コムギココメコ

備忘録と不備忘録を行ったり来たり

採血でポケモンみたいにならないために

7月 その2

 健康診断のせいで朝から何も食べられない。水を飲みながら空腹をごまかしつつ、健診センターへ向かう。

 会場は割と新しい建物で、ホテルのフロントのような受付で用件を伝える。提出物の提出と簡単な説明が済むと更衣室に案内された。着替えを済ませてスマートフォンと本を持って待合室で待機する。何かを待っている時に本を読もうとしてもあまり集中できず、結局ほとんど読めないことがほとんどなのだが、持っていると落ち着く。お守りのような役割なのかもしれない。

 最初に血圧と採血をやる予定だったのだが、一度採血を終えた後に目の前が真っ白になったことがあったため、採血は最後にしてもらう。ポケモンが全滅したときに似ている。ポケモンでは目の前が真っ暗になるパターンが多いのだが、金銀クリスタル版(リメイクも)では真っ白になるらしい。私の世界は金銀クリスタル版なのだろう。

 その後、あまり待つことなく胸部X線、聴力、視力、心電図、診察を行っていった。健康診断を受けている時はゲームでおつかいをさせられている気持ちになるのだが、今回は1つ1つの待ち時間が少ない。別の病院で健康診断を受けた時は半日近くかかって疲弊したため、時間がかからないだけでもうれしい。

 1時間かからずにほとんどの項目を終え、いよいよ採血を行うことになった。簡単に説明を受けている最中、採血で使われるケースを見てしまい具合が悪くなっていくのを感じる。血を連想させるものは私の体調を無条件で悪化させていく。横になれるスペースがあったため、そこに仰向けになる。アルコールの冷たさの後に、痛みがやってきた。

 血のことを考えるとみるみる体調が悪くなっていくため、何か他のことを考えようと頭の中で歌を探した。毛皮のマリーズ 『愛のテーマ』が近くに転がっていたため、頭の中で再生する。

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 しばらく(体感としては長かったが、おそらく1分もかかっていないのだと思う)経つと採血が終わり、念のため5分ほど立ち上がらずに様子を見ることになった。 

 以前採血後に失神しかけたのは、血管迷走神経反射というものらしい。数年前に医学部の学生にその話をした際、初めて本物を見たようなリアクションをされたのを覚えている。なぜ血管迷走神経反射が起こるようになったのかというと、小学3年生のときに採血をした際、うっかり自分の血を見てしまってパニックを起こしたためである。血という字を打ち込んでいても具合がじわじわ悪くなってきたので次に進む。

 5分後に声をかけられ、立ち上がれることを確認して健康診断が終了した。荷物を更衣室から取り出して外に出る。少しふらつくが、それが空腹によるものなのか採血によるものなのか、それとも暑さのせいのかは判然としなかった。