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備忘録と不備忘録を行ったり来たり

暮田真名『補遺』を読んだ/James Blake『Friends That Break Your Heart』を聴いた

1月19日(水)

 暮田真名『補遺』を読み終える。句集を読むのはこれが初めてだった。

 最初は、1つの川柳をどれくらいの時間をかけて読むとしっくりくるのか感覚がつかめていなかったが、読み進めるうちに少しずつつかめたように思う。

 

銀色の曜日感覚かっこいい

 

家族旅行に肩まで浸かる

 

(暮田真名『補遺』より引用)

 

 特に好きだった句を挙げてみた。1首目、まだ自分の中に存在しなかった曜日の色合いを、ある程度納得しつつ追加されたような気分になる。そういった気分になるのは、「かっこいい」という素朴な感想がもたらす効果かもしれない。句集の1首目でもあり、これから始まっていく世界の入口のような役割もあると感じた。

 2首目、「家族旅行」と「肩まで浸かる」の食べ合わせの良さは、どちらも温泉やお風呂を想起させるからだろう。家族旅行を満喫しているようなイメージもありつつ、浸かりすぎたあとに起こりうる不穏な可能性を個人的には感じ取った。七七になっていて、これも川柳の範疇なのだろうかと少し立ち止まった。

 かなり予想もしない角度から語が斡旋されているのは、作者の作風なのか、それとも川柳というカテゴリーの特徴なのかは今後他の方の川柳も読んで判断していきたい。

 

2月2日(水)

James Blake『Friends That Break Your Heart』を聴いた。2021年にリリースされたアルバムだ。

youtu.be

 James Blakeの曲には物悲しさが絶えずつきまとっているが、物悲しさの表し方が変わってきているように思う。『Overgrown』までは、一言でいえば寒色の空間という印象が強い。音数の少なさだったり隙間の多さがそういった印象を強める効果をもっていた。前々作の『The Colour In Anything』と前作の『Assume Form』では音が生み出す空間から寒色が薄まってきているように思えた。他のアーティストが楽曲に参加するようになった影響もあるのかもしれない。

 今作では、暖色がしっかりと使われ始めたように感じた。8曲目の"Show Me”や9曲目の”Say What You Will”などの優しげなメロディが良い例だろう。そういった曲があることで、物悲しさが前面に出る曲のインパクトが増したように思う。

 個人的には2曲目の”Life Is Not The Same”が好きだった。女性ボーカルが入ってきたときに、一気に糸が張り詰める感じがする。