで構成されている。ピザと言うには具が心もとない気もするが、ちゃんと美味しい。ピザにはよくサラミやコーン、ピーマンがのっていることが多いが、私はピーマンが苦手である。何で苦いのかがわからない。粉薬の擬野菜化ではないだろうか。具だくさんになるほど苦手な物が乗る可能性が高いため、これくらい具が少ないほうが安心して食べられるのだ。

 味もさることながら、量もそこそこあるので、満足度も高い。総菜パン界は「まるごとソーセージ」「大きなハム&たまご」などパワーヒッターが多く存在するが、ピザパンも負けてはいない。師範の菓子パンと言えるだろう。

 スペシャルサンドは最初食わず無関心をしていた。スペシャルサンドって大層な名前を貰っておきながら、見た目はただのコッペパンだ。期待外れになると思って他のパンを買っていた。

 しかし、ある時母親がスペシャルサンドを買ってきた。期待せずに食べてみると、美味しい。クリームとあんずジャムが入っていて甘酸っぱいし、真ん中は丸いゼリーが鎮座している。ゼリーの正体は分からないが、スペシャル感が出ている。確かにこれはスペシャルサンドだ。疑って申し訳なかった。

 他の菓子パンを開拓するときもあるが、結局ピザパンとスペシャルサンドに戻ってくる。味で冒険したくないときは重宝する。師範の菓子パンは安定感が大事なのだ。

 この間もスペシャルサンドをスーパーで購入した。夕飯を作る前だったため、冷蔵庫に入れておいた。

 2日後の昼、お腹が減って起きた。そういえば冷蔵庫にスペシャルサンドがあると思い出し、取り出した。

 なぜかカチカチになっていた。そういえば私の家の冷蔵庫は、1番上の段の奥だけ冷えやすく、食べ物を入れると凍ってしまうことがあったのだ。何も考えずにスペシャルサンドを1番上の段の奥に入れた結果、凍ってしまったのだ。

 持つだけで分かる固さ。とりあえず机に向かって振り下ろしてみる。ガンという鈍い音が出る。試しにスペシャルサンドで頭を殴ってみる。そこそこ痛い。食べ物で人の頭を殴ったのは、中学生の時に、美術の授業で使ったキュウリ以来だ。スペシャルサンドは凶器にもなるらしい。事件の凶器として時々出てくる、鈍器のようなものの2%はスペシャルサンドを凍らせたものではないだろうか。ナイススティックでも十分凶器になりそうだ。

 凍ったスペシャルサンドは凶器としては使えるかもしれないが、食べ物としては適していない。扇風機の風をあててとけるのを待つ。1時間経過したところで手に取ってみるが、まだ固い。結局スーパーに行き、ピザパンを買って食べてしまった。これからはスペシャルサンドを冷蔵庫の1番上の段の奥に入れるのはやめよう。欲しいのはほどよく冷えておいしいスペシャルサンドであって、凶器ではないのだ。