Oneohtrix Point Never『Magic Oneohtrix Point Never』
2020年リリース。「架空のラジオ局の放送」というコンセプトで制作されたらしい。
放送が始まったことを告げるジングルめいた「Cross Talk I」から始まるアルバムは、前半~中盤にかけて光がゆるやかにさすようなシンセサイザーが中央に据えられている。
上述した雰囲気は11曲目の「Answering Machine」あたりから変化を見せ、光が弱まっていく。
12曲目の「Imago」で繰り返されるボイスは、2011年にリリースされた『Replica』というアルバムの執拗なボイスサンプルの繰り返しを思い起こさせる。また、14曲目の「Lost But Never Alone」で挿入されるギターソロは、2015年にリリースされた『Garden of Delete』でも用いられていた。今までに出してきたアルバムが結びついているような印象を受ける。
個人的に1番好きな部分は、17曲目の途切れるような終わり方だ。ラジオがいきなり消されたような感覚になる。ただし、日本版だとボーナストラックが入るので余韻が失われるような気もする。
冥丁『古風』
2020年リリース。
ジャケットからも分かる通り、昔の日本の文化がコンセプトとして据えられたアルバムである。サンプリングされている素材も昔の歌の節回しや和楽器が多い。
ノイズの使い方がとても効果的で、時間の経過・風化を印象付けるだけでなく、雨が降っているようにも聞こえる瞬間がある。抒情的なノイズというべきだろうか。そこに静謐なピアノが入ってくることで、経験していない時代のノスタルジアが流れ込んでくる。
1番好きな曲は、4曲目の「貞奴」だ。静かな曲が多いが、この曲は比較的なアップテンポ寄りだ。繰り返される素材が短い間テンポアップするところが聞きどころだと思う。
Blonde Redhead『Melody Of Certain Damaged Lemons』
2000年リリース。物悲しさと衝動が合わさったアルバムだと思う。
2曲目の「In Particular」がかなりツボに入っていて、毎日何回も聴いていた時期があった。徐々に音数が増えるリズムや、途中で2回ほどパターンが変わるギター、ウィスパー気味のボーカルが、少しメランコリックな雰囲気を生み出している。
また、9曲目の「For The Damaged」はピアノ主体の曲だが、聴いていると何かを失ってしまったような気分になる。ダウナーな気分の時に聞くとメンタルを持ってかれそうだ。
荒々しさを爆発させる10曲目「Mother」の後に流れる、ラストの曲「For The Damaged Coda」は(ジャケットには記載無し。隠しトラック扱い?)『Rick and Morty 』という海外のアニメで使用されたらしく、なぜかインターネットミームになっていた。何かを失敗したシーンで『For The Damaged Coda』が流れる動画がYoutubeではいくつも視聴することができる。