コムギココメコ

備忘録と不備忘録を行ったり来たり

好きなアルバム紹介その7『ISAM』

 音楽を漁っていると、時々とてつもない衝撃を受け、ヘビーローテーションしたくなるアルバムを掘り当てることがある。衝撃の原因は、自分が聴いたことのある音楽のデータベースに該当しないもので、なおかつ好みにぴったり合うアルバムがいきなり追加されたためである。つくづく音楽は果てしないものだと感じる。飽きっぽい私としては、様々なアーティストのアルバムを掘り続け、データベースにない音楽を日々探すことになる。

 今回は、最近聴いたアルバムの中で1番衝撃を受けたものを紹介する。そのアルバムがAmon Tobin(アモン・トビン)の『ISAM』である。「ISAM」は「アイサム」と呼ぶらしい。

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 まず、アーティストについてざっくり紹介しておこう。Amon Tobinはブラジル出身のアーティストで、Ninja Tuneという、クラブミュージックを中心としたレーベルに所属している。Ninja(忍者)と書いてあるので、日本のレーベル、もしくは日本のアーティストが多く所属していると思いそうになるが、イギリスのレーベルだし、所属する日本のアーティストは少ない。

 アーティストの特徴が語れるほど、多くのアルバムを聴いているわけではないので、少しだけ触れることにする。このアーティストの最近の傾向として、フィールドレコーディング(野外録音)を用いたアルバムをリリースしているらしい。このアルバムもフィールドレコーディングが用いられている。

 次にアルバムのジャケットに大写しになっている昆虫について説明する。このジャケットはTessa Farmer(テッサ・ファーマー)という人物が手がけている。死んだ昆虫たちが空を飛ぶようなジャケットからは、奇妙な躍動感が感じられる。躍動感というと生命が輝いているようなイメージだが、このジャケットからは生の躍動感は感じられない。死の躍動感と言えばいいのだろうか。

 死んだものも芸術作品になるのは興味深い。世界には確か死体写真の展覧会や死んだ猫がラジコンになった作品などが存在すると耳にしている。そのうち死んだ人間がドローンに改造されて、大空を飛ぶ未来もありうるかもしれない。鳥でなくても飛ぶことはできるのだ。

 アルバムについて解説する。先ほどNinja Tuneというレーベルは、クラブミュージックを中心としていると述べた。しかし、このアルバムでは踊ることは難しいだろう。リズムはバラバラ、更に言うと消し飛んでいる場面も存在する。どちらかと言えば、脳を揺さぶるタイプのアルバムだ。

 まず、音楽の振り幅が大きい。脳を音で蹂躙するようなM-02やM-03、不安定な可愛さを持ち合わせたM-06やM-09、どちらも兼ね備えたM-10など、様々なタイプの曲が収録されている。バラバラな曲の共通点と言えるものは、音の密度の濃さだろう。音が脳内に張り巡らされていくような錯覚を覚える。ちなみに、フィールドレコーディングをしているから、野外の音がそのまま聞こえるだろうと思うかもしれないが、加工されているため一聴しただけでは分かりにくい。

 また、音が立体的に聴こえるのも特徴の1つかもしれない。様々な音が密度濃く使われていて、左から右から聴こえてくるためだろう。立体的な音楽を生かして、ライブではプロジェクトマッピングが使われている。1回見てみるといいだろう。圧倒されること請け合いである。

 音に打ちのめされる経験をしてみたいという方には、このアルバムがオススメだ。再生した途端に、様々な形をした音の集団が脳を支配せよとばかりに乗り込んでくるだろう。

 

【トラックリスト】

M-01 Journeyman
M-02 Piece Of Paper
M-03 Goto 10
M-04 Surge
M-05 Lost & Found
M-06 Wooden Toy
M-07 Mass & Spring
M-08 Calculate
M-09 Kitty Cat
M-10 Bedtime Stories
M-11 Night Swim
M-12 Dropped From The Sky
M-13 Morning Ms Candis (Bonus Track)

 

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