コムギココメコ

備忘録と不備忘録を行ったり来たり

ネットプリント毎月歌壇との闘いが終わって

 短歌を発信する手段として、投稿というものがある。例えば新聞内の短歌欄などが代表的なものだ。選者が自分の短歌を選んでくれると、新聞にそれが掲載されるのだ。沢山刷られている新聞の中に、自分の名前と短歌が載れば嬉しく思うだろう。私は1回だけ送って、選ばれなかったのでその喜びをまだ味わったことがない。

 他にも様々な短歌投稿欄がある。野性時代という小説誌の中にも『野性歌壇』というコーナーがあるし、ネットにも『粘菌歌会』という投稿コーナーがある。私が知らないだけで、他にもたくさんの投稿欄があるのだろう。私たちは様々な投稿欄に短歌を送ることができる。掲載されるかどうかは分からないが。

 

 その中の1つとして、『ネットプリント毎月歌壇』があった。石井僚一さん(穏やかに生活を送れているだろうか)が運営を行い、2人の選者が毎月4つの歌を選び、約400字の評を書いてくださる。毎月末が締め切りで、自由詠を1首メールにて提出する形だった。ここ1年ほどは、伊舎堂仁さんと竹中優子さんが選者をしていた。

 残念ながら3月に『ネットプリント毎月歌壇』は終了となった。私は約1年以上ここを中心に投稿をしていたので、いきなり野に放り出されて、今はどの投稿欄に行こうか彷徨っているところである。

 2015年の秋頃に短歌を作り始めて、2017年の春過ぎに『ネットプリント毎月歌壇』の存在を知った。2017年の6月に試しに短歌を投稿してみたら、いきなり採用していただいた。私の短歌に評がついている。その時の私はインターネットに向かって短歌を投げているだけだったので、初めて評をしてもらうという経験をした。とても嬉しくなり、それから何度か投稿し、いくつか採用してもらった。その後、出す月と出さない月を繰り返しながら2018年の春になり、選者が入れ替えになった(それまでは石井僚一さんと竹中優子さんだったが、石井さんが抜け、伊舎堂さんが選者になった)。

 私は伊舎堂さんの歌集『トントングラム』で「短歌ってこんな面白いことができるんだ」となり、短歌にハマっていくきっかけの1つになった。どうにか評を貰ってみたいと思い、毎月欠かさず投稿するようになった。また、2017年は3回掲載していただいたので、2018年は『4回以上掲載される』という目標を立てた。

 私は負けず嫌いなので、どうしても投稿したコーナーには自分の短歌が載っていてほしいと思っている。よく載っている方が掲載されていて、自分が掲載されていないと正直言って悔しい。その歌が自分の出したものより良く感じるのも殊更悔しい。そのために自分が生活をしているときにグッときた瞬間を、いかに取りこぼさないで短歌にできるかを今まで以上に考えるようになった。毎月歌壇が短歌のモチベーションアップに繋がっていたと思う。

 結果として2018年は5回掲載していただいた。時々お二人とも選んでくださったときがあり、お二人の歌の読みや視点の違いも興味深く読ませていただいた。自分も歌会で評をする機会があるが、まだまだ評をする歌の良さを伝えきれないことも多々あり、評をする歌に申し訳ないと思ってしまう。

 2019年は『6回以上掲載される』ことを目標にしたが、実際には1年間全部掲載されるくらいの意気込みで臨んだ。毎月第三週の日曜にネプリを印刷して、紙面を見るときは異様に緊張した。

 結果、3月で終了となった2019年は3回中3回掲載していただいた。最終号のネプリを見た時に、私は掲載されたという喜びと、もうこの緊張感を得られない残念さの両方を味わった。

 『ネットプリント毎月歌壇』が終了して最初はショックだったが、結局短歌にはハマりっぱなしなので、これからも自分がこれだという短歌を作れるまで作っていくことになるのだと思う。歌会で点が入らなかったり、投稿欄で掲載されなかったりするとかなり悔しい。あまりそういうところばかり気にしていても良くはないと思うのだが、そういった悔しさが推進力となっているところもあるので、負けず嫌いとはこれからも気長に付き合っていこうと思う。

 

 こういうハマることができる投稿欄を作ってくださった石井僚一さん、最終回まで選者をしてくださった伊舎堂仁さん、竹中優子さん、そして私がこのネプリを知る前に選者をしてくださっていた方々、私に刺激と悔しさを与えてくれた他の投稿者の皆さんに、一投稿者としてこの場を借りて御礼申し上げたい。間違いなく、私が短歌を続けていくキッカケを作ってくださったのだから。

 

 最後に毎月歌壇に掲載していただいた私の短歌を載せてこの文章を終わりにしたいと思う。2017年7月から2019年3月までの短歌が載っているので、何か変化しているところがあるかもしれないし、ないのかもしれない。

 

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【横書き版】

喋るとき出る「あ」が丁度一〇〇〇回目俺の頭上で鳴れファンファーレ
(2017年7月号)

 

君に合う学部を作りつやつやの単位を飽きるまで渡したい
(2017年9月号)

 

とくと見よ最低賃金で働く俺のお辞儀の集大成を
(2017年10月号)

 

完璧なノックのために握ってたヒヨコを役員室へと放つ
(2018年5月号)

 

壇蜜は宝石型の飴玉を舐めてるらしい だけの日だった
(2018年6月号)

 

図書館を出たあとみんななまぬるい なまぬるいのを笑える人だ
(2018年9月号)

 

それなりの感謝に似合うものとしてカントリーマアムの赤いほう
(2018年10月号)

 

生活にサンタが入りこむ頃の息の白さは少し足りない
(2018年12月号・年末特大号)

 

帰ってもおもしろい日を繰り返しクリアファイルは返しそこねる
(2019年1月号)

 

ありがとうと小さく書けばネコっぽい生き物を描くべき空白が
(2019年2月号)

 

分かりたいボードゲームが全員の深夜を使い切らせてしまう
(2019年3月号・最終号)