コムギココメコ

備忘録と不備忘録を行ったり来たり

【2018年に購入/レンタルしたアルバム】 !!!『Shake The Shudder』

 アルバム紹介の時間です。

 今まで5枚いっぺんにアルバムを紹介していましたが、どのアルバムを紹介しているのか分かりづらいため、1枚1記事にします。1枚につき500~1000字程度書いていければいいと思います。長すぎず短すぎない量だと感じていますが、ことわざに『帯に短したすきに長し』というものもあります。人それぞれです。

 それではやっていきます。

 

!!!『Shake The Shudder』

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  2017年リリース。!!!と書いて「chk chk chk(チック・チック・チック)」と読む。

 余談だが、道に落としたipodが警察に届けられたとき、本人確認のためか「中にどんなアーティストが入っていますか?」と聞かれたことがあって、このバンドの名前を答えたらすぐに本人判定をされた。

 アルバムについて話を戻していく。黒を基調にしたジャケットだが、暑苦しさを感じる。曲もジャケットと同じようなイメージである。

 !!!は野蛮に踊れるバンドという認識があったのだが、4thアルバムの『Strange Weather, Isn't It? 』から徐々に洗練されていって、それに伴い自分の範囲から逸れていった。今回のアルバムもリリース時は買うのを保留したが、Youtubeにアップされている曲を聴いたら割とよかったため、購入した。

 このアルバムも、初期のものに比べると洗練されているには違いないと思うが、「踊れる」という部分は失われていない。上半身はビシッと決めているけれど、下半身は短パンでノリノリみたいな感じだ。

 一番ハマった曲は4曲目の『NRGQ』で、みなさんにも是非聴いてもらいたい。小気味良いカッティングとずっしりとしたベース、ドラムに、パワフルな声が揃うと、こんなにもノれる曲になるのかという、一見当たり前の事実に驚かされる。他の曲も、基本4つ打ちだが聴いてて単調さを覚えなかった。

 野蛮さは年々抑えめになっても、カッコよさは抑えめにならないことを示してくれる良いアルバムである。

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第二十六回文学フリマ東京に行ってきました

 先日行われた文学フリマについて書こうと思う。

 

 5月6日(日)に東京流通センターにて、第二十六回文学フリマ東京が行われた。私は前回と同様、出店者側として参加してきた。前回は『メゾン文芸部』という、大学時代の友人たちで構成されるサークルでの出店だったが、今回は普段参加させていただいている『空き瓶歌会』という、普段歌会を行っている人々の中に混じっての出店だった。

 前回は短歌と小説の冊子をそれぞれ1つずつ頒布したが、今回は短歌の冊子のみを個人としては頒布した。

 本当はフリーペーパーを出そうかなと考えていたのだが、発作的に冊子が作りたくなったため、3日間という突貫工事で冊子を完成させた。名前は『Vapor?』である。

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 普段私のTwitterやブログを見てくださっている方はご存知かもしれないが、私はVaporwaveというジャンルの音楽をよく聴いている。Vaporwaveをモチーフにした連作を1つ作ったため、そのタイトルをそのまま冊子のタイトルにした。また、友人が撮った写真が個人的にかなりグッときたため、それをグリッチ加工ができるサイトで加工したものを表紙にした。個人的にかなり気に入っている。ちなみに裏表紙は飛行機に乗ったときの写真をグリッチ加工したものだ。

 突貫工事の関係上、20首しか入れることができなかった。もう少し新作を入れられると良かったのだが。

 印刷所にデータを送った後はもうどうすることもできないので、ひたすら誤字脱字が無いことや表紙が思い通りに印刷されていることを祈った。

 

 そうこうしているうちにゴールデンウィークが始まった。ゴールデンウィークの前半、私はボウリングや野球をして過ごした。そのため、後半は筋肉がバキバキすぎて上履きになった。

 ゴールデンウィーク後半は石井僚一さんの『死ぬほど好きだから死なねーよ』批評会にも参加した。参加時の様子は以前書いたため、よろしければそちらをご覧いただければと思う。

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 批評会に行った後、そういえばポップを作っていないと思い、慌てて作ろうとしたが眠気に負けてしまったのと、必要以上に通販番組を見てしまったことが祟り、そのまま朝になった。

 

 なんとか目覚め、体を起こし、準備をして電車に乗った。サークル入場が開始する数分前になんとか会場に着き、行列に加わろうとする。意外に列が少なく安心した矢先、建物の角にも列が続いていることに気づき、動揺する。と同時に、沢山の人が文学をやっていて、それぞれにそれぞれの文学があるのだなとも思った。

 10時を少し過ぎたあたりでサークル入場が始まる。チケットを箱に入れ、カタログを貰って自分のサークルの場所を目指す。地図を見ていたため、迷わずに済んだ。

 数分して空き瓶歌会のメンバーである香村かなさんと有村桔梗さんが現れる。私は段ボールに入った自分の冊子をチェックする。自分の思い通りの仕上がりになっていて、安心する。

 準備を終え、ついに一般の方々が入場してくる。入場のアナウンスとともに拍手が起こる。この拍手を聞くと、これから文学フリマが始まるなという気持ちになる。これは私の始まる感なので、皆さんは思い思いのところで始まる感を覚えてくれればいいと思う。

 続々と人が会場に入ってくる。私には前回は短歌の冊子が9冊売れたので、今回は2ケタにのりたいという目標があった。前回もそうだが、1冊目が売れるまでがかなり緊張する。1冊も売れないのではないか、という思いはどうしてもかき消せないからだ。

 人の流れをしばらくは不安げに見ていたのだが、入場から10分あたりで1冊目が売れる。全力で安堵する。その後もぼちぼちと売れる。

 Twitterで交流のある方とも話すことができた。はしごさんという方がいて、その人が作った『父と子と精霊の御名を忘れてくコミュニケーションさよなら帝国』という歌が、私が短歌に興味を持ち始めるきっかけになった。こうして冊子を売っているのもはしごさんの存在があるからだと思う。はしごさんは今回、既刊の小説を頒布していたのだが、そのタイトルが私の紹介したアルバム『群馬ハイヌーン』から取られたと聞いて、驚きがあった。群馬ハイヌーンについては以前紹介しているので皆さんも読んで是非ダウンロードしていただきたい。寝る前に流すのに滅茶苦茶良いアルバムです。

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 また、前回私の短歌冊子を購入してくれた、かみしのさんとも話をすることができた。かみしのさんはつよい短歌を作っている人で、最近はツイートがバズったりしていた。

【私信】かみしのさんすみません、まだ『永遠ごっこ』読めていません。読み終わりましたら感想を書きたいと思います。

 

 前回より良いペースで冊子が売れ、午前中には前回の9冊を超えた。目標を午前中で忘れることができて良かった。

 売り子をしながら、時間を見計らって目星をつけていたものを買いに行く。胎動短歌会のブースで冊子を購入しようとしていたところ、ブースの売り子の方に、「隣にいる人、木下龍也さんですよ」と言われ、右を向いたら木下龍也さんで、ヒエーになってしまった。短歌が範囲外になっている方にはすごさが分かりづらいかもしれない。あなたが好きなジャンルの、一般で流通している作品を全部購入するくらい好きな方が、目の前にいると思ってくれれば想像しやすくなるかもしれない。こういう時どのような行動をとるのが正しいのかわからなかったため、とりあえず握手をしてもらった。

 その他のブースでも、気になった者はどんどん購入していった。行動範囲が狭かったせいか、ほとんど短歌系の冊子や本になった。次回は別ジャンルも見に行きたい。売り子に戻ると、前回も差し入れをくださった方が今回もいらっしゃて、差し入れを頂いた。Twitterのアカウント名をお伺いしておけば、直接感謝を伝えることができるのですが、分からないためこの場を借りてお礼を申し上げたいと思います。見てくれていると良いのですが。

 また、桔梗さんの歌集はかなり売れ行きがよく、ファンの方がサインを申し出る一幕もあった。皆さんはサインをするとき何を書きたいですか? 私は「こんにちは!」です。

 その後再び売り子をしながら、時間の空いた時にインドカレーの出張販売の店に昼ご飯を買いに行った。前回はバターチキンカレーを食べたので、今回はナッツの入ったナンとジャンボチキン串、タピオカの入ったチャイを買った。ジャンボチキン串は食べ応えがあって美味しかった。ナッツの入ったナンは、食べた瞬間に私の食べ物というフォルダの中に新しいファイルが作成された。タピオカ入りチャイはスパイスが効いていた。インドを舌で感じていたが、私はインドに一回も行ったことが無いため、感じたのは架空のインド感である。

 その後、木下龍也さんが空き瓶歌会のブース近くを偶然通りかかったので、たまたま持っていた『きみを嫌いな奴はクズだよ』にサインをお願いした。了承してもらえたので、サインペンを取り出そうとしたが、動揺してサインペンを探す才能を無くしてしまった。かなり焦ったが、なんとか売り子をしていた桔梗さんにサインペン貸してもらったため、事なきを得た。また、歌集になぜか他人の名刺が挟まっていた。なぜだ。

 その後、売り子をしながら立ったり座ったりお金を受け取ったり冊子を渡したり言葉を発したりしていると、16時半になっていた。段ボールに残った冊子や買った冊子を入れて、受付に持っていき、17時前に片づけをした。こうして今回の文フリが終了した。

 

 今回は15冊をその場で売ることができた。前回は9冊なので少し増えた。また、通販なので購入してくれた方もいたり、友人も購入してくれた(まだ発送できず、申し訳ない)ため、当初の予定よりは早く在庫が減っている。

 今回、私の作った冊子はかなりページ数が短く、短歌の収録数も20首しかないため、立ち読みで全容が明らかになってしまうことに気づいた。そこに良い短歌が入っていれば、あらためて読み返してくれるかもしれないが、良いと思う歌が入っていなければおしまいである。次回はもう少し、ボリュームを増やしつつ、連作のクオリティを上げていきたい。

 文学フリマは、作者の最新作を購入できる場所である。その人がここ最近どんなものに興味関心があり、それがどのように作品へ反映されているのかを知ることができる。こういった場は文学系なら文学フリマ、漫画やイラストならコミケコミティアなどの同人誌即売会でないとなかなか触れ合う機会がない。また、読者と作者、作者と別の作者、読者と別の読者が交流できる場も同人誌即売会ならではの利点だと思う。こういった場があることに感謝しながら、良い作品が作れるように努めていきたい。

 

【宣伝】

BOOTHにて、文学フリマで頒布した短歌冊子『Vapor?』を販売しています。値段は200円+送料180円で計380円となっています。よろしくお願いいたします。

komugikokomeko.booth.pm

 

【予告】

第27回文学フリマ東京で、『メゾン文芸部』として出店を予定しています。小説と短歌の冊子を頒布予定です。よろしくお願いいたします。

 

 

2018年に購入/レンタルしたアルバム紹介④

 もう5月ですね。

 今年購入した/レンタルしたアルバム紹介の第4弾です。購入した数と紹介するスピードが全然追い付いていない。時速4kmで紹介していく私は、時速10kmで購入する私に追いつけないのではないか。周回遅れになるのではないか。算数の文章題みたいだ。

 

 では、紹介していきます(前回まで5つのアルバムを1つの画像にしていたのですが、面倒なので止めます)。

 

 けもの『めたもるシティ』

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  2017年リリース。けものの2ndアルバム。

 プロデューサーは菊池成孔。私は菊池氏がやっていたSPANK HAPPY(第二期)が大好きなので、プロデュースしたというこのアルバムも気になっていた。

 ジャケットが不思議だ。逆さまの東京に、謎の猫耳眼鏡の女性、では、曲はどうなのか。やっぱり不思議だった。曲がヘンテコと言うわけじゃない。ジャンルで言えばシティ・ポップだと思う。落ち着いているけど、退屈にならない曲たち。夜が似合う曲が多く、夜中のドライブにかけると合いそうだ。

 なんと言えばいいのか。未来からやってきた人が、2017年を思い出しながら作ったアルバムのように思えた。

 

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Skylar Spence『Prom King』

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 2015年リリース。

 別名Saint Pepsi。Vaporwaveを普段聞いている/以前聴いていた人は別名義のほうがピンとくるかもしれない。Saint Pepsi名義では『Hit Vibes』というアルバムをリリースしていて、山下達郎の腰を曲上で振らせることに成功した。『Hit Vibes』はレーベルのBandcampから無料ダウンロードできるので、是非聴いてほしい。

 法律上の問題で改名した後にリリースされたこのアルバムは、Saint Pepsi名義での大胆なサンプリングは影を潜めたが、聴く人の腰を振らせるような曲は健在である。ノリの良い曲が多いため、気分が良い時に何回も聴いている。tofubeatsが好きな人は(Skylar Spenceとコラボしたこともある)聴いてみるとハマるかもしれない。

 

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The Cinematic Orchestra『Man With A Movie Camera』

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 2003年リリース。

 ジャズ×クラブミュージック×映画音楽の3つを両立させてしまう集団、The Cinematic Orchestraのスタジオライブ盤。1929年に公開されたロシアのドキュメンタリー映画である『Man with a Movie Camera』のサウンドトラック、というコンセプトのもと、演奏・制作された。

 古ぼけた質感の映画音楽が開始10秒で流れ、一気に心を掴まれる。その後は2ndアルバムの『Every Day』の曲を中心に展開されていく、しっとりとしながらも緊迫感を保ったジャズ。スタジオライブ盤なので、臨場感も感じられる仕上がりになっている。夜に聴きたくなるアルバム。

 以下のリンクにて視聴可能。

ninjatune.net

Skalpel『Skalpel』

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 2004年リリース。

 クラブミュージックのアルバムたちの間を彷徨っていると良く聴くレーベルであるNinja Tuneからリリースされた。先ほど紹介したThe Cinematic Orchestraとはレーベルメイトである。

 音楽性をざっくり表すと、クラブミュージック+ジャズなので、The Cinematic Orchestraとあまり変わりがないように見える。しかし、ジャズの方向性が違う。Skalpelのほうが、ジャズの質感が古い。曲中で聴こえるブチブチというノイズも古さを演出している。こういったアルバムは、落ち着いたときに聴きたくなる。

 以下のリンクにて視聴可能。

ninjatune.net

 

Skalpel『Konfusion』

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 2005年リリース。

 先ほど紹介したアルバムが1stで、このアルバムが2ndである。

 古い質感のジャズ(ポーランドのジャズをサンプリングしているらしい)をミックスして作り上げた曲たちは、1stと同じように安定している。夜にこれを1stアルバムとこれをかけておけば間違いがないので重宝している。

 自分がレンタルしたものには、ボーナスディスクとして、『1958 BREAKS』というリミックスアルバムが付いていた。

  以下のリンクにて視聴可能。

ninjatune.net

 

 ぼちぼち紹介できればと思っています。

『死ぬほど好きだから死なねーよ』批評会に行きました

 初めて何かを行おうとするとき、人はかなりのエネルギーを必要とする。行っていない、という領域から行っている、という領域に向かって飛び越えるのはいつだって勇気と行動力とその他諸々の経費を必要とする。

 

 先日、歌集の批評会に行くという初めての経験をしてきた。今回行った批評会は、5月5日(土)に行われた、石井僚一『死ぬほど好きだから死なねーよ』批評会だ。

 普段私は新潟に住んでいるため、休みに遠出をすることは頻繁にはできない。また、お金もかかるため、1回東京に行くとしばらく行くことができない。ポケモンの技で言うならば、はかいこうせんみたいなものだろう。今回は、ゴールデンウィークでなおかつ文学フリマと日程が被っていなかったため、参加できた。

 批評会に参加者としてどう臨めばいいのか分からなかったため、とりあえず歌集を読むことにした。しかし、なかなか読む時間が取れず、ゴールデンウィークに入ってしまった。ゴールデンウィーク前半は友人とボウリングをしたり、日が沈むまでカラーボールとカラーバットを使って野球をしてしまったため、全部読み切れないまま当日を迎えてしまった。

 友人宅で起きて、体がバキバキなことに気づく。普段運動をしていない状態で、野球をしないほうがいいらしいことに気づかされる。前日に買っていたワッフルを食べて、中野に向かった。

 中野駅を降りて、会場である中野サンプラザに向かう、まだお昼ご飯を食べていなかったため、軽く食べておいたほうが良いなと考えながら歩いていると、空き瓶歌会(新潟で定期的に行われている歌会です)でご一緒させていただいている香村かなさんに声を掛けられる。お昼を食べていないことを話して、会場近くのカフェに向かう。

 オレンジジュースとホットドックを注文し、批評会について話をしていると、2つ隣のテーブルにいる方々が、批評会のパネリストだということを教えてもらう。私は短歌をしている人の顔をほとんど知らないため、頭の中に名前しか浮かばず、名前が歩いたりご飯を食べたり短歌を作ったりしていると思っていたが、どうやら実在するようだった。ホットドックはパンがフランスパンっぽいもので、自分のデータベースには存在しないタイプのホットドックなので、少し動揺してしまった。

 お昼ご飯を食べ終え、会場へと向かう。受付はまだ始まっていなかった。待っていると、同じく空き瓶歌会でご一緒させていただいている有村桔梗さんがやってきた。ちょこちょこ話していると、受付が始まる。どっと参加者が受付に並ぶ。短歌を作っている人は実際に肉体を持っているのだなと再び実感する。大学の時に短歌を一人で作っていた頃には考えられなかったことだ。受付を済まし、二次会にも参加すると伝える。私はインターネット人間なので、会場に面識のある方はほとんどいなかった。面識がほとんどない人が集う二次会に参加する。この判断が正しいかどうかはまだこの時点では分からなかった。

 席に座って参加者一覧を見ていると、短歌界で有名な人もかなり参加していることに気づく。自分は何かするわけではないのだが、こちらまで緊張してきた。あまり面識のない親戚の家に行った時のような気分になる。会場には石井僚一さんもいた。歌集のタイトルが入ったTシャツを着ていた。

 そうこうしているうちに批評会の第一部が始まった。司会は吉田恭大さん、パネリストは荻原裕幸さん、服部真里子さん、小原奈実さん、情田熱彦さんの4人だった。4人とも異なるテンション、意見で話は進んでいった。少し距離を置いて冷静に歌集や歌を分析していく荻原さん、圧倒的な熱量で石井氏のレトリックに対する考えを放っていく服部さん、「上手く読み取れなかった」と言いながらも、丁寧に歌集に見られる要素を拾っていく小原さん、パワーポイントを使いながら、石井氏の歌と人について述べていく情田さん。様々な要素が入れ替わり顔を出す歌集に、4人が様々なアプローチを用いて挑んでいた。

(批評会の後ようやく歌集を読み終えたのだが、同じ人が作ったのか分からなくなるほど、連作ごとに違ったものが見えた。『のりもの2015』のような、服部さんの言葉を借りると「レトリックの過少」、反対に『エデン』では「レトリックの過剰」と、連作毎のレトリック、テンションの差に頭がくらくらした。成分はほぼ一緒だけど様々な色や匂い、味の原液を飲んでいるような感じだった)

 その後、短歌界ではおそらくベテランと思われる方々が、石井さんの歌集について意見や感想を述べていた。その中に「借金を返す、払う」という表現が出ていたが、私にはよく分からなかった。見えている景色が違うのかもしれない。個人的には、借金を今までの通貨で払う必要があるのかなと感じた。別の通貨を生み出して、借金と踏み倒すことも可能なのではと思った。

 一番興味深かったのは、情田さんがおっしゃていた「不安定な韻律により祈りが切実になる」という部分だ。祈りをどうにかこうにか定型におさめることによって短歌が生まれる。しかし、定型に収めることでこぼれる祈りがあるようにも思える。韻律をはみ出ていくことによって、祈りのリアリティが増すように見えるが、短歌からは遠ざかるようにも思える。難しい問題だと思う。

 

 第一部と第二部の間の休憩中、窓ガラスの外からテニスをしている人々が見えた。屋外コートがあるのだろう。薄いブラインドがかかっていたため、ぼんやりとしか見えなかったが、すぐ近くで2つの全く異なった行動がお互いに影響を与えずに動いているところに、淡々とした現実を覚えた。

 第二部は石井は生きている歌会だった。事前に参加者が短歌を送り、当日一部の短歌に評をしていくという形だった。第二部は石井僚一さん、伊舎堂仁さん、谷川電話さんの三人だった。三人の歌集を持っていたが、実際に生きているかは分からなかったため、「うわー生きてるな」と感じた。

 3人が一選から四選、それ以外に2、3首を事前に選び、それらについて三人で評をする形で始まった。どういう歌が選ばれたのかはここでは掲載しないが、個人的には37首目の歌が一番好きだった。石井さんの『マザー・テレサ、どれだけ人を愛したら布団はふっとんでくれるでしょう』とどこかで繋がっているような歌だった。

 第二部では伊舎堂さんが一番印象に残った。伊舎堂さんは普段の文章を見ていると、少し気難しい人なのかなと思っていたが、実際はハキハキとした面白い人だった。私は伊舎堂さんの短歌が好きなのだが、短歌だけではなく、普段の会話の中でも面白さを発揮できる人なのではないかと感じた。

 

 第二部が終わり、中野サンプラザからぞろぞろと二次会の会場へと進んでいった。人が多すぎて本当に正しい方向を進んでいるか分からなくなる。会場では短歌が好きな人々、興味がある人々というカテゴリーに皆が属していたはずなのに、外に出たとたんそのカテゴリーはどっかに消えて、ただただ人が多い。なんとか二次会の会場にたどりついたが、階段でキャリーバッグを担ぎながら6階まで上がったため、腕が死んでしまった。早すぎる死だった。

 死んだ腕を引きずりながら中に入る。ダーツバーだったためダーツの機械がいくつかあるが、二次会は人が多かったため使われていなかった。普段ダーツをしていたら立ち入らない、投げる場所からダーツの的の間に人が何時間もいて、ダーツ的にも新鮮な経験だったと思われる。

 ウーロン茶を貰い、二次会がスタートする。知り合いはほとんどいなかったが、短歌用の名刺を持っていたため、私の事を知らない人にも身分を証明できた。名刺は便利である。

 石井さんとも話せた。名前を明かすと、「あー! ファンファーレの!」と石井さんは言っていた(以前、毎月歌壇に出した『喋るとき出る「あ」が丁度一〇〇〇回目俺の頭上で鳴れファンファーレ』を石井さんに取っていただいたことがあった)。どうも、ファンファーレです。

 また、情田さんとも話すことができた。Twitterではじょーねつというアカウント名で、結構前からフォローしていた。嬉しいことに、自分のアカウント名を明かしたところ覚えてもらっていたらしく、「米粉さんじゃん! 硬派なネタツイッタラーの」と言っていた。どうも、硬派です。

 二次会では、時々トークが挟まれた。すごい人が何人も出てきて、芸能人のパーティーにいるようだった。芸能人のパーティーには出たことがないので経験に基づいた気分ではなく、想像に基づいた気分だが。

 一番二次会で印象的だったのは、谷川由里子さんが喋っていた時だ。会場のマイクの調子が悪く、途切れ途切れになってしまう。谷川さんの時もプツプツと音声は途切れた。マイクの調子、全然良くならないなと思いながら聞いていたが、最後で、谷川さんは「人に頑張れと言うのはあまり良くない風潮だけど、石井さんにはあえて頑張れと言いたいと思います」と言い、マイクを使うのをやめて、大声で「頑張れ!!」と石井さんに向けて叫んだ。

 頑張れが物凄い力とスピードで放たれていくのが見えるようだった、いや、確かに見えた。石井さんに向けられた頑張れだったが、こちらにもその衝撃が届いていた。この衝撃を、自分も与えることができたらと思った。

 帰り際に、本多真弓さんに歌集をいただいた。初対面の私は施しを受けた時に、動揺しすぎて「あー! ありがとうございますー! あああー!! ああー!!」と上手く声を出せなかった。水戸黄門が印籠を出した後の町人みたいになってしまった。

 自分は二次会で帰ったため、三次会以降はどうなったかは分からない。

 

 『死ぬほど好きだから死なねーよ』批評会に参加して良かったと思う。パネリストの4人が互いに言葉を尽くして歌集や歌を批評していくところ、第二部で出てきた様々な短歌、二次会で短歌を作っている人と交流出来たところ、最後の谷川さんが石井さんに向けた物凄い力の頑張れ、それら全てが自分の短歌へのモチベーションにつながったような気がする。頑張らないとな、と思う。

 批評会に参加することで得ることはかなりあると思うので、参加したことの無い人は参加してみてほしい。歌会は生き物、というフレーズを聞いたことがあるが、批評会も生き物だと思う。

 こういった瞬間をこれからも味わいたいので、まだまだ死なねーよと強く思う。

『Vapor?』(文フリ東京 新刊のお知らせ)

 どこだか分からない土地で、自分の中のメモリーカードに存在しない人物が繰り出す、状況や空気感。

 例えば、スーパーマーケットで流れているフュージョン。何か聴いたことがあるような気がするけれど、何かは答えられない。そういうものが面白いと私は思う。

 

 2018年5月6日(日)に、第二十六回文学フリマ東京にて、橙田千尋名義で『Vapor?』という短歌20首の入った冊子を頒布いたします。値段は200円で、ブースは空き瓶歌会【F-57】になります。

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 友人が撮った写真が個人的に良かったので、許可を貰い加工したものが表紙になりました。

 内容としては、自選10首と、ほぼ新作の連作2つが入っています。

 当日は蒸気としてブースなどを漂っていますので、是非ブースにお越しください。話しかけてくだされば、リポビタンDに入っている、タウリンの次に多い成分の名前と量を教えます。

 

 概要のおさらいです。

日時:5月6日(日) 11:00~17:00

会場:東京流通センター 第二展示場

ブース:【F-57】空き瓶歌会(会場の1階になります)

タイトル:Vapor?

値段:200円

 

 また、私の参加している空き瓶歌会では様々な歌集、冊子を販売いたします。

 

【頒布リスト】(以下敬称略)

『瓶便』vol.1、2(無料)

『果実短歌』(無料)

 参加者:有村桔梗、迂回、香村かな、橙田千尋、七波
 イラスト:大嶋航

『空き瓶』(無料)

 参加者:有村桔梗、迂回、キョースケ、香村かな、ショージサキ、髙木秀俊、

     たた、七波、ユキノ進

有村桔梗『夢のあとに』(歌集、700円)

香村かな『びいだまの月』『瓶詰めの海』(フォト短歌集、それぞれ500円)

短歌入りブックマーカー(製作:高木秀俊、40円)

七波『Haruno.』(歌集、300円)

 

 それぞれの短歌があり、それぞれの良さ、面白さがあります。是非是非、見に来てください。

 それでは、当日お会いしましょう。

 

 Vapor?

『大きなCOFFEE BEAT』『そうです』『文フリ東京』

 最近感じたこと、あったことを話していく。

 

『大きなCOFFEE BEAT』

 私は暇さえあればお菓子を食べている。近くにお菓子があると延々と食べてしまい、大袋のお菓子を買ってもすぐ無くなってしまう。前世はカービィだったのかもしれない。

 時々コンビニでマーブルチョコレートを買うことがある。蓋を開けて、さらさらと中身を出し、頬張る。この過程が好きだ。普通のチョコレートだと自分で箱や袋から取り出して食べなければならないのだが、マーブルチョコレートは蓋さえ開ければ一発だ。チョコレートとしての摩擦が少ないので筒を傾ければすぐ出てくる。スムーズな当分補給ができる。

 マーブルチョコレートには犬みたいなキャラクターが存在する。最近買ったときは世界旅行に出ていた。儲かっていると思われる。私はやっと去年本州を出たというのに。

 マーブル一族の中の1つに、COFFEE BEATというお菓子がある。コーヒー豆の形をしたチョコレートだ。もちろんコーヒー味である。マーブルチョコレートと比べて、スーパーやコンビニで見かける頻度が少ない。トキワの森ピカチュウみたいな感じだろうか。

 COFFEE BEATと言う名前もいい。こういう名前のアーティスト、おそらくいるんじゃないだろうか。水星っていう名前の曲を作ってそうだ。

 先日、COFFEE BEATが売っているコンビニに行くと、大きなサイズのものが売っていた。手に取ってみると、確かな重量感。気が付いたら購入していた。

 大きいものは強いという小学生のような考え方なので、大きいCOFFEE BEATは強かった。

 皆さんでCOFFEE BEATの輪を作っていきませんか?

 

『そうです』

 Twitterに藤岡拓太郎さんという、1ページ漫画をアップロードしている方がいる。その人の作品の中に【よその家の風呂にバブを投げ込む行為を繰り返して逮捕された人】というものがある。

  2コマ目の警官の「何でこんなことしたん?」という問いかけに、バブを投げ込んだ犯人が「そうです」と答えている。私はこの「そうです」がたまらなく好きだ。

 バブをよその家の風呂に投げ込むという、一般的には理解されない/できない行動に対して、犯人自身はしっかり後ろめたさを感じ、悪いこと、一般的に理解されないことと認識しているように見える。その意識が「そうです」という回答につながる。ギャグ漫画だと、理解不能な行動をしている人はあまり罪の意識を感じない傾向がある。しかし、この漫画の犯人は常識的なのだ。

 藤岡氏の漫画は、漫画の中の空気感が滅茶苦茶面白いので、是非見てほしい。

 

『文フリ東京』

 5月6日(日)に文学フリマ東京が行われる。その中で、私も短歌の冊子を出す。詳細は連休中に出せればと思う。よろしくお願いします。

2018年に購入/レンタルしたアルバム紹介③

 皆さんは3月をどう過ごしましたか。

花粉が多く飛んでいるときに東京に遊びに行った結果、くしゃみや目のかゆみに悩まされ、新潟に戻れば何とかなるかな、やったか!? と思ったが全然やっておらず、今日も花粉症の症状が出ている。花粉症のせいで春が嫌いになってしまった人もいるだろう。春は何も悪くないのに。

 

 今回はアルバム紹介第3弾である。記事の更新のペースと、アルバムを購入/レンタルするペースが釣り合っていない。気力を増やして記事を書いていきたい。

 

 今回は以下のアルバムについて紹介していく。

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 左上から時計回りに、

Captain Beefheart & The Magic Band『Trout Mask Replica』

James Blake『Overgrown』

Jaga Jazzist『A Livingroom Hush』

David Bowie『Low』

Primal Scream『Screamadelica』

 

である。前回は邦楽が多かったが、今回は海外の作品で占められている。

 ジャケットのインパクトが凄い『Trout Mask Replica』を制作したキャプテン・ビーフハートは、かの有名なフランク・ザッパの友人だったらしい。ギター、ベース、ドラムがあらゆる方向に散らかりながら、ビーフハートのしゃがれ声のボーカルが炸裂する。酔っ払いがフラフラ道を歩いている音楽は、一見何の計算もされていないように見えるが、実は何か月もバンドで練習を行った成果の結晶だったりする。計算された千鳥足なのだ。

『Overgrown』はエレクトロニカに属する作品である。前作『James Blake』と同じく、物静かで冬を思い浮かばせるような音楽だが、前作よりも盛り上がっていく場面があるように感じた。8曲目の『Voyeur』が良い例だろう。全曲に渡って特徴的なのが、James Blakeの声であり、哀しみを湛えた声が荒涼な風景を思い起こさせる。

『A Livingroom Hush』はジャズとクラブミュージックが融合したアルバムである。 Jaga Jazzistは現在、クラブミュージックやエレクトロニカを聴いているとよく名前が挙がる『Ninja Tune』というレーベルに所属しているが、この作品は所属する前に作られたものらしい。『Ninja Tune』所属で、ジャズとクラブミュージックを融合した作品を作っている集団と言うと、The Cinematic OrchestraやSkalpelが挙げられるが、このアルバムは上記のグループよりもアッパーな雰囲気を漂わせている。顕著なのは1曲目の『Animal Chin』で、ジャズにしてはドラムが狂ったように叩かれているように思える。しかし、ゆったりとしたナンバーも時々顔を出し、緩急の効いたアルバムとなっている。

『Low』は、ロックスターとして名が挙がる David Bowieによる作品である。アンビエント界の大御所、Brian Enoと共に作られた。David Bowieは有名だけど、アルバムを聴いたことがなかったなと思い、レンタルした。もっとロックロックしてるのかと思ったが、穏やかさを感じさせる曲が多いように思えた。Brian Enoが携わっているためだろうか。後半に進むにつれアンビエント色が強くなっている。

『Screamadelica』は、ジャケットだけ知っていた。アイドルグループのゆるめるモ!がジャケットのパロディを行っていたと思う。味付けの基本はロックだが、ダンスミュージックも振りかけられている。2曲目の『Slip Inside This House』はロック+ダンス+サイケも少々と言う感じで、かなり好みだった。全体的に太陽の光が差し込んでくるような曲が多いアルバムだと感じた。

 

 最後に紹介したアルバムの曲を一部リンクとして載せておく。

www.youtube.com

 

 

www.youtube.com